光の直進から速さまで、光と科学者2000年の歴史

光の直進、反射、速さ 中1理科

「夜空を見上げる時、お前はタイムマシンに乗っているのだ」と言われたら、信じることができますか?

天の川

写真に映っているのは天の川。


私たちの祖先は、太古の昔から、夜空の美しさに感動を隠すことができず、たとえ毎晩見ていたとしても、全く飽きることはありませんでした。


昼間は太陽が地球を照らすし、夜は星空が美しい光を与えてくれます。は生活には絶対に欠かすことのできないので、はるか昔から人類は、を不思議で神聖なものだと捉えていました。



そのため人類は、数千年をかけて、光の性質をつきとめるために情熱を尽くしてきました。光を応用することで、

  • 文明の進歩
  • 宇宙の解明

を達成することができるからです。

光の謎に挑んだ物理学者たち

科学者(物理学者)たちが研究を進めるにつれ、やはりは不思議で美しいものであることが分かってきました。


ここで、冒頭の言葉を思い出してください。

「夜空を見上げる時、お前はタイムマシンに乗っているのだ」

天の川

実は現在では、科学者たちが2000年をかけて光を研究したお陰で、この言葉が本当であることが分かっています


今回はそんな「光の謎」と戦い、様々な性質を解き明かした科学者2000年の歴史について学び、最後にタイムマシンと光の関係を学んでみましょう!

ユークリッドがまとめた『光』の性質

まずは基本の確認です。


光がなければ、ものは全く見えませんよね。したがって私たちが物体を見るには、電気や太陽など、「自分から光を発するもの」が不可欠です。

光源

自分から光を発するものは、

  • 🔆太陽
  • 💡電灯
  • 🔥火
  • 💻パソコンやスマホの画面

などが代表的です。これらを光源と呼びます。

逆に、

  • ✏️筆記用具
  • 💧水
  • 🐈猫
  • 🏔山

などは、自分から光っていないので、光源ではありません。

光源と光源でないもの

光源があるからこそ明るくなって、ふだん目が見えるわけですね。

ギリシャの数学者ユークリッド

光は、太陽などの光源から出てくることは何千年も前からの常識であり、誰もがなんとなく分かっていたことです。


しかし、実際に「光はどんなもので、どんな性質があるのか?」という疑問には、人類はなかなか答えられませんでした。「光それ自体」を見ることはとても難しいからです。


そんな中、約2300年前の紀元前200~300年に生きたギリシャの数学者ユークリッド(エウクレイデス)が本格的に光の謎を解き始めます。

ギリシャの数学者ユークリッド
ユークリッドはエジプトでも活躍した

約2300年も前に生きたユークリッドは、

  • 光は直進する
  • 光は反射する

この2つの光の性質を、自分の本に書き残しました。

光の直進

太陽や電球を見ることはできますが、ふだんは、

  • 太陽からの「光の道すじ」
  • レーザーポインタからの「光の道すじ」

などは目に見えません。


これが、光を研究することが難しかった理由です。

光の道すじは見えない

しかし太陽光の道すじは、チリや煙が舞った場所で見えることがあります。その光は直進していることに気づきます。

アンテロープキャニオン
アメリカのアンテロープキャニオン

レーザーポインタでも、濁った石鹸水を通せば、光の道筋がとても良く見えます。線香のけむりを使ってもOK。

レーザーポインターと光の道すじ

これらを見ての通り、光は決して曲がらず、まっすぐ進むことで知られています。


これを光の直進といいます。


くっきりとしたができることも、光が直進していることを納得させてくれます。

光の直進と影

上の写真の通り、太陽からの光はバラバラな方向ではなく、常にまっすぐ平行に地球に降り注いでいるからこそ、くっきりとした影ができるわけです。

光の反射

ユークリッドは、「光源から出た光は、物体にあたって反射する」ことも発見し、本に書き残しています。


ユークリッドの言う通り、光は物体にぶつかると、跳ね返ります。これを光の反射と呼びます。

光の反射

当然、反射した光もまっすぐ進みます。光の直進。

物体が見えるのは、光が目に入るから

ユークリッドは、

  • 光の直進
  • 光の反射

の2つを発見して本に残しましたが、それだけではありません。「なぜ、明るい場所では物体が見えるのだろうか?」という謎についても考えます。

「なぜ物体が見える?」ユークリッドの考え

「物体が目に見えること」のような、一見当たり前であることに疑問を持つことは、優れた科学者になるための条件の一つです。


2300年ほど前に生きていたユークリッドも、「明るい場所では、どうして物体が目に見えるのだろう?」と疑問に思っていました。考えた結果ユークリッドが仮定した答えは、


「昼間は、目から光線のようなものが出ていて、それが物体にぶつかると、その物体が目に見えるのだろう」


というもの。

ユークリッドの視覚論
ユークリッドは物体が見える理由を、視線の働きだと仮定した

・目から視線が直線的に出ていく

・視線が当たる物体は見えて、当たらない物体は見えない

ユークリッド『視覚論,Optica.』(c.300 B.C.) 参考: 田山令史『視覚論と脳』

しかし、これはユークリッドの間違いでした。昼間であれ人間の目からは、ユークリッドが言うような光線っぽいものは出ていません。

物体からの光が目に入ると、見える

真実は、ユークリッドが仮定したものとは正反対のものでした。


現代の科学では、「物体から出る光線が目に入ると、物体が見える」ことが分かっています。

物が見える原理
目は、物体からの光を感知する

太陽などの光源は、物体からの光が直接見えます。しかし光源ではない物体は、光源からの光を反射することで、私たちの目に映ります

光源ではないものが見える理由

太陽など、とても強い光源を直接に目で見ることは絶対にやめましょう。わずかでも直視すると目の組織が破壊され、視力が低下、失明します

つまり、

  • 光源(太陽やスマホなど)……直接光が目に入って、見える
  • 光源ではないもの(月や猫など)……光源からの光を反射して目に入るから、見える

ということです。

本が読めるのは、本が光源からの光を反射するから

本など「光源ではないもの」は、光源がなければ見えません。

石鹸水を通すと「光の道すじ」が見えたのも、石鹸水のにごり成分が光にぶつかって方向を変え、目に入ったからなのです。

光の道すじが見えた理由

何かにぶつからない限り、光が見えることはありません。

光の速さを計測した科学者たち

光の面白い話といえば、光のスピードです。この世に存在する全てのものの中で、最も速いものがです

  • 光の直進
  • 光の反射

といった光の基本は約2300年前にユークリッドが解き明かしていたわけですが、

  • 光の速さ

に関しては、なんと西暦1700年ごろまで全く謎のままでした。光の速さの計測に成功したのは、ユークリッドが死んでから約2000年後です。

光のスピードの計測に挑戦した科学者たち

ガリレオ「光の速さは有限だ!」

「光の速さ」について、なぜユークリッドが死んで2000年も誰も研究していなかったのでしょうか?


それは、今までの科学者の多くが、「光の速さは無限大であり、光が伝わるのに時間は一切かからない」と考えていたからです。


しかし、イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイは、「いやいや、光の速さは有限である。私が計測してみせよう」と言いました。

光の速さ計測に挑戦するガリレオ

ガリレオは、遠く離れた丘に1人ずつ立たせて、「ランプが光るのが見えたら合図を出す方法」で計測しようとしましたが、光が速すぎて全く計測不可能でした。


「光の速さは分かりませんでした」と結論づけて、ガリレオの挑戦は失敗します。かわいいね。

レーマー「木星の観測で光の速さが分かる」

ガリレオが行った計測は、光の速さを測るには近すぎました


そこで、デンマークの天文学者レーマーは、天体観測により、光の速さを推測できると考えます。


特に、木星の衛星の見え方の違いに注目しました。

光速を計測したレーマー

少し難しい話ですが、「地球と木星の位置が離れるほど、木星が見える時間がずれてしまう」という原理を利用しています。

レーマーが計測した光の速さ

その結果、レーマーは光の速さを秒速22万kmだと結論づけました。


レーマーは、人類で初めて光の速さを推測した、この素晴らしい成果を堂々と発表しました。しかし、まだまだ「光の速さは無限大だ」と考える人が多く、すぐに認められたわけではありませんでした。

フィゾー「光の速さは秒速約30万Km」

レーマーは天文学の知識を使って光の速さを秒速約22万kmと推測しましたが、後にフランスの科学者フィゾーが、地上でかなり正確な光速の計測に成功しました。

地上で光の速さを計測したフィゾー

ガリレオも地上で光の速さを計測しようとしましたが、地上は距離が近すぎて失敗に終わっていました。


しかしフィゾーは、遠く離れた丘から光を反射させ、光を歯車に通すことで、歯車の回転数などから速さを計測する複雑な方法を利用します。

フィゾーの光速計測方法
フィゾーの計測方法

計算の結果、フィゾーは光の速さを、秒速約30万kmであると結論づけます。


このフィゾーの計測は、実際の光の速さとほとんど同じ、とても正確なものでした。


現代ではもう少し正確な数字を計測できるものの、光の速さは今も秒速30万kmとして知られています。

光は1秒間に地球を7周半まわる!?

フィゾーが計測した通り、光の速さは秒速30万kmです。ドイツの天才物理学者アインシュタインは、「光こそがこの世に存在する最も速いものであり、これより速いものは存在し得ない」ことを証明しています。

アインシュタイン

さて、世界一有名な科学者、アインシュタインほどの天才が「光より速いものはこの世に存在しえない」と断言するほどのスピード(秒速30万km)。一体光はどれくらい速いのでしょう?



地球を例に考えてみましょう。地球は、一周4万kmであると知られています。

地球1周は約4万km

光の速さの秒速30万kmは、1秒間に30万km進む速さだということです。


したがって、光は1秒間に地球を7週半も進む計算になります。

光は1秒に地球を7周半

👇の再生ボタンを押してみてください。光は驚異的なスピードで地球を進んでいきます。これこそ、1秒間に地球を7周半するスピードです!

ひゃああ。驚くほど速いですが……、実際のところ、上の動画のように、本当に1秒間で地球を7周半するのでしょうか?


ユークリッドの言葉を思い出しましょう。彼は、「光は直進する」と言いました。


なので実際は、光は丸い地球を周ることはありません。地球から強い光を発したら、秒速30万kmの猛スピードで、直線的に宇宙に出ていくことでしょう。

光は秒速30万kmで直進する

ユークリッドが約2300年前に、

  • 光の直進
  • 光の反射

の基本的性質を示しました。そこからフィゾーにより光のスピードが明らかになるまで、長い長い、科学者2000年の歴史があったのです。

光は過去を伝えるタイムマシン

さて、光の速さを実感したところで、冒頭の「夜空を見上げる時、お前はタイムマシンに乗っているのだ」という言葉を思い出しましょう。

天の川

自由に未来や過去に行けるタイムマシン、誰もが憧れるマシンです。過去に戻って後悔したことをやり直したり、未来の素晴らしい発展を見る旅行に出たり。

バック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアン
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』での、車を改造したタイムマシン

「何万年も未来では、地球や人類はどうなっているのだろう?」と思ったことはありませんか?想像できないほど発展していて、不思議な建物や空飛ぶ車が飛び交う社会になっているのでしょうか?



また、過去も気になりますよね。誰でも一度は、5年前に戻ってやり直したり、もしくは江戸時代やジュラ紀に行って当時の様子をこの目で見たいと思ったことはあるはず。

過去を伝えるタイムマシン、光

未来に行くことは難しいのですが、実は「過去の世界を見ること」はとても簡単です。


例えば、夏の夜空を見上げれば、はくちょう座のデネブが見えます。デネブは、ベガとアルタイルとともに、夏の大三角を作る超有名な星です。

夏の大三角とデネブ
夏の大三角。織姫と彦星の間には天の川が見える

このデネブ、地球からの距離は約1500光年だと言われています。つまり、光がデネブから地球まで到達するのに、1500年かかるほどの距離があるわけです。

デネブまでの距離

物体が見えるのは、その光が目に入るからですよね?


当然、地球でデネブを見るためには、デネブの光が目に届くのを待たなくてはいけません。したがって、私たちが今見ているデネブは1500年前、つまり古墳時代、聖徳太子が生まれる前のデネブです!



逆に言えば、もし高性能の望遠鏡を持って、瞬間移動で1500光年離れたところに行って地球を詳しく見ると、そこには古墳時代の日本が見えるはず!

古墳時代
古墳時代のくらし

そう、そんなに過去が見たいなら、夜空の星を眺めていればよいのです。光は過去を伝えるタイムマシンですから。


人類が本当のタイムマシンを発明するとすれば、きっとこの「過去を伝える」光の性質を利用したものになるでしょう。

おすすめ参考文献

参考になった書籍

いやでも物理が面白くなる〈新版〉 「止まれ」の信号はなぜ世界共通で赤なのか? (ブルーバックス)

「学校で教える物理」は正直、あまり人気がありません。しかし、物理を学ぶにあたり本当に大事なことは、「理屈抜きに感動すること、不思議に思うこと」だということに気づかせてくれます。


今回の「光の速さ」「タイムマシン」などの話が好きな人には特にオススメできます。


身近な事例を物理的に学び感動しつつ、豊かな思考力を与えてくれる本です。
(※2020年現在、Kindle版を購入すると、特典として第6章が読めます。)

マンガ おはなし物理学史 物理学400年の流れを概観する (ブルーバックス)

物理学はとっつきにくいイメージですが、そこにある科学者たちの戦いの歴史に注目しましょう。ドラマを感じ、物理を身近に感じることができます。


古典物理学からそれを揺るがす相対性理論と量子論まで、彼らの議論をマンガで楽しく読みつつ、物理学に親しみを持つことができますよ。


もちろん、今回のガリレオやフィゾーなどの「光速計測」も一通り描かれています。

発展コラム式 中学理科の教科書 改訂版 物理・化学編 (ブルーバックス)

中学理科の基本と発展コラムで構成される本。

  • 中学生…基本以上の知的刺激
  • 大人…理想の復習教科書

といったイメージです。学習指導要領に沿った基本をマスターしつつ、「理科の知識で説明できること」を網羅的に学べる辞書的存在にもなりますよ。

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)

風変わりな科学者がタイムマシンを発明し、西暦80万年2701年にタイムスリップした経験を描いた小説。中学生でもスラスラ読める、予想外の展開の超有名SF小説です。


序盤において、科学者がタイムマシンの原理を気球などを例にして説明するところは大変面白いと思います。


西暦80万年、つまり今から約80万年後。きっと人類の知能は高度に発達し、幻想的な建築物があったり、火星に住む人もいたり、地球は夢のような楽園になっていることでしょうね。ぜひ読んで確認してみてください。

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