状態変化グラフと、トロトロ肉を作る圧力鍋の発明

融点と沸点を説明した、状態変化グラフ 中1理科

物質は固体・液体・気体と三態を持ち、温度によって状態変化します。

では、冷たい物質を温めていったとき、何℃の時点で融解を始めるのでしょうか?


また、もっと温めると、何℃の時点で沸騰するのでしょうか?


融解が始まる温度のことを融点といい、沸騰が始まる温度のことを沸点といいます。

融点と沸点

「沸騰」とは、液体の内部からも液体に変わる激しい蒸発のことですよね。


蒸発は、普通の温度でも起こりますが、沸騰はもっと熱くならないと起こりません。

蒸発と沸騰のモデル図

お湯が沸くしくみ

今回で、物質の「融解を始める温度(融点)」と「沸騰を始める温度(沸点)」をグラフとともに学びつつ、科学的に料理を美味しくする圧力鍋について学びましょう。

物質ごとの融点と沸点

「融解を始める温度(融点)」と「沸騰を始める温度(沸点)」は、物質により違います。

水の融点と沸点

ご存知のとおり、水は基本的に、

  • 温度がマイナスなら……固体(氷)
  • 0℃以上になれば……液体(水)
  • 100℃以上になれば……気体(水蒸気)

となります。0℃で融解が始まり、100℃で沸騰が始まるというわけ。0℃が融点で、100℃が沸点です。

水の融点と沸点

常温(20℃くらい)では、水は液体ですね。

水の融点と沸点が0℃と100℃とピッタリな理由は、

  • 氷が溶け始める温度…0℃
  • 水が沸騰し始める温度…100℃

にしようぜと、天文学者のセルシウスさんが最初に決めたからです。

エタノールの融点と沸点

消毒液に利用されるエタノールは、融点がとても低くて -114℃ で、沸点は78℃です。

エタノールも水と同じく、常温(20℃くらい)では液体です。エタノールは、水よりも分子同士の結合が弱いので、低い温度で融解や沸騰します。

状態変化を表すグラフ

物質が熱くなって状態変化をする様子は、時間と温度のグラフで詳しく調べることができます。


例えば、氷を加熱したときの時間と温度のグラフを描くと、以下のようになります。

水の状態変化のグラフ

縦軸に温度を取っています。マイナスの温度からスタートし、加熱していくとやがて0℃になります。


これから、このグラフの読み方を詳しく学びましょう。

固体が融解するまで

水は0℃より冷たい場合、当然ですが凍って氷になっています。


それをずっと加熱していっても、0℃になるまでは氷のままですね。

氷を融解する
0℃にならない間は、融解は起こらない

融解時

0℃になると融解が始まり、氷と水が共存し始めます。


固体が液体になるということは、もっと分子が激しく動き出すということを思い出しましょう。分子が大きく動き出すため、そのために熱エネルギーがたくさん必要です。

融解には、分子が暴れるための熱エネルギーが必要

そのため、氷が水になっている最中は、いくら加熱を続けても融解のために熱が全て使われてしまいます。熱が吸収されてしまうので、物質自体の温度が上がりません

融解の温度

融解が終わってから沸騰するまで

完全に融解が終了して、全てが水になってしまえば、あとはぐんぐん加熱時間に比例して温度が高まります。

融点から沸点までの水

融解してから沸騰までは、液体の状態です。

沸騰時

沸点に到達すると、水は徐々に水蒸気になっていきます。


液体と気体では、分子の運動の激しさはケタ違いです(気体の分子はライフル銃)。なので、蒸発(沸騰)には大量の熱を使います。

沸騰には大量の熱エネルギーが使われる

そのため、いくら熱し続けても物質の温度は上がりません。気体になるために熱が吸収されるからです。

沸騰始めの温度上昇

沸騰が終わった後

沸騰が終われば、全て気体(水蒸気)になりました。水蒸気からは加熱しても状態変化しないので、熱するほど温度は高くなっていきます。

ちなみに、沸騰時に温度が上がらない時間は、融解時よりも長いです。


気体になる方がたくさんの熱が必要なので、長く熱さなければ全てが気体にならないからです。

融解と沸騰の熱エネルギー

以上のような理由から、氷を加熱し、最後は水蒸気になるまでを記したグラフはこのようになるわけです。

水の状態変化と加熱のグラフ

蒸発を利用して中身を冷やす、素焼きの器

☕酷暑で、冷蔵庫なしで水を冷やす方法(クリックで詳細)

蒸発(沸騰)して気体になるとき、とても大きな熱を奪います。


汗をかいたあと、そのまま乾くと、寒くなってきます。状態変化により、体の熱が吸収された証拠です。

汗と気化熱

この「熱を奪う」力はとても強く、暑い地域でも冷蔵庫を使わずに水を冷やすこともできます。古代より伝わる人類の知恵です。

素焼きの壺
素焼きの器

写真のような、素焼きの壺に水を入れておけば、水は外に少しずつ滲み出てきます(素焼きは完全に水を遮りません)。


特に乾燥した地域では、その水がよく蒸発し、壺から熱をたくさん奪っていきます


結果として、水温を15℃ほども下げることができるようです。

蒸発の吸熱を利用した素焼きの器

参考: How to Keep Beverages Cool Outside the Refrigerator

物質の状態変化グラフ

上記では水を例に状態変化と加熱のグラフを学びましたが、基本的には他の物質も、水の状態変化と同じグラフです。


融点沸点が物質ごとに違うだけで、グラフの形は変わりません。

物質の状態変化と加熱のグラフ

加熱する物質の量が多い場合は、「融解中」や「沸騰中」の時間は長くなり、グラフの角度は緩やかになります。

物質の状態変化のグラフ

【圧力鍋の発明】沸騰と圧力の関係

学んだ通り、物質には融点と沸点があります。


水の沸点は100℃です。100℃になると水は沸騰を始めるため、それ以上は温度上昇しません。


全ての熱は、水蒸気になる状態変化のために利用され、吸収されるからです。

沸騰

山の上における、水の沸点

しかし、よく知られているのですが、物質の沸点に関しては、大気圧が大きく関係しています。

水の融点が0℃で、沸点が100℃であるのは、地上を基準にしています。


しかし例えば山の上など気圧が低い場所へ行くと、沸点は低くなります。地上では沸点は100℃ですが、富士山頂では約87℃が沸点だとされています。

気圧が高ければ沸点は高い

水が87℃で沸騰してしまうと、それ以上温度が上がりません。したがって、とても料理がやりにくくなってしまいます。


例えば野菜をずっと煮込んでも火が通りにくくて固いままだし、ご飯を炊いても生米みたいでマズイ。

すぐに沸騰して水がなくなるので、焦げ付きやすくもなるそうな。

参考: 富士山の山頂でご飯は炊けるのか?

圧力が弱いと沸騰しやすい理由

本来、液体から気体になるためには、分子がライフル銃のように激しく動かなければなりません。


このとき、上から押さえつける気圧が低い場合、分子はとても簡単に激しく動くことができます。

気圧と沸騰の関係
気圧が低い場合、液体への抑えつけが弱い。分子が動きやすいので気体になりやすい

気圧が低いほど、簡単に分子が暴れて沸騰してしまい、それ以上水温が上がらなくなってしまうのです。


気圧が低い山の上ですぐに沸騰してしまうのは、これが理由です。

パパンによる、圧力鍋の発明

圧力鍋
ティファールの圧力鍋

逆に考えれば……、気圧を高くしておけば、水は100℃になっても沸騰せず、どんどん水温を上げることができるはずです


これを利用して、とても美味しい料理が作れる圧力鍋を開発したのが、フランスの科学者ドニ・パパンです。彼は、この知識をただ知って喜ぶだけでなく、実際に役立つ発明にしてしまったことが素晴らしいのです。

圧力釜の発明者パパン
ドニ・パパン(Denis Papin、1647年8月22日 – 1712年頃)

パパンは、熱した鍋の中で発生している水蒸気を外に逃さないようにして、鍋の中の圧力をとても高くしたのです。


水蒸気が発生すればするほど鍋の中の気体が多くなり、圧力が一気に高まります。

圧力鍋と普通の鍋の違い
圧力鍋の知恵

つまり、圧力鍋の中の水は、どれだけ加熱してもなかなか沸騰しません

鍋の中の圧力を高めすぎると鍋が耐えきれず、大爆発を起こし危険です。

なのでパパンは、一定以上圧力が高まれば水蒸気を逃がす「安全弁」も発明しています。

これにより、圧力鍋の中の水は、120℃ほどにまで上昇できます。料理時間はとっても短くなり、強い熱が通った食材は、いつもよりトロトロで柔らかく、しかも蒸気を含んでジューシーになります。

圧力鍋を使って煮込んだ牛肉
圧力鍋を使い、牛肉を赤ワインで高温で煮込む
よく火が通るので、トロトロの肉に

パパンはこの圧力鍋を使い、科学者などを招いた食事会を何度も行ったといいます。

パパンが発明した圧力鍋
パパンが発明した「ダイジェスター」。大きい。

パパンはこの圧力鍋を、「消化するもの」という意味のダイジェスターと呼んでいました。ダイジェスターを使った料理は、素晴らしい評判だったようです。

夕食は魚も肉もすべてパパン氏のダイジェスターで調理されたものであったが、それによっていちばん固い牛の骨やヒツジの骨が、水や他の液体なしでチーズみたいに柔らかくなり、8オンス以下の石炭で信じられないくらい多量の肉汁を生じた。

(略)

この哲学的(科学的)な夕食は私たちをたいへん愉快にし、列席者全部を非常に喜ばせた。

『エピソード科学史Ⅳ 農業/技術編』
圧力鍋の発明者パパン
科学の力で料理を進化させたパパン

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