時は紀元前、約2500年前。
哲学者がたくさんいたギリシャでは、「この世の全ての物質は、一体何からできているのだろう?」という議論が流行っていました。

その中の一人の哲学者に、デモクリトスという人がいました。

彼は、「世の中の全ての物質は、粒からできているに違いない!」と考えていました。
水も石も太陽も地球も、人間も動物も全て、細かい粒からできていると考えたのです。彼のように、 “物質は細かい粒でできている” という考えを、原子論といいます。また徐々に深く学ぶことになります。

しかし、デモクリトスの死後、同じギリシャに哲学の世界的スーパースター、アリストテレスが現れます。

気体のときにも学びましたが、彼は「世の中の全ての物質は、火、空気、水、土の4つからできているに違いない!」と考えていました。

アリストテレスは、
- 温かい物質、冷たい物質
- 湿った物質、乾いた物質
という性質を使って、この世の全ての現象を驚くほどうまく説明していたのです。もともとアリストテレスは超天才哲学者だと評判だったので、みんなは彼の言うことは正しいに違いないと思っていました。
また、デモクリトスが言うように「水などのサラサラした液体も、小さな粒からできている」という説は、直感に反してイメージしにくく、賛成されませんでした。
なので人々は、アリストテレスが死んでから1500年以上も、デモクリトスはデタラメで、アリストテレスの考えが正しいと考えていました。
😱 デモクリトスが正しかった!?
しかし科学が発展すると、次第にアリストテレスの間違いが分かってきます。空気も二酸化炭素や酸素が混ざったものであることが分かったのも、大きな原因の一つです。
人々は、「空気だって何だって、もっと細かく小さいものからできているんじゃないか?」という具合に、デモクリトスに似た考えを持つようになってきました。
そんな時代の流れと科学の発展もあり、ラヴォアジエやドルトンと呼ばれる偉大な科学者が、ついにアリストテレスの間違いを確信するようになりました。彼らは研究すれば研究するほど、デモクリトスの正しさに気づくことになったのです

ラヴォアジエやドルトンなどの科学者のおかげで、今では、「全ての物質は、粒からできている」というデモクリトスが唱えた原子論が正しいことが分かっています。
今、身の回りを全て見回してみてください。固体/液体/気体を問わず、全ての物質は小さな粒からできています。信じられますか?
🌊 原子論が正しい証拠
デモクリトスが死んでから2500年くらい経ってしまいましたが、「液体も、小さな粒からできている」ことを今から証明しましょう。
まず、
- 水100ml
- エタノール100ml
を準備します。エタノールはアルコールの一種で、消毒液などに利用される液体です。

1足す1が 2 にならない!
この2つを混ぜれば、当然 100 +100 で 200ml になるはずですよね?
しかし……残念!実際に混ぜてみると、200ml にならないのです。

2つを混ぜると、約190ml でした。100ml と100ml を足したのに、なぜ 200ml にならないのでしょう!?

1足す1が2にならない理由は、液体も粒でできているから!
これこそ、デモクリトスの原子論が正しい証拠です!
100ml と 100ml を足しても 200ml にならない理由、それは水やエタノールなどの液体は、全て小さな粒でできているからです。

水とエタノールでは、エタノールの粒の方が少し大きくなっています。
2つの液体を混ぜれば、水の粒が、その隙間に入り込みことになります。

水位が予想よりも下がった状態になりますね。
豆が入っているビーカーに、ゴマが入り込むようなイメージです。
デモクリトスのように「液体も粒でできている」と考えれば、この不思議な現象は簡単に理解できるわけです。粒は決して見えませんが、やっぱり液体も粒なんです。
「サラサラした液体すら、小さな粒子からできている」。こんな直感に反することも考え出し、諦めずに真理を見つけ出そうとすること。
哲学者/科学者の鋭い目は、こんなところに現れるのです。カッコいいですね。
🍦 砂糖が水に溶ける理由
さてさて、砂糖や塩は、水に溶けると消えていってしまいます。これ、よく考えると不思議なことですね。

当たり前ですが、砂糖や食塩は消えているわけではありません。例えば100gの水に10gの食塩を溶かしたとします。
たとえ食塩が見えなくなっても、水溶液の質量は 100 + 10 = 110g になっています。
この「溶ける」の秘密も、「液体も、全て粒でできている!」ことを知っていればすぐに理解できます。
「溶ける」とは、砂糖の粒子が、水の粒に取り込まれてバラバラになることをいうのです。

砂糖の粒子が均等に広がっていったとき、「砂糖が溶けた」ということができます。
混ぜなくても、自然に均等に広がります。
また、溶けた砂糖の粒子は水の粒に取り入れられているので、何日経っても元に戻りません。一度溶けたら、ずっと溶けたまま。

何かが溶けた水のことを、水溶液といいます。砂糖が溶けた水は、砂糖の水溶液です。砂糖が、水の中に均等な濃さで広がっています。粒の大きさは変わっていませんが、水中でバラバラになっているので、もはや目には見えません。
💧 水溶液?溶けている?
「水溶液」「溶けている」といえない場合
コーヒーやココアも、粉をお湯に溶かして作ります。しかし、理科の世界ではこれらは「水溶液」とはいいません。「粉が溶けている」とも言いません。

コーヒーやココア、牛乳などは、色がついて不透明な液体です。粒子が大きいままになっているからです。
大きな粒子に光が遮られてしまい、向こう側が見えない不透明な液体になっています。

こういった液体(コーヒー、ココア、墨汁や牛乳など)は濁っているので、理科では「水溶液」とはいいません。
もっと細かな粒にならないと、「溶けている」とは言えないのです。
「水溶液」「溶けている」とは
一方で、
- 食塩水
- 炭酸水(二酸化炭素)
- アンモニア水
など無色透明になる液体はもちろん、
- お酢
- コーヒーシュガー水溶液
- レモン汁
など、色付きの透明なものは、「溶けている」といえます。
これら透明な液体は全て、水溶液と呼ぶことができます。

これらは、水の中で粒が十分に小さくなっています。光を遮ることがないので、水溶液の向こう側が透けて見えます。
砂糖や塩などは水の中で、
- 粒子が十分細かくなっており透明
- 粒子が偏りなく均一に広がっている
ような状態になっています。これを「水溶液」と呼びます。
「透明であるか、透明でないか」を基準にして、「水溶液なのか、そうではないのか」を判断できるようになりましょう。
溶けている方の物質を『溶質』、溶かしている方の物質を『溶媒』といいます。

溶質が溶媒に溶けてできた液体は、『溶液』です。溶媒が水のとき、水溶液と呼びます。

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