ガリレオ・ガリレイは、2000年も続いたアリストテレスの常識をぶち破った偉大な物理学者です。
ガリレオは、
運動体は、これを押す力がその働きを失った時に静止する
というアリストテレスの考えに反対し、「物体は、他に力が加わらない限り、永遠に運動を続けるのだ」と考えました。

ガリレオの肩の上に立つニュートン
物理学の研究により世界を変えた天才を挙げるとすると、ニュートンとアインシュタインは絶対に外すことができません。

ニュートンは物理学を確立させ、アインシュタインはそれを信じられないほどに発展させた人物です。現代の研究者たちも、この2人の影響からは決して逃れることはできません。
その中でもニュートンは、自分で「巨人の肩の上に立った」とフックへの手紙に書いている通り、様々な先人の基礎研究の上に理論を打ち立てています。
ニュートン理論に大きな影響を与え、そのニュートンを肩に乗せる巨人になった科学者こそ、アリストテレスを破ったガリレオです。ニュートンは、ガリレオが亡くなった1年後に生まれました。

ニュートンは数学を用いて、ガリレオのアイディアをより正確にまとめ上げました。
💪 2力のつり合い
ニュートンはガリレオの考えをヒントに、「物体が静止している理由」を解き明かしました。
ニュートンが月と重力の関係などについて詳しく書き記し、天地統一を証明した書籍『自然哲学の数学的諸原理』(別名:プリンキピア)は、
- 史上最高の物理学の本
- 人類の宝
と呼ばれ、今も物理学の研究者が熟読する素晴らしいものです。

この本にてニュートンは、静止した物体について重要なことを言っています。
静止している全ての物体は、そこに力が働かない限り、静止し続ける
『自然哲学の数学的諸原理』の「静止」関してのみ抜粋
これは、”Newton’s First Law”「ニュートンの第一法則」、または「運動の第一法則」と呼ばれる法則の一部です。
物体に何の力も働いておらず、静止しているとき
少しも動かず、静止しているリンゴを例にしましょう。

ニュートンは、リンゴが静止する理由を、「リンゴに力が働いていないか、リンゴに働く力がつり合っているからだ」と考えました。
例えば地球の重力が及ばない宇宙空間にあるリンゴが静止しているとします。物体に何の力も働いていないから、静止しています。

これが、ニュートンによる運動の第一法則の内容の一部です。とても簡単ですね。
物体に力が働いていても、静止しているとき
運動の第一法則は、もう少し奥が深い。たとえ物体に力が働いていても、その力がつり合っているのなら、物体は静止し続けます。
地球上のリンゴには、必ず重力が働いています。それでも手のひらにリンゴを乗せたとき、リンゴは静止しています。

それは、「リンゴに働く力がつり合っている」からです。
リンゴが300gとすると、リンゴには3Nの重力が働いています。しかし一方で、リンゴが落ちないよう、手のひらから同じ3Nの力(垂直抗力)がリンゴに働いています。この状態を、「リンゴに働く2つの力がつり合っている」と表現します。

例えば、机の上に積んだ本を動かそうと、指で5Nの力で押すとします。しかし、積まれた本は重いのでなかなか動かず、静止したままです。

本を5Nの力で押しているのに静止したままである理由は、本には反対方向の、5Nの摩擦力がかかって力を打ち消しているからです。
本に働く力は全体で、「本を押す5Nの力」と「本に働く5Nの摩擦力」の2力がつり合い、打ち消し合っています。だから積まれた本は動かず静止しています。

「リンゴがなぜ静止しているのか」を考える場合は、リンゴに働く力だけに集中して考えます。
例えば、力をよく考えてみると、「リンゴが手を押す力」も存在します。

しかし、これはあくまでも「手にかかっている力」の話であり、「リンゴにかかっている力ではありません」。「リンゴがなぜ静止しているのか?」を考えるときには、全く関係がない力です。
2力のつり合いの条件
2つの力のつり合いには、以下の条件があります。
- 2つの力の向きが反対である
- 2つの力の大きさが等しい
- 2つの力が一直線上にある
この3つの条件が、全て一つの物体に関して揃っていることが大切です。

例えば四角形の厚紙に2つ糸をつけて引っ張る場合、2つの力の向きが反対になっていなければ厚紙は静止せずに動きます。2つの力がつり合っていないからです。

しかし力の向きを反対にしたとしても、力が等しくなければ力がつり合わず、厚紙は静止できません。

向きも反対にし、力を等しくしたとしても、以下のように力が一直線上になければつり合わず、厚紙は静止できません。回転してしまいます。

あくまでも、3つの条件を全て満たした場合のみ、物体は静止します。物体が動くのは、力のつり合いが崩れたときだけ。

その物体に働く力がつり合っているのなら、力は打ち消し合い、力が働いていない状態と同じになります。よって、物体は静止し続けるのです。
⚖ 力がつりあっているその他事例
身の回りを見渡して、もし動かずに静止している物体があれば、必ずその物体に働く力がつり合っています。
例えば、クレーンに支えられる大きなコンテナ。このコンテナが動かず、クレーンにより空中で静止しているとしましょう。

このコンテナが1トン(1000kg)だとすると、コンテナにかかる重力は10,000Nです(100gの物体にかかる重力を1Nとする)。

コンテナは静止しているから、コンテナにかかる力はつり合っているはずです。真下の方向へ10,000Nかかっているのに静止しているのだから、真上に10,000Nの力があるはずです。
その真上への力が、「クレーンがコンテナを引く力」ですね。

- 2つの力の向きが反対である
- 2つの力の大きさが等しい
- 2つの力が一直線上にある
物体に働く2つの力が以上の条件を満たし、つり合っているからこそ、物体は静止しているのです。
今回は、物理学の最高傑作、ニュートンの『プリンキピア』に書かれている運動の第一法則(Newton’s First Law) 、
静止している全ての物体は、そこに力が働かない限り、静止し続ける
『自然哲学の数学的諸原理』の「静止」関してのみ抜粋
この言葉についてサラッと学びました。
とてもシンプルに説明しましたが、実は運動の第一法則、もっと奥が深い法則です。なんと、力が全く働いていないか、もしくは力が完全につり合っているにも関わらず、物体が動いている場合もたくさんあるのです…。
また後で物理学を深く学ぶとき、ニュートンの法則をもっと楽しく理解できますよ!
📚 おすすめ参考文献
📱 参考になったページ
・Newton’s first law NASAの簡単な解説。
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