『酸素』を発見したのは誰だ!?「発見」とは、科学者の共同作業

酸素の発見 中1理科

ブラックとキャヴェンディッシュという化学者が『二酸化炭素』と『水素』を発見し、人類の空気への理解を大きく発展させました。

さて、次に発見されるのは『酸素』です。酸素の発見には数人の化学者が関わっています。


今回は酸素発見までにいたる、化学者たちの戦いを学びましょう。

シェーレが発見した、2種類の空気

ブラックが発見した二酸化炭素には、火を燃やす働きがないことは知られていました。


ブラックは、「二酸化炭素の中では、火は燃え続けることができない」ことを発見しています。

二酸化炭素の中では火は燃え続けられない

それに対して疑問を持ったのは、スウェーデンのシェーレという化学者です。

スウェーデンのシェーレ

彼は、


「二酸化炭素の中では、火は燃えることができない。では、どんな空気の中なら火は燃えるのだろう?」


と考えました。

「火の空気」と「汚れた空気」

シェーレは特殊な薬品を使うことで、空気は主に2つの気体に分けられることを発見しました。


彼はさらなる詳しい実験の結果から、

  • 空気の 3分の1 は、火を燃やす働きがある
  • 残りの 3分の2 は、火を燃やす働きがない

ことに気づくことができました。

シェーレの発見

シェーレは、火を激しく燃やす方の空気を「火の空気(fire air)」、火を燃やさない方の空気を「汚れた空気(foul air)」と名付けています。

3分の1(約33%)と3分の2(約66%)という割合から分かるように、もちろん、シェーレが発見した「火の空気」は酸素のことですよね。


反対に、「汚れた空気」とは窒素のことです。

シェーレの発見
シェーレが火の空気(酸素)を発見した時期は、1770~1773頃だと推測されている

このことからシェーレは、窒素の発見にも大きな役割を果たしたと言われています。

まだこの時は、ブラックが発見した固定空気(二酸化炭素)は「普通の空気が少し変化したもの」くらいに思われていました。


しかしシェーレはこの実験により、「空気はいろいろな気体が混ざっている、混合物なのだ!」という発見をしたわけです。


人類は「空気はこれ以上に分割できない基本的な単位だ」と思っていたので、とても驚く発見だったわけです。

もし、空気が「火の空気」だけでできていたら、火事のときには消すのが大変で、水だけではとても間に合わないだろう。

シェーレ  『エピソードで読む自動車を生んだ化学の歴史』より

酸素の発見者!?プリーストリ

シェーレが「火の空気」として酸素を発見し、論文を完成させました。


なのでシェーレが『酸素の発見者』ということで世界中に知られることになる……はずでした。


しかし、自分の先生に論文発表のためコメントをもらうことに時間がかかり、発表できずに1年、2年と時が経ってしまいます。


そうこうしている間に、イギリスのプリーストリという化学者が酸素の正体をつかみかけていました。

プリーストリ

彼が水銀の灰をレンズで熱していたとき、何らかの気体が発生することを不思議に思っていました。

その気体を集めて性質を調べると、

  • その気体の中では、火が激しく燃える
  • その中では動物も長く生きることができる

ことが分かったので、その気体の発見について論文で発表しました。

プリーストリの酸素の発見

もちろん、この気体が酸素です。

世間ではプリーストリがこの実験をした日が、人類が酸素を発見した瞬間だとされています(1774年)。

その2年ほど前にシェーレは「火の空気」として酸素を発見していましたが、発表はプリーストリが先であったため、プリーストリが酸素の発見者だと言われることになりました。


ちなみに、シェーレは酸素を「火の空気」と名付けましたが、プリーストリは「脱フロギストン空気」というカッコいい名前をつけました。

シェーレとプリーストリの酸素の発見

シェーレは控えめな人であり、「私が先に発見した!」などの主張はしなかったといいます。


彼はそんなことよりも研究が好きで、酸素の他にも塩素や窒素など、様々な気体の発見に関わった素晴らしい化学者です。

「酸素」という名前をつけたのは、その少し後に登場するラヴォアジエという学者です。

ラヴォアジエ

彼は二酸化炭素や酸素など、様々な気体をよく調べ上げて発表し、現代の化学の基礎を作った偉大な人物です。

酸素の作り方と集め方

そんな酸素ですが、今では実験室で簡単に作り出すことができます。


二酸化マンガンうすい過酸化水素水(オキシドール)を反応させると、酸素が発生することが分かっています。

二酸化マンガンとうすい過酸化水素水

マンガンとは金属の一種であり、二酸化マンガンはそれが変化した物質です。

日常では、マンガン乾電池などに利用されます。

マンガン乾電池

過酸化水素水とは、強力な刺激を持つ液体です。皮膚にふれると強い痛みを感じます。

たいへん危険なので、実験では水で薄めた「うすい過酸化水素水」を使います。

「うすい過酸化水素水」は別名オキシドールと呼ばれ、消毒液に使われています。

ちなみに、ジャガイモなど野菜にうすい過酸化水素水をかけても、酸素は発生します。

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酸素は水上置換法で集めること

酸素は水に溶けにくい気体なので、問題なく水上置換法で集めることができます。

酸素を水上置換法で集める

実験の最初に発生する気体には、普通の空気がたくさん混じっています。


なので純粋な酸素を集めるため、最初に発生した気体は瓶に集めないでおきましょう。

酸素は、空気と比べて少しだけ重い気体です。


しかしその差がわずかであるため、下方置換法を使っても純粋な酸素を集めることはできません


したがって酸素を集めるときには、水上置換法を使います。

酸素は火を激しく燃やす性質を持っています。


なので、酸素を発生させすぎると些細なことで火事になる危険もあります。十分注意しましょう。

火に関して、水素と酸素の違い

水素はキャベンディッシュが「燃える空気」と名付けた危険な気体です。
水素はそれ自体が燃えて爆発するので、部屋に充満するととても危ない状態です。

水素の扱いを誤ると、水素の発見の回で学んだ通り大事故が起こります。

水素の爆発により多数の焼死者を出した飛行船

一方、酸素も「火の空気」と呼ばれていましたが、それはあくまでも物質が燃えるのを助ける存在です。


酸素自体は燃えたり、爆発したりしません。

「発見する」とはどういうこと?

今回、酸素の発見に関わった化学者として、

  • シェーレ
  • プリーストリ
  • ラヴォアジエ

の3人を紹介しました。

酸素発見に関わった人たち

世間では一応、プリーストリが酸素の発見者とされていますが、様々な人が関わっています。


私たちは、「発見した人」をどうやって決めればいいのでしょうか?

最初に純粋な酸素を作ることに成功した人?

「発見」の定義をはっきりさせることは難しいことです。


例えば「最初に純粋な酸素を作った人」を発見者とするなら、3人の中ではシェーレが最初です。火の空気を空気から分離し、発見しているからです。


しかし酸素を分離するだけならば、シェーレの100年以上も前にドレベルという錬金術師がすでに成功しています。

オランダの発明家ドレベル

ドレベルは世界で最初に潜水艦を発明した人として有名です。

ドレベルの潜水艦
wikipedia

彼は酸素を作り出して瓶にためておき、潜水艦に持ち込ませていました。


ときどき瓶から酸素を放出することで、長く潜水できるようにしていたのです。

参考: Oxygen: The molecule that made the world

では、本当はドレベルが酸素の発見者なのでしょうか?(しかも、ドレベルもこの方法は錬金術の師匠から教わっているようです。)

最初に酸素の性質を理解した人?

単純に分離するだけでなく、その性質も理解した人を「発見者」と呼ぶのなら、

  • ドレベル
  • シェーレ
  • プリーストリ
  • ラヴォアジエ

の4人とも「発見者」とは呼べないかもしれません。みんな、正確な酸素の解釈ができていないからです。


シェーレもプリーストリも、あくまでも酸素を「空気の種類の一つ」と考えており、まさか「空気を構成する一部の気体」などとは考えていませんでした。


ラヴォアジエは2人より明らかに酸素の性質を正確に理解していましたが、それでも間違いがありました。

最初に酸素の存在を発表した人?

「発見者」を最初に酸素の存在を論文で発表した人と考えれば、それは間違いなくプリーストリになります。


プリーストリが酸素の発見を発表したのは1775年11月、『種々の空気に関する実験と観察』という論文です。1774年に行った実験をまとめています。


シェーレはもっと早く発見していましたが、発表は遅れてしまいました。

化学者たちの共同作業

以上から分かるように、『酸素の発見』は決して一人の力で成し遂げたものではありません。


様々な化学者が実験や考察を繰り返し、お互いの研究結果を学んでいます。


その積み重ねで正確な酸素の理解が得られているのです。


酸素だけでなく、様々な「発見」は科学者の共同作業で成し遂げられているものと言えます。


私たちは、それぞれに関わった様々な学者の努力を尊敬し、その姿勢から学んでいくことにしましょう。

参考: 『プリーストリ : 「酸素の発見」と燃焼の本質』 化学と教育 65巻8号

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