【フェルマーの原理】光の真の性質を学び、溺れた人を助け出せ!

フェルマーの原理 中1理科

あなたがライフセーバーであったとして、夏休みのビーチで働いていたとします。


そのとき、遠くで溺れている人を発見しました。一秒でも早く救出しなければ、その人は死んでしまうでしょう。

ライフセーバーが溺れている人を見つけた

このとき、どんなルートで救出すれば、最も早く助けることができるでしょうか?

ライフセーバーが助け出すルート

命がかかっている、重要局面が来ました。今こそ、ライフセーバーとしての本領を発揮するときです。



今回は、偉大なフェルマーの原理を学ぶことで、「溺れた人を助ける最短ルート」を考えていきたいと思います。

🎓 光の性質を考えた科学者たち

今までの学習にて、

この3つの性質を理解しました。


光の直進と反射に関しては、古代ギリシャのユークリッドの時代からよく知られていました。今から2600年ほど前の話。

ギリシャの数学者ユークリッド

光は直進するし、鏡や物質で反射するとき、必ず「入射角 = 反射角」になります。これが有名な反射の法則です。

光の屈折の謎

しかし、「光の屈折」に関しては、なかなか法則を見つけることができませんでした。

入射角と屈折角の関係
  • 入射角と屈折角の関係は?
  • 物質により、どれくらい屈折角が変わる?
  • そもそもなぜ屈折する?

などなど、歴史上の偉人が集まっていた古代ギリシャでも、なかなか綺麗な説明を見つけることができませんでした。


古代ギリシャでも、入射角と反射角の関係を計測して記録していましたが、今まで「どういった計算をすれば、屈折角が分かるのか」を解き明かせなかったのです。

入射角と屈折角の関係
角度の関係は分かっていたが、実際に計測する以外に方法がなかった

光の屈折を説明する完全な法則が見つかったのは、なんと西暦1621年。オランダの数学者スネルが光の屈折に関する法則を発見します。

スネル
オランダの数学者スネル

屈折に関するスネルの発見によって、入射角と屈折角の関係を綺麗に説明することができるようになりました。

スネルの法則
屈折に関する「スネルの法則」

この法則を利用すれば、光の性質を利用した、

  • カメラや望遠鏡のレンズ
  • ダイヤモンドのカット方法
  • 光ファイバー

など、世界を支える技術の発展にとても役立ちます。

⚡️ フェルマー、光の真の性質を発見

しかし…、光はなぜ、こんな性質をしているのでしょうか?たとえば、なぜ「光は直進」し、反射するときは「入射角 = 反射角」になるのでしょうか?


フランスの偉大な数学者であるフェルマーは、

  • 直進
  • 反射 (反射の法則)
  • 屈折 (スネルの法則)

など、全ての光の性質や法則をスッキリ説明するような、一つの原理を見つけ出したいと考えていました。

フェルマーの原理

簡単に言うと、フェルマーは、

  • なぜ光は直進するの?
  • なぜ入射角と反射角は同じなの?
  • なぜ光は、スネルの法則通りに屈折するの?

……といった質問に全て答えられるような、本当の光の性質を探し出そうと考えたわけです。

反射の法則の謎

フェルマーはまず、「入射角と反射角は必ず等しい」反射の法則について考えました。


A点とB点があり、その前に鏡が置いてあるとします。下図は、上から見た図です。

鏡と光

光がA点から、鏡に反射してからB点へ向かうとします。


反射の法則を学習した人なら、「A点→鏡→B点」へ向かう場合も必ず、入射角 = 反射角となることを知っていますよね。


光は反射の法則に従って、下図のように、点Cで反射するはずです。

反射の法則
乱反射と鏡面反射』で作図練習したのを思い出して

しかし…、なぜいつも入射角と反射角が同じになるのでしょうか


光もたまには、下図のDやEで反射して、入射角と反射角が違ってもいいんじゃないでしょうか?

ここでフェルマーは、


「光が反射してある点へ向かうとき、最短距離を進むように反射する」


という、古代ギリシャで発見された考えに注意を向けます。


確かにその考えの通り、A→鏡→B へ進むとき、入射角と反射角が等しい地点で反射すると、必ずそれが最短距離になるのです。

最短距離の道

もし👇の図のように、「入射角 = 反射角」にならない鏡のD点で反射したりすると、Bまで長い距離を進まなければなりません。


A’とB までが直線になるような、C点で反射したときだけ、最短距離になります。

最短距離を進む光
AからBへ向かうとき、A→D→Bは距離が長い。A→C→Bが最短距離

C点で反射し、A → 鏡 → B の最短距離を進めば、自然と「入射角 = 反射角」になります。


👇のように、鏡の中の像を作図するときも、「入射角 = 反射角」なんて気にせず作図してましたよね?

鏡の中の像の作図
乱反射と鏡面反射』をよく復習してね

これはあくまでも、物体→鏡→目へ最短距離で到達する光の道すじを作図していたわけです。


最短距離の道筋を描けば、必ず 「入射角 = 反射角」となるからです。

「最短距離」で性質を説明できるか?

また、光は直進します。


A点からB点まで向かうとき、決して折れ曲がったりせずに真っ直ぐ向かいます。


これも、「光は最短距離を走るから」と言えば説明できます。

光の直進とフェルマーの原理

ということは……、

  • なぜ光は直進するの?
  • なぜ入射角と反射角は同じなの?

といった光の性質の理由は、「光は、ある点からある点まで向かうとき、常に最短距離進むから」と言えば説明できるのではないでしょうか?

最短距離の原理

光の屈折の謎

しかし、これではダメだとすぐに気づきます。


なぜなら、「最短距離を進むから」といった理由では、光の屈折を全く説明できないのです。


例えば、光が空気中のA点から水中のB点へ向かうとき、必ず屈折します。

空気と水(ガラス)と屈折

光が最短距離を通るのならば、AからBへ進むとき、光は決して屈折せずに直進するはずです。

光は屈折しないはず
最短距離を進むなら、屈折しないはず

しかし残念ながら、実際は光は屈折します。


従って、「光は、ある点からある点まで向かうとき、常に最短距離の道を進む」という考え方は、光の性質を説明できません。

フェルマーの原理失敗

「最短時間」で考えてみるフェルマー

ここでフェルマーは、うまい考えのすり替えを行います。


彼は、「最短距離」を「最短時間に直して考えてみました。

フェルマーの原理

「光の直進」と「反射の法則」は、最短時間と言い換えても説明できます。


どちらも、最短距離を進むことが、最短時間になるからです。

最短時間で進む
フェルマーの原理

あとはもう一つ、「光の屈折」について考えてみましょう。


光が屈折するとき、以下の図のように屈折し、①のルートを通ります。


しかし、本当に屈折した①のルートを通った方が、最短距離の②のルートを通るときよりも早く到達できるのでしょうか?

実はこれ、光は①の道を進んだほうが、最短距離の②を進んだときよりも早く到達できます。


なぜならば、①の方が、水中を進む距離が短いから


光は、水やガラスの中ではスピードが遅くなることを思い出してください。

②のルートは最短距離であっても、沼地を長く走る必要があるから、結果的に①よりも遅くなってしまうのです。

最短距離が最短時間ではない
最短距離だからといって、最短時間で行けるとは限らない

ちなみに、一番水中を短く進める道は、👇の③のルートです。しかしこれでは、空気中を進む長さが長すぎて逆に到着は遅くなってしまいます。

最短距離と最短時間

実際、高校数学や高校物理の知識を使えば、

  • A~Bを最短時間で到着できるルート
  • スネルの法則で導き出される屈折ぐあい

が計算でピタリと一致します。

ダイヤモンドの屈折率が高い理由

全反射の回で学んだように、ダイヤモンドは、他の物質に比べても格段に屈折率が高いです。

ダイヤモンドの屈折率

それもそのはず。当然、光が空気中からダイヤモンド内へ進むときも、最短時間で到達できる道を通ります。


しかしダイヤモンドの中はあまりにも進みにくいので、空気中の距離を少し長くしてでも、できる限りダイヤモンドを進む距離を短くしなければなりません。だから、鋭く屈折するようにできているのです。

水とダイヤの違い

発表されたフェルマーの原理

フェルマーは1657年にこの発見を発表しました。


「光がある点からある点へ向かうときは、最短時間で到達できる道を通る」


この考え方は、フェルマーの原理と呼ばれることになりました。

フェルマーの原理

フェルマーの原理により、たくさんの光の性質の根本を知ることができました。

フェルマーの原理
その他、光の逆進性もフェルマーの原理で説明できる

フェルマーの原理は、「光がある点からある点へ向かうときは、最短時間で到達できる道を通る」という原理です。


しかしこれは分かりやすく言い換えたもので、原理の説明として、厳密には少し違います。ただ、今の段階では上記のように覚えて問題ありません。

詳しくは: 反射結像光学の基礎I:フェルマーの原理

  • 「なぜ最短時間の道を進むんだ?」
  • 「光には意思があり、最短時間の道を選んでいるのか?」

……などなど、フェルマーの原理は不思議なので、いろいろな疑問が出てきます。


しかし……、今のところ、それに理由などありません。”原理” とは、それ以上説明できない絶対的な考え方のことを言います。「人を殺してはいけません」の教えに、理由なんかないのと同じ。


フェルマーの原理の理由が説明できてしまったら、それはもはや原理ではありません。

フェルマーの原理

🏊‍♀️ 光に学び、競走に勝て!

もうおわかりだと思いますが、光は宇宙一のスピード(秒速30万km)を誇るし、さらに常に最短時間の経路を選ぶ、正真正銘の宇宙一のスピードスターだということです。


つまり私たちも何かの競走をするとき、「光ならどう進むだろう?」と考えればいいのです。

壁にタッチしてB点のゴールへ行くとき

例えば部活の練習とかで、


「ここから壁をタッチしてから、A点の棒をタッチするまで到達する記録を計ります」


と言われたとします。

壁にタッチしてゴール

いろいろな進路が考えられますが、ここは当然、「光が選ぶ進路」で進むのが一番いい記録が出ます。フェルマーの原理、光は最短時間の道を選ぶから!


光が選ぶ進路とは、当然「入射角 = 反射角」となる点で壁にタッチすること。今の自分の距離と、壁の向こう側の対象点をイメージして、一直線にゴールに結びつくような経路を全速力で走りましょう。

最短時間で走れる経路

砂浜の上のフラッグを取り合うとき

砂場の上のフラッグを取るまでの記録を計ります。と言われたとき。

砂場のフラッグを取る

この場合も、フェルマーの原理に従います。光が進む進路を全力疾走すれば、それが最高記録が出る進路です。


砂場を走るとスピードが遅くなるので、直進してはいけません。光が「空気中→水」を進むときのように、少し屈折した進路を取り、砂場を進む距離を短くしましょう。

最短距離でフラッグを取る

溺れている人を助けるとき

👇の図のように海で溺れている人を見つけたら、どんなルートで救助に向かうのが、最短時間で救助できるでしょうか?

溺れている人を救助するとき

もちろん、直進して救助するのは最短距離ですが、泳ぐ距離が長いので最短時間にはなりません。


ここでも、光の進む道で救助するのが最短時間です。この場合、

  • 砂浜を走る速さ
  • 海を泳ぐ速さ

では圧倒的に「海を泳ぐ速さ」の方が遅いです。光でいえばダイヤモンドを通るようなもの。つまり……、強く屈折して、少しでも泳ぐ距離を短くしなければいけません。

ライフセーバーが救助するとき進路

👆のように、光がダイヤモンドで屈折するように、強い屈折度で救助に向かうと最短時間で助けることができます。

📚 おすすめ参考文献

📖 参考になった書籍

ファインマン物理学〈2〉光・熱・波動

ファインマンは1965年のノーベル物理学賞受賞者であり、この本はカリフォルニア工科大学での彼の講義まとめ。日本語訳は全4巻。


名門大学の物理学講義で、大学院生も聴講したレベルなので、高校数学/物理の基本理解がないと難しい本。しかし、今回取り上げた光学部分のフェルマーの原理の部分は第2巻収録で、中学生でも面白く読める章です。


この講義まとめである『ファインマン物理学 “The Feynman Lectures on Physics“』は、英語版全3巻(日本語は4巻)ですが、英語版は全て講義写真と共にインターネットで無料公開されています(The Feynman Lectures on Physics)。

英語に抵抗がなければ、無料で読むのが一番いいでしょう。今回のフェルマーの原理の該当部分は以下のリンクです。

Optics: The Principle of Least Time

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