光の屈折による不思議現象の解明と、水中の物理学者テッポウウオの謎

光の屈折とテッポウウオ 中1理科

水に入ったストローは真っ直ぐのはずなのに、少しカクっと曲がって見えませんか?この写真だと、向こう側に折れ曲がって見えています。

光の屈折によりストローが曲がって見える

「勉強する」ということは、科学的に考え方を楽しく身につけるためです。


そして、科学的な考え方を鍛えるためにとても有効なトレーニングは、身近にある不思議な現象を、詳しく説明できるように訓練することです。


今回では、「光の屈折」の知識をもとに、「身近にある不思議な現象」を科学的に解明していきたいと思います。


「光の屈折」に関する詳しい解説を理解していることが前提です。まだ「光の屈折」を詳しく知らない人は、まず最初に以下のリンクから学んでください。

🥤水中のストローが曲がって見える理由

水に入ったストローが曲がって見えていますが、これを科学的に説明できるようになりましょう。

光の屈折によりストローが曲がって見える

そもそもストローが「見える」のも、ストローから反射した光を目が感知するからでしたよね。


ということは……、「ストローが “曲がって” 見える」なら、それはすなわち「光が “曲がって” いる」ということではないでしょうか?

光の屈折イメージ
ストローからの反射光が曲がれば、ストローも曲がって見えるはず

そのとおり!”光が曲がっている”, すなわち光の屈折こそ、ストローが曲がって見える原因です!

光の屈折
写真では、入射角30°、屈折角38°ほど
http://www.fizkapu.hu/fizfoto/fotok/fizf0589.jpg

光は水面で屈折する

ストローと観測者の図を以下に示します。このとき、ストローから反射した光はどう目に入っていくでしょうか?

ストローと光の屈折

水中にある、ストローの底の部分から反射する光を考えてみましょう。


水中から空気中へ出ようとする2本の光を考えてみます。

ストローの底から出る光

ストローの底から反射する光は、水中を直進していきます。


そして、光は水面で屈折して目に届きます。

水面で屈折して届く光

水から空気中へ屈折するときの方向は間違えずに分かりますか?

光が屈折する方向

下図のように、車で考えましょう。光は水中だとスピードが遅くなるので、車にとって沼のようなものです。

水中から空気中への屈折
【光の屈折】最短時間で駆け抜けろを復習しよう

水から空気中へ出るとき、この角度の場合は、左前の車輪が先に沼を脱出します。なので左前のタイヤがたくさん回り、進路は右へ屈折します。

🥤曲がって見えるストロー

光は水中から空気中へ脱出し、目に届きました。しかし、目はこの光が屈折してきたものだ……なんてことは知りません。


「これらの光は、きっと直進してきたのだ」と感じるので、勝手に光を延長し、ありもしない場所にストローの底が見えます。

曲がって見えるストロー

当然、ストローの底だけでなく、水中のストロー全ての部分で同じ現象が起こっています。




そのため、水中のストロー全体の場所が狂って見えているわけです。

光の屈折により見える虚像

ストローは本当は真っ直ぐなのに、光が屈折するために曲がって見えてしまう。


光は屈折しているにも関わらず、それを知らない目が「光は、直進して来たのだろう」と勝手に光を延長して考え、光の出発点を想定してしまう。


決して、光はそこから出ていません。

ストローが曲がって見える理由

これ、以前に学んだ「逆さ富士」にとても似た現象ですよね。

つまり、ストローの曲がって見える部分は虚像(バーチャルイメージ)です。水面に映っている綺麗な富士山と同じ原理なのです。


一方、ストローの水の外にある部分は、光が本当にそこから来ています。決して、光を勝手に延長したりはしていません。だからその部分は実像(リアルイメージ)です。

虚像と実像

『逆さ富士』が見える理由は、水面が光を反射することによって見える虚像でした。

逆さ富士の原理

一方、曲がって見えるストローは、水面で光が屈折することによって見える虚像ですね。

曲がって見えるストロー
  • 逆さ富士…光の反射に騙されて虚像を見た
  • 曲がるストロー…光の屈折に騙されて虚像を見た

水中のストローがズレて見える理由

ストローがズレて見える原理も考えてみましょうか。

光の屈折でズレて見えるストロー

光が屈折する道すじを丁寧に考えます。まずは上から見た図を用意します。

上から見た図

ストローから目に届く光の道すじを考えましょう。もちろん、水から空気中へ出るので屈折します

ストローから目に入る光

目は、これが屈折してきた光ではなく、「この光は直進してきたものだ」と捉えます。


結果、ストローの水中部分だけ、見える位置がズレてしまうわけです。

屈折によりズレるストロー

🔘光の屈折により浮かび上がって見えるコイン

もう、光の屈折に関する理解が深まってきました。


では、紙コップの中に100円玉が入っている状況をイメージしてみてください。

紙コップに入った100円玉

それを、ちょうど100円玉が見えない角度に移動します。

ギリギリ見えない100円玉

そこに水を注いであげると…、見ている角度は同じなのに、100円玉が浮かび上がって見えました

浮かび上がって見える100円玉
浮かび上がるコイン

これも、先程のストローが曲がる現象と同じ理屈です。100円玉は水に沈むので、実際には浮かび上がっているわけではありません。


したがって、浮かび上がって見える100円玉は虚像です。

浮かび上がる100円玉
浮かび上がるコインの説明gif
光の線は1本で描いています

紙コップに水が入ると、コインだけでなく、同じ理由でコップの底全体が浮かび上がって見えますよ

底全体が浮かび上がって見える

👇のGIF画像でも、紙コップの底全体がどんどん浮かび上がっているように見えませんか?

浮かび上がるコイン

例えば……、流れの速い川を見て、「流れは速いけど、この場所はまだ浅いから安全だな」と思ったとします。

意外に深い川底

しかし、絶対に油断しないでください。川底からの光は屈折してあなたの目に届いています。


したがって、川底は、見た目よりも実は深いのです。流れが速ければ足をとられるかもしれませんよ。

浅く見える川

🐟光の屈折に助けられる魚

浮かび上がって見える100円玉と同じ理屈で、水中の魚の位置は違う場所に見えます。


例えば魚を銛でつついて漁をするとき、人間には👇のような位置に見えているとします。

銛で魚の狩りをする

しかし、魚から反射して人間の目に届く光は、水面で屈折しております。


光が水中から空気中へ届く場合は、 “入射角<屈折角” でしたよね。

入射角<屈折角
屈折角の方が大きい

したがって、実際に魚がいるのは、👇のような位置です。

光の屈折で見える魚の位置

魚が見える場所に銛を突いても、魚を捕ることはできません。なぜなら、それは魚の虚像だからです。


うまく漁をするには、光の屈折を計算し、見える位置より少し手前を狙わなければいけません。動く魚を銛で突くのはとてもむずかしいのです。

🛑ズレて見える標識

例えば「止まれ」の標識の前に分厚いガラスを置いたと考えてみてください。

標識とガラスと観測者

このとき、標識からこの人へ向かう光は、以下のような道すじをたどります。

屈折により届く光

したがって、ガラスに隠れていない部分は、少し右にズレて見えることになります。

ズレて見える標識
観測者からは、本来の位置より右に見えてしまう
右にズレて見える標識

🎣水中の物理学者、テッポウウオ

テッポウウオという、とても面白い魚がいます。テッポウウオ科に分類される7種類の魚たちですが、彼らは “水中の物理学者” です。


彼らはなんと、光の屈折を正確に計算し、獲物を捉えることができるのです!

テッポウウオ
テッポウウオ。東南アジアなどに生息

テッポウウオの狩りの方法は興味深いものです。


彼らは、水中から水鉄砲を発射し、木の枝に止まっている昆虫などを水中へ撃ち落とします。

昆虫は、撃ち落とされた瞬間にテッポウウオの餌食です。テッポウウオは、とても正確に水鉄砲をヒットさせる力を持っています。

テッポウウオが獲物を狙う図
水中から昆虫などに正確に水鉄砲を当て、川に落としてすぐに食べる

しかし……!よく考えてみると、水中にいるテッポウウオには、昆虫の位置はズレてみえるはずなのです。なぜなら昆虫からの光は水面で屈折するので、テッポウウオには昆虫の虚像が見えているからです!

正確に撃ち落とすテッポウウオ

見える位置のズレは、決して小さくありません。実物を捉えるのはとても難しい。しかしテッポウウオは、広い角度からでも、何度も何度もピンポイントで撃ち落とすことで知られています。


「なぜテッポウウオは、光の屈折があっても、こんなに正確に撃ち落とせるのだろうか?」


という疑問を研究する学者もいるようですが、調べる限り、まだ完全な答えは出ていないようです……。


きっと、水中で光の屈折率などを暗算し、発射角度を決定しているに違いありません……。まさに、“水中の物理学者” ですね。

テッポウウオは物理学者
今後もしっかり数学と物理学を学べば、テッポウウオのような計算ができるようになります

では……、もし私たちがテッポウウオと同じ状況にいれば、どうやって狩りをしますか?


テッポウウオは天才物理学者なので、こういった物理計算を瞬間的にやって獲物を捉えます。しかし私たちには、そんな動物的頭脳はありません。


私たちのような凡人は、おとなしく獲物の真下にポジションを取ってください。

テッポウウオの位置取り

光が垂直に入射する(入射角が0°)なら、水面で光は屈折せずに直進します


したがって、虚像を見ることなく、正確な獲物の位置を把握できます。テッポウウオのような、天才物理学者になる必要はありません。


複雑な物理学の計算を一瞬で解いてしまうテッポウウオ。動物には、人間が驚くほどの能力が備わっているのです。


理科(物理)を学び、もっと賢くなりたいのなら……、テッポウウオ様に弟子入りしなさい。。

📚おすすめ参考文献

📱参考になったページ

▶️参考になったビデオ

A Fish That Spits With Perfect Aim: Archerfish in Action | ScienceTake | The New York Times

水中の物理学者、テッポウウオの美しい射撃をゆっくり御覧ください。

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