シェーレとプリーストリ。2人の化学者の『酸素』発見物語

酸素を発見したシェーレとプリーストリ 中1理科

ブラックとキャヴェンディッシュという化学者が『二酸化炭素』と『水素』を発見し、人類の空気への理解を大きく発展させました。

さて、次に発見されるのは『酸素』です。酸素の発見には数人の化学者が関わっています。今回は酸素発見までにいたる、化学者たちの探求物語を学びましょう。

🔥 「火の空気」と🧟‍♂️ 「汚れた空気」

スウェーデンに、非常に優れた化学者(薬剤師)がいました。その名もヴィルヘルム・シェーレ

スウェーデンのシェーレ

彼はブラックの固定空気の発見もあり、既に「空気は単体ではなく、様々な気体が混ざったものだ!」ということをバッチリと見抜いていました。そこで彼は、「じゃあ、具体的にどんな気体が、どんな割合で混ざっているのだろうか?」と考えました。

空気は混合物

シェーレが発見した空気の構成割合

シェーレ『空気と火に関する化学論考』
シェーレの著作の扉絵

シェーレは度重なる実験の結果、

  • 空気の 3分の1 は、火を燃やす働きがある
  • 残りの 3分の2 は、火を燃やす働きがない

ことに気づきました。

シェーレの発見

シェーレは、火を激しく燃やす方の空気を「火の空気(fire air)」、火を燃やさない方の空気を「汚れた空気(foul air)」と名付けています。


現代では明白ですが、シェーレが発見した気体はもちろん、

  • 火の空気… 酸素
  • 汚れた空気… 窒素

のことです。このことから、シェーレは窒素の発見にも大きな役割を果たしたと言われています。

シェーレが発見した空気の構成割合

シェーレは自分自身の実験結果より、「空気はいろいろな気体が混ざっている、混合物なのだ!」という、アリストテレスの「空気は元素で、純粋な物質だ」という考え方は間違っていることを確信しました。

仮に空気が全部「火の空気」だけでできているとしたら、火事のときには消すのが大変で、水ではとても間に合わないであろう。

シェーレ  『エピソードで読む自動車を生んだ化学の歴史』より

🌴 空気をもっと綺麗に!プリーストリの発見

1733年、イギリスで生まれた化学者プリーストリは、化学に発展に偉大な仕事を成し遂げます。それこそ、酸素の発見です。

プリーストリ

化学者であるプリーストリは当然、ブラックが1754年に発見した固定空気(二酸化炭素)のことを知っていました。彼の家の近くにはビール工場があり、ビールが発酵するときに放出する二酸化炭素を水に溶かし、世界初の人工の炭酸水を作ったのもプリーストリです。

下に溜まる二酸化炭素
ビールの真上に貯まった二酸化炭素を溶かして炭酸水を作ったプリーストリ
炭酸水
シュワシュワでうまい

しかし二酸化炭素は空気中や、動物の吐く息にも含まれるとはいえ、二酸化炭素だけの中では、

  • 生物が呼吸できずに死ぬ
  • 火も燃えることができない

といった、なんだか都合の悪い性質を持っています。実際、ネズミをびんの中に閉じ込めておくと、びんの中は二酸化炭素ばかりになり、しばらくするとネズミは呼吸できずに死んでしまいます。

びんの中のネズミは死ぬ

そこでプリーストリは、「神様はきっと、この空気を綺麗にする仕組みを自然に作っているはずだ」と考えました。世界中の人類が呼吸するごとに固定空気(二酸化炭素)を大量に出し続けていますが、人類はいつまで経ってもネズミのように窒息死することがないからです。

人間は酸素不足で死なないのはなぜか
ずっと二酸化炭素を出しているはずなのに、人類が瓶の中のネズミのように死なないのはなぜか

神様が作った「空気を綺麗にする仕組み」を探す

人間は二酸化炭素を出し続けているのに、なぜネズミのように窒息死しないのか?神様はどうやってそんな仕組みを作っているのだろう?


プリーストリは、「神様が、二酸化炭素だらけになった空気を綺麗にしている方法」を探すため、いろいろな実験を繰り返しました。神様の凄さを皆に知ってもらおうとしたのです。

  • ガラスを綺麗に磨いてみる
  • 冷やしたり、暖めてみる
  • 毒を入れてみる
  • 土を入れてみる

などいろいろ試しましたが、全て失敗。何をやっても、ネズミが生き続けることはできませんでした。

プリーストリ、光合成を発見!?

光合成を学んだ人はすぐに分かるはず。二酸化炭素を酸素に変えてくれているのは植物の光合成です。プリーストリも、優秀な探偵のように、実験を通してその秘密に迫ります。


プリーストリはある日、二酸化炭素だらけのびんの中に、土と一緒に草を入れました。草も植物であり、生物なので、ネズミのように死んでしまうはず….と思っていましたが、なんと草は二酸化炭素の中でも問題なく育っていくのです。

草が空気を綺麗にする?

しかも、草にひっついていた小さな虫も、なぜか死ぬことなく生き続けています。プリーストリはこれを見て、植物が空気を綺麗にしているのに違いない!と確信します。


プリーストリが過ごしたこの頃の世界では、産業のために木を伐採することが多くなっていましたが、それが環境によくないことにも気づくことができました。

プリーストリは、植物が空気を綺麗にする、つまり「植物が二酸化炭素を酸素に変える」ことを掴んでいましたが、

  • 植物の何の働きによるものか
  • そのための条件は何か

など、細かなところはまだ不明でした。したがって、とても大きな貢献をしたものの、プリーストリが光合成の発見者だと言うことはできません。

💡 プリーストリが酸素の発見者となる

プリーストリは、やはり人間が生きるためには、空気のうちの一部の “純粋な空気” だけが必要であり、それを作ってくれるのは植物なのだろう、と考えるようになりました。


そして彼はついに、水銀を利用した方法により、動物が生きたり、火が燃えるために必要な “純粋な空気” を自由に手に入れられるようになりました。もちろん、水上置換法を利用しています。

プリーストリ、水上置換法で酸素を発見

シェーレとプリーストリ

化学の世界では一応、「酸素を発見したのはプリーストリだ」ということになっています。しかし説明したとおり、シェーレの方が2~3年も早くに “火の空気” として、酸素を発見しており、しかも空気中に含まれる酸素の割合まで突き止めています。

シェーレとプリーストリの酸素の発見
プリーストリは、最初は酸素を「脱フロギストン空気」と名付けた

しかし実はシェーレがこの発見を論文で発表しようとするとき、監修をする人物がもたもたしていたため、数年間も発表することができなかったようです。その間にプリーストリが論文を発表してしまったため、世間では「プリーストリが最初の発見者だ!」ということになりました。


シェーレにとっては、自分の業績が認められない大変悔しい出来事のはずですが、彼は名誉よりも「真理を知る」ことに重きを置いた素晴らしい人間性を持っていたため、「僕が先に発見したんだ!」といった主張は控えていたといいます。


彼はそんなことよりも研究が好きで、酸素の他にも塩素や窒素など、様々な気体の発見に関わった素晴らしい化学者です。

🧪 酸素の作り方と集め方

そんな酸素ですが、今では実験室で簡単に作り出すことができます。


二酸化マンガンうすい過酸化水素水(オキシドール)を反応させると、酸素が発生することが分かっています。

二酸化マンガンとうすい過酸化水素水

マンガンとは金属の一種であり、二酸化マンガンはそれが変化した物質です。日常では、マンガン乾電池などに利用されます。

マンガン乾電池

過酸化水素水とは、強力な刺激を持つ液体です。皮膚にふれると強い痛みを感じます。たいへん危険なので、実験では水で薄めた「うすい過酸化水素水」を使います。


「うすい過酸化水素水」は別名オキシドールと呼ばれ、消毒液に使われています。

ちなみに、ジャガイモなど野菜にうすい過酸化水素水をかけても、酸素は発生します。

じゃがいもから酸素を作る
Hydrogen Peroxide decomposes using a Catalyst | Make Science Fun
酸素が発生したのでマッチを近づけると燃え、離すと火が消える。じゃがいもにオキシドールでも同じ反応。

酸素は水上置換法で集めること

酸素は水に溶けにくい気体なので、問題なく水上置換法で集めることができます。

酸素を水上置換法で集める

実験の最初に発生する気体には、普通の空気がたくさん混じっています。なので純粋な酸素を集めるため、最初に発生した気体は瓶に集めないでおきましょう。


酸素は火を激しく燃やす性質を持っているため、酸素を発生させすぎると些細なことで火事になる危険もあります。十分注意しましょう。

酸素は空気よりも少し重い気体ですが、そんなに重いわけでもないので、下方置換法で収集することはかなり難しいです。


素直に水上置換法で集めましょう。

火に関して、水素と酸素の違い

水素はキャベンディッシュが「燃える空気」と名付けた危険な気体です。
水素はそれ自体が燃えて爆発するので、部屋に充満するととても危ない状態です。


水素の扱いを誤ると、水素の発見の回で学んだ通り大事故が起こります。

水素の爆発により多数の焼死者を出したヒンデンブルク号

一方、酸素も「火の空気」と呼ばれていましたが、それはあくまでも物質が燃えるのを助ける存在です。


酸素自体は燃えたり、爆発したりしません。

📚 おすすめ参考文献

📖 参考になった書籍

エピソードで読む自動車を生んだ化学の歴史

タイトルを読む限りは、自動車に関する化学の本であるイメージを受けますが、内容は化学の歴史として、自動車に限らずとても詳細に書かれています。イラストや絵も豊富で読みやすく、

  • ブラック
  • キャヴェンディッシュ
  • シェーレ
  • プリーストリ

など気体を発見した化学者のエピソードもほぼ全て出てきます。化学と車が好きなら必読で、google booksでもかなりの部分が公開されています。

エピソードで読む自動車を生んだ化学の歴史
アリストテレスの説が続く限り蒸気自動車は生まれなかった。間違った燃焼理論「フロギストン説」。分子で説明されるガソリンの燃焼反応。ガソリンに求められる性能と分子構造。アポロ宇宙船に採用された燃料電池。人工光合成でCO2から自動車燃料をつくる...自動車の誕生に貢献した化学を人物像とエピソード満載で図解!

📱 参考になったページ

空気とガス これは本当によい本

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大気の酸素濃度と溶存酸素 ラヴォアジエに至るまで、酸素発見ストーリーが網羅されています

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