錬金術師、気体と出会う。アリストテレスを克服した18世紀

アリストテレスの四元素説 中1理科

地球には空気があるからこそ、私たちは生きていけます。空気がない宇宙は、真空状態です。


宇宙から見ると、地球の空気がよく見えます。身の回りでなく、地球や宇宙規模で考える空気をあえて大気(たいき)と呼ぶこともあります。

地球をとりまく大気
薄く青く見えるのが大気(空気)

写真に見える薄く青い膜が大気(空気)ですが、この大気はとても薄いものです。地表から大気(空気)があるのは高度100kmくらいまでであり、その範囲を大気圏と呼びます。その外側は宇宙空間。

大気圏と宇宙空間
右は国際宇宙ステーションからの写真。大気圏は高度100kmほどまで。

地球には重力があるので、空気は地球に引っ張られています。したがって地球に重力がある限り、空気の層が地球から離れることはありません。

💨 アリストテレスが考えた大気の組成

今から約2400年前、古代ギリシャにアリストテレスという偉大な哲学者がいました。

アリストテレス

アリストテレスは超がつくほどの大天才であり、昔の人々は彼の死後2000年以上も、とにかく「アリストテレスが書いた本を読めば全てが理解できる」と本気で考えていたくらい、大きな影響力を持った人物です。


彼の一つの学説に、「世の中の全ての物質は、空気の4つからできている」という四元素説があります。

アリストテレスの四元素説

つまり、全ての有機物も無機物もこの4つの組み合わせでできており、この4つは分割できないと考えていました。したがって人々も、空気は元素であり、それを分けることはできないと信じられていました。

しかし今では小学生でも、空気は見えなくとも、

  • 酸素
  • 二酸化炭素

などに分けられることを知っているし、したがって「アリストテレスは間違っていた」ことも知っています。


しかし… 、化学者が「空気は、酸素や二酸化炭素など、いろんな気体が混ざったものだ!」と気づいたのはたった200~300年前のことなのです。それまでずっと、人々はアリストテレスの学説を打ち破ることはできませんでした。

大気の78%を占める窒素(N₂)

地球に満ち溢れる空気、そのほとんどが窒素(N₂)と酸素(O₂)でできています。


約78%が窒素、約21%が酸素。その他が 約1% です。

地球上の空気に占める気体の体積の割合
空気中の気体の体積の割合 (水蒸気を除く)。

私たちが吸っている空気のほとんどは、酸素ではなく窒素(N₂)です。


46億年前、生まれたばかりの地球上には酸素はほとんどなく、水蒸気(H₂O)や二酸化炭素(CO₂)が主な空気中の気体で、他に少しの窒素(N₂)があったようです。


隕石がたくさんぶつかるような、マグマに溢れた火の玉のような星だったと言われています。

46億年前の地球
46億年前の地球イメージ。水蒸気と二酸化炭素と窒素が多い
https://www.sutori.com/item/earth-4-6-billion-years-ago-773f

地球が生まれて3億年ほど経過すると、徐々に地球が冷えてきます。地球が冷えると、大気中の水蒸気は水になり、大雨が何万年も降り続けました。


こうして海が誕生しました。


その後、二酸化炭素(CO₂)はどんどん海に溶けていきましたが、窒素(N₂)だけがたくさん大気中に残ることになりました。

地球の大気中に窒素がたくさんある理由

窒素は水に溶けにくく、他の物質とあまり反応しないため、太古の昔から現代までずっと空気中に残り続けています。


窒素はポテトチップスとも深いつながりがあります。ポテトチップスの袋には、窒素が注入されています。

ポテチに入れる窒素

ポテトチップスを製造するとき、何か気体を入れて膨らませておかないと、運んでいる途中でパリパリ割れてしまいます。


かといって袋の中に空気を入れてしまうと、空気中の酸素と食品が反応して味が落ちてしまいます(酸化)。そこで、空気の代わりに反応しにくい窒素を入れて品質を保つわけです。


缶コーヒーも同じ方法を取っています。空気中にたくさんあり、しかも無害である窒素はとても便利な存在です。

缶コーヒーに入る窒素
ダイドードリンコ 缶コーヒーができるまで

大気の21%を占める酸素(O₂)

大気のほとんどは、窒素と酸素でできています。酸素は約21%。

地球上の空気に占める気体の体積の割合

酸素は動物の呼吸に不可欠な気体です。地球上の酸素は、植物の誕生によりもたらされました。光合成により、二酸化炭素を吸って酸素を出す植物は、大気中の二酸化炭素を減らし、そして酸素(O₂)を生み出していきました。

生物の光合成により、地球に酸素が供給された

地球誕生から46億年、こういった流れが進んでいった結果、現在の大気の割合になっています。

わずか0.04%の二酸化炭素(CO₂)

地球上の空気に占める気体の体積の割合

「その他」で有名な気体は、なんといっても二酸化炭素(CO₂)。地球温暖化の原因だといわれて悪者にされてしまう二酸化炭素ですが、空気中にはわずか 約0.04% しか存在していないのです。私たちが今も吸っている空気の0.04%は二酸化炭素です。

空気中に占める二酸化炭素の割合
二酸化炭素は、空気中にわずか 0.04%

「二酸化炭素(CO₂)の増加が、地球温暖化の原因になっている」という事実は常識となっていますが、その二酸化炭素(CO₂)は、大気にたった0.04%しか含まれていないんですね。「なんだ、大したことないじゃん」と思いますか?


しかし、世界中の空気中の二酸化炭素(CO₂)を正確に計測し始めたのは1958年。そのときは0.0315%だったようです。この調子で二酸化炭素濃度が増えると、もっと深刻な影響が出ます。
(参考: 「400ppm」の報道で考える)

ここ数百年の技術発展により、大気中の二酸化炭素の量はとても多くなっています。


特に18世紀(1700年代)に始まった産業革命により、エネルギー源として石炭をたくさん利用するようになり、二酸化炭素がたくさん排出されるようになりました。

蒸気機関車

その結果、産業革命後から急激に空気中の二酸化炭素の量が増えてきています。


以下のグラフを見ると、その影響が分かります。1750年にはわずか0.028%程度であった二酸化炭素濃度が、2011年には0.039%にまで上昇。2020年になると、順調に0.04%を超えてしまいました。

大気中の二酸化炭素濃度推移
地球環境研究センター

以下のグラフのように、人類は二酸化炭素をたくさん出し続けて発展していますが、出した量ほどには大気中の二酸化炭素濃度が増えていません。

CO2排出量の推移
地球環境研究センター

その理由は、海が大気中の二酸化炭素をたくさん吸収してくれているから。嬉しい限りですが、そのせいで海洋の酸性化が進み、貝やサンゴが成長できない環境になっています。

濃い二酸化炭素濃度で生育したムラサキウニ
瀬戸臨海研究所 から

二酸化炭素濃度を0.06%にして生育した場合、産業革命前の水準の濃度で育てた場合よりもムラサキウニの生育が弱くなる現象が確認されています。


他の生物への影響も確実視されているため、なんとしてでも二酸化炭素の排出を少なくする努力が必要です!

👨🏾‍🔬 錬金術師と気体の出会い

今まで学んできた錬金術師(化学者)たちは、

  • 貴金属
  • 不老不死の薬
  • ホムンクルス(人造人間)
  • プラスチック

などなど、人類に役立つ「固体」や「液体」を中心に研究してきました。

錬金術師

しかし1700年代ごろより、空気を詳しく研究する「気体」にも関心を持つようになります。2000年以上も続いたアリストテレスの四元素説の間違いに気づき、「空気もたくさんの気体からできているのだ!」ということが発見されたからです。


1754年に二酸化炭素が発見されたのを皮切りに、化学者たちは次々と気体を発見し、その性質を解き明かしていきます。18世紀(1700年代)はまさしく、錬金術師が気体と出会った大切な時代です。

新気体の大発見時代
18世紀における気体化学の進化

気体の収集を可能にした水上置換法

長らく気体に関する研究が行われなかった理由は、空気は目に見えずに捕まえることもできないからです。

しかし1700年代前半、イギリスの化学者スティーブン・ヘールズは気体収集のための水上置換法を発明し、気体の収集を簡単にしました。

水上置換法を発明したヘールズ
気体は水より密度が小さいので、水中では必ず上昇する

水を満たしたびんを逆さにして、そこに発生させた気体を送り込むことができれば、びんの中には気体が貯まり、気体だけの空間ができます。


最後に水中でびんに蓋をして引き上げれば、空気と混じっていない純粋な気体を採ることができます。


ヘールズが考えたこの方法を使うことで、錬金術師(化学者)たちは次々と新しい気体を発見し、化学を大発展させる素晴らしい時代をもたらしました。熱心な錬金術師たちの戦いのお陰で、この時代になってやっと、人類はアリストテレスの四元素説を克服することができたのです。

📚 おすすめ参考文献

📖 参考になった書籍

マンガ おはなし化学史―驚きと感動のエピソード満載! (ブルーバックス)

物理学であれ化学であれ、全てには深くて面白い歴史があります。しかし学校の授業はそれを抜きにして知識を伝える方法を取るため、生徒は楽しく勉強することができていません。


別にマンガの質がいいわけではないですが、読みやすいことは間違いないですし、歴史を交えて化学を学ぶ、もしくは教えるためにはとても役立つ本です。気体発見の歴史も大きく参考になりました。

シリーズとして、

もあるのでこちらも必読。

📱 参考になったページ

気体の発見 気体の発見についての概要が十分分かるページ

海から貝が消える? 海洋酸性化の危機 地球温暖化の原因である二酸化炭素が海に及ぼす悪影響。大気の温暖化や異常気象が話題になるので、こちらは忘れがち。

水族館へ行こう!ムラサキウニ 海洋酸性化の危機を伝える新聞記事

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