水溶液の濃度を世界で統一した質量パーセント濃度と、その基本練習は終わりましたね。
シンプルなかけ算や割り算があるだけで簡単な質量パーセント濃度の計算。しかし、しっかりと状況を把握した上で、精密な考えをしなければ答えにたどり着くことはできません。
私たちは今、気軽に学んでいますが……、この質量パーセント濃度をしっかりと考える力は、世界を変えた化学者たちが必ず持っていた力です。

精密な実験では、水溶液の濃度が少し違うだけで結果が大きく変わります。
ラヴォアジエ、プリーストリ、ハーバー……。
世界を変えてきた偉大な化学者たちは、研究のために水溶液の濃度など、簡単に計算して変化させてきたことでしょう。
私たちも「望みの濃度を作るための計算」がサラッとできるようになり、化学者の能力に近づきましょう。できたら凄く役立つし、何よりカッコいいですよね。

📓 望みの質量パーセント濃度を作る問題
では問題を以下より解いてみましょう。
13gの塩化水素を使いきり、5%の塩酸を作りたい。この塩酸を作るためには、何g の水に溶かせばよいだろうか?
実験のため「手元の13gの塩化水素全てを使って、5%の塩酸を作りたい」とします。
塩化水素13g を、何gの水に溶かせばよいのでしょうか?
基本の解き方
まず、5%の塩酸(塩化水素水溶液)って、例えばどんな塩酸でしょう?
例えば5%の塩酸を100gとしたら、
- 塩化水素が5g
- 水が95g
でできた、塩化水素水溶液のことです。この塩酸を基準にして考えていきます。

ということは、もし塩化水素が2倍の10gあったとしたら、水も2倍の190gあれば、そのまま5%の濃度の塩酸です。

もし塩化水素が1/2 (2分の1)倍の2.5g だったとすると、水も1/2の47.5g ならば、そのまま5%の濃度の塩酸です。

今回の問題では、塩化水素は13gで、5%の塩酸を作りたいと考えています。
13gとは、5gの 13/5 (5分の13)倍です。ということは、水も同じく13/5倍あれば、濃度が5%の塩酸ができます。

ここまで来たらほとんどゴールです!95×13/5を計算すれば、必要な水の量が分かります。答えは 247g 。

13gの塩化水素で 5% の塩酸を作りたい場合は、247gの水を用意しましょう。すると、5%の塩酸が260g できることになりますね。
方程式を使う解き方
もし方程式をすでに知っている人がいれば、方程式を使うと便利です。
x を使って方程式を作ってみましょう。この場合、求めたい水の質量を x とおきます。

溶質が xg ならば、溶液は (x+13)g と表せますよね。
あとは、「溶液 × 濃度 = 溶質」の式で解きます。

「5%の塩酸を作りたいなら、247g の水に溶かせばいい」という答えが出ました。
もしくは、溶液が (x+13)g、溶質は13g として公式にそのまま突っ込んでも解けますよ👇

このまま x を解くだけですが、分母が足し算になっているので分かりにくいかもしれません。
以下に計算方法を書きます。

分母をそのまま(x+13)で消すだけなので、特に難しくはないはず!5%の塩酸にするために必要な水は、247gでしたね。
食塩48g を使って15% の食塩水を作りたい。何g の水に溶かせばよい?小数点第2位四捨五入で第1位まで求めたい
実験室にある食塩48gを利用して15%の食塩水を作りたい場合。
基本の解き方
まず、15%の食塩水って、例えばどんな食塩水でしょう?
例えば15%の食塩水を100gとしたら、
- 食塩が15g
- 水が85g
でできた、食塩水のことです。この食塩水を基準にして考えてみます。

問題では、食塩が48gあります。これは15gの 48/15 (15分の48)倍です。ということは、水も85gの48/15 (15分の48)倍あれば、同じ15%の食塩水を作れます。

計算すると、答えは272gでした!

方程式を使う解き方
求めたい溶媒(水)の質量を x として解きましょう。

溶質が48g なので、溶液は (x+48)g です。
あとは、「溶液 × 濃度 = 溶質」の式で解きます。

「48gの食塩で15%の食塩水を作りたいなら、272g の水に溶かせばいい」という答えが出ました。
もしくは、溶液が (x+48)g、溶質は48g として公式にそのまま突っ込んでも解けますよ👇

公式を解いた計算式はこちら👇

分母をそのまま(x+48)で消すだけなので、特に難しくはないはず!5%の塩酸にするために必要な水は、272gでしたね。
水388gに食塩を溶かし、3%の食塩水を作りたい。何gの食塩を溶かせばよいだろうか?
次は、388gの水を使って3%の食塩水を作りたい場合。
基本の解き方
3%の食塩水が100gあるとすれば、
- 食塩が3g
- 水が97g
です。これを基準にして考えます。

問題では、水が388gあります。これは97gの 388/97 (97分の388)倍です。ということは、食塩も3gの388/97 (97分の388)倍あれば、同じ3%の食塩水を作れます。

あとは計算するだけ。

388g の水には、12gの食塩を入れると3%の食塩水400gができることになります。
方程式を使う解き方
今度は、溶かす食塩を xg とおけばいいだけ。

溶質がxg なので、溶液は (x+388)g になります。
あとは、「溶液 × 濃度 = 溶質」の式で解きます。

388g の水で 3% の食塩水が作りたければ、12g の食塩を溶かせばよいんですね。
もしくは、溶液が (x+388)g、溶質はx g として公式にそのまま突っ込んでも解けますよ👇

計算した式は以下の通りです。

分母をそのまま(x+388)で消すだけなので、特に難しくはないはず!3%の食塩水にするために必要な食塩は、12gでしたね。
3gの塩化水素を使って、8%の塩酸を作りたい。どれだけの水に溶かせばよいでしょう?
基本の解き方
8%の塩酸が100gあるとすれば、
- 塩化水素が8g
- 水が92g
です。これを基準にして考えます。

問題では、塩化水素が3 gあります。これは8gの 3/8 (8分の3)倍です。ということは、水も92gの3/8 (8分の3)倍あれば、同じ8%の食塩水を作れます。

あとは計算するだけ。

3gの塩化水素で8%の塩酸を作るには、34.5gの水に溶かせばよいことが分かりました。そうすれば、8%の塩酸が37.5gできます。
方程式を使う解き方
今度は、塩化水素を溶かす水の量を xg とおけばいいだけ。

溶質が3g なので、溶液は (3+x)g です。
あとは、「溶液 × 濃度 = 溶質」の式で解きます。

答えは34.5g。
もしくは、溶液が (3+x)g、溶媒はx g として公式にそのまま突っ込んでも解けますよ👇

計算した式は以下の通りです。

💧 水を加えて薄めたり、水溶液を足し合わせたり
一度水溶液を作ってしまっても、「薄すぎた」「濃すぎた」など失敗があれば、あとから濃度を調整したくなる場合があります。
ここからの問題は、方程式を使ったほうが明らかに楽であるため、方程式を使う解き方だけで解説します。
16%の塩酸450g を15%まで薄めたい。何g の水で薄めればよいか?

こういった問題はまず、「そもそも何g の塩化水素が溶けているのか?」を考えることが必要です。質量パーセント濃度16%の塩酸が450gであるから、以下の計算で求めることができます。

質量パーセント濃度16%の塩酸450gには、72gの塩化水素が溶けていることが分かります。
方程式を使う解き方
今回求めたいのは「加える水の質量」です。だから「加える水の質量」を xg として計算を進めます。
そう考えると、
- 水を加えた後の塩酸の質量が (450+x)g
- 溶質が 72g
- 質量パーセント濃度15%
となります。

あとは、「溶液 × 濃度 = 溶質」の式で解けます。

塩酸を15%に薄めるには、30g の水に塩酸を加えればよいことが分かりました!
もちろん、溶液が (450+x)g、溶質は72 g , 濃度15% として公式にそのまま突っ込んでも解けますよ👇

計算は以下です。

分母をそのまま(450+x)で消すだけなので、特に難しくはないはず!
6%の砂糖水500gを、濃度25%にまで濃くしたい。何gの水を蒸発させればよい?
方程式を使う解き方
砂糖水の濃度を高めたい場合。
水溶液を熱して水だけを蒸発させれば、水だけなくなるので濃度が濃くなります。
まず、溶けている砂糖の質量を求めます。

求めたい「蒸発させる水の質量を xg」 とすると、
- 溶液は (500-x)g
- 濃度は 25%
- 質量は 30g
です。

あとは、溶液×濃度=溶質 の式を使えばOKですね。

計算によると、6%の砂糖水500gは、熱して380gの水を蒸発させれば、25%の砂糖水(120g)ができあがりますね。
🤨 溶質の質量で方程式を作る難問
ここまでの問題で一通り十分ですが、こういった計算を考えることが好きな人のため、もう一段回だけ楽しい問題を紹介しておきます。
最初は、答えを見ないで自力でチャレンジしてみてね。
質量パーセント濃度2%の食塩水に、36gの食塩を足したら濃度が12.5%まで高くなりました。もともとあった食塩水は、何g だったことになるだろう?
こういった問題もまずは、求めたい食塩水の質量を xg とおくところからスタートしましょう。
- 2%の食塩水が xg あった
- そこに36g の食塩を加えた
その結果、12.5%の食塩水が (x+36)g できました。

ここからは、溶けている食塩(g) を軸に方程式を作ります。食塩の量は、2つの式で表すことができます。

あとは解くだけ。

もともとあった2%の食塩水は、300gであったことが分かりました。
12%の食塩水を150g の水で薄めると、8.4%の食塩水になった。12%の食塩水はもともと何g あったのだろうか?
求めたい、もともとの12%の食塩水の質量を xg とします。

この問題も、とにかく溶質の質量についての式を作れば簡単に方程式ができます。

できあがった方程式を計算しましょう。

もともとの12%の食塩水は、350gあったことが分かりました。
20%の食塩水と12.5%の食塩水を混ぜると、14%の食塩水が150gできた。20%の食塩水は、何g あったのだろうか?
今までの経験を活かし、落ち着いて考えれば簡単。
まず、求めたい「溶質の質量」を xg とおくことから。

20%の xg と合わせて 14%の食塩水150g になるのだから、12.5%の食塩水は(150-x)g と表せますね。(ここがポイント)
あとは、方程式を作ればほぼ完了。

計算しましょう。

計算により、20%の食塩水はもともと 30g あったことが分かりました!
ここまでで、もはや質量パーセント濃度の計算で困ることはないでしょう。もしあなたが望むのなら、今からでも化学者の助手として働けるはず….です!
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