1674年、生物学を揺るがしたレーウェンフックの大発見

レーウェンフックと微生物 中1理科
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などなど、地球上にはたくさんの生物で満ち溢れています。昔から人々は動物や植物を利用して生きてきて、もっと詳しく知るために研究を続けてきました。


上に挙げた生物たちは、人類誕生する遥か昔から地球上に存在しています。したがって人類はずーっと、「我々人類は地球上の生物の種類を、ほとんど知っているのだ」と考えていました。


しかし、それは人類の大きな大きな勘違いでした。「生物をほとんど知っている」どころか、ほんの300年ほど前まで「人類は地球上の99.9%以上を占める生物のことを、全く知らなかった」のです。

🔭 望遠鏡と顕微鏡

前回では、電子顕微鏡が見せる素晴らしい世界と、普通の顕微鏡の操作方法を説明しました。

顕微鏡は、いきなり発明されたわけではありません。顕微鏡に先駆けて、1600年頃のオランダでの望遠鏡が発明されています。。メガネ職人の子供がレンズを重ねて遊んでいたら、教会上の風見鶏が突然大きく、しかも上下左右が反対に見えたことに驚き、大声を上げました。これが望遠鏡誕生秘話です。

望遠鏡の発明きっかけ

この頃、他の地域でも「レンズを重ねれば、小さな物体が大きく見える」という発見は知れ渡っており、メガネ職人の父親を始めとして、様々な技術者が望遠鏡を作成しました。倍率はだいたい15倍くらいだったといいます。

顕微鏡の発明者ハンス・リッペルハイ
子供の偶然から顕微鏡を発明したリッペルハイ。月のクレーターや小惑星の名前にも使われる

その後に望遠鏡の知識が応用され、顕微鏡も徐々に作られるようになりました。イギリスのロバート・フックは顕微鏡を自作し、ハエやノミの絵を残しています

フックと彼のスケッチ

フックは顕微鏡で素晴らしいものを残しましたが、あくまでもそれは、ハエやノミなど、ギリギリ肉眼で見える生物を大きく捉えたものです。

👨‍🔬 微生物学の父、レーウェンフックが歴史を動かす

ロバート・フックが顕微鏡でハエなどを観察していた少し後、望遠鏡が発明されたオランダにて、顕微鏡の素晴らしさにハマってしまった若者がいました。


名前はレーウェンフック。彼はフックのように有名な科学者ではなく、洋服を販売する仕事をしていました。しかしその仕事柄、よくレンズを使って商品を見ることに慣れていました。

レーウェンフック
右は彼の作った顕微鏡

彼はフックのように自分で顕微鏡を作り、たくさんの物体を観察して遊んでいたといいます。彼は学者でもないただの商人でしたが、作った顕微鏡は世界中の他の人が作ったものよりも遥かに精密なものだったので、イギリスの王立協会(科学の権威)がその実力を認めるほどでした。

水中に極小の生物を発見

レーウェンフックは、町の近くの湖が、冬は透明なのに夏は緑色っぽくなることに疑問を抱き、湖から取った水を顕微鏡で観察してみることにしました。するとなんと、肉眼では決して見えない程に小さな生物が動いていることが分かりました!


これが1674年の出来事です。人類が初めて微生物細菌を発見した瞬間であると言われています。

微生物はレーウェンフックが発見した
SienceSource

実は、地球上の生物のうちの99.9%以上は微生物や細菌です。例えば人間の皮膚1cm² には数千もの細菌が住んでいます。さらに体内には、腸内だけで1000兆以上の微生物が住んでおり、重さは1~2kgもあります。

体重と微生物
人間の細胞は60兆、体内の微生物は1000兆

海の水を小さじ1杯分ほどには、数百万を超える微生物がいます。もちろん空気中にも数え切れないほどの微生物や細菌が漂っており、それが時には健康を、時には病気をもたらします。


実は微生物は、地球上で初めて誕生した生物です。約35~40億年前に誕生したと言われています。


しかし人類は1674年になってようやく、地球上の99.9%の生物の存在を知ることになったのです。レーウェンフックはその後も顕微鏡での研究を続け、初めて赤血球の大きさや形を明らかにして細かくスケッチするなど、歴史に名を残すことになりました。

赤血球
レーウェンフックがスケッチした赤血球

🔬 顕微鏡で水中微生物を観察してみよう

レーウェンフックのように、池や川、水槽などの水をびんで収集し、顕微鏡で微生物を観察して学んでみましょう。レーウェンフックが作った顕微鏡の倍率は200倍以上だったようです。


顕微鏡の使い方はしっかり復習しておきましょう。

水中の微生物を採集する
水中の微生物の世界

田んぼの水を取る際は、所有者がいるので許可を得てやりましょう。

採取した水を一滴プレパラートに入れて観察します。

プレパラートの作り方
微生物観察を成功させるために

これから、いろんな水中の微生物を紹介します!レーウェンフックも最初は湖の微生物を発見したので、きっと同じような生物を見て驚いたでしょう。

💦 水中の微生物

水中の微生物の代表的なものを並べます。

植物性と動物性の微生物

植物”性”の微生物

まずは、植物性の微生物を紹介します。植物のように、基本的には自ら動くことはありません。葉緑体を持ち、光合成をして栄養分を自分で作り出すタイプです。


あえて植物”性”と言っているのは、厳密な分類では植物ではないと言われているからです。

ハネケイソウ

ハネケイソウ
ハネケイソウ
http://www.sumie-dh.cz/

淡水にも海水にも見られる植物プランクトンの一種です。プランクトンとは、微生物やクラゲなど、水中をふわふわ漂う生物のこと。

葉緑体を持ち、体は緑色の植物性。

クンショウモ

クンショウモ
Deutsch: Dr. Ralf Wagner, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

淡水に住む植物プランクトンで、池や沼によくいる。勲章のようなカッコイイ形をしているので、クンショウモ(藻)という名前になっています。


葉緑体を持ち、光合成で栄養を作り出す植物性。

ミカヅキモ

ミカヅキモ

美しい三日月の形をした、淡水に住む植物プランクトンです。日本はもちろん、世界中に生息しています。

曲がりが足りない、真っ直ぐな形のミカヅキモもいます。


葉緑体を持ち、光合成で栄養を作り出す植物性の微生物。

アオミドロ

アオミドロ
珪素鳥(Keisotyo, http://www.aikis.or.jp/~keisotyo/), retouched by NEON (ja:利用者:NEON), CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ドロっとした藻のような植物プランクトン。時に大量発生してしまう。👇の写真は草の用に見えるが、微生物であるアオミドロの集合体。

水面のアオミドロ
水面に大量にいるアオミドロ
Phonon.b, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

当然、植物性の微生物なので光合成します。レーウェンフックが微生物を発見したキッカケは、夏の湖に浮かぶアオミドロでした。

イカダモ

イカダモ

淡水に住んでいる植物プランクトン。いかだに似ているからイカダモ(藻)。

イカダ
筏(いかだ)とは、木で作ったボート。

若干崩れたいかだに見えるものもあります。

イカダモ

彼らも植物性なので、光合成して栄養分を作り出します。

動物性の微生物

微生物には植物性のものだけでなく、動物性のものもいます。顕微鏡の回で学んだクマムシも、動物性の微生物です。

彼らは自分で動き回り、植物プランクトンなどを食べて生きていきます。もちろん動物なので、人間と同じで光合成はしません。

ミジンコ

ミジンコ

微生物の代表格で、誰もが知っている大スター。1~2mmの大きさになるので、肉眼でも見えます。甲殻類なので、一応はエビやカニなどと仲間です。


世界中の淡水に存在する動物プランクトンとして、よく金魚やメダカの餌として利用されます。


「微塵切り(みじん切り)」「木っ端微塵(こっぱみじん)」など、細かくて小さいものを微塵と言いますが、ミジンコの名前もそこから来ています。漢字では微塵子と書きます。

アメーバ

アメーバ

こちらも有名な動物プランクトン。体を分裂させて数を増やしていきます。


べっとりしたゼリーのように、グネグネゆっくり動きます。

ゾウリムシ

Barfooz at the English Wikipedia., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ゾウリムシはまさに、レーウェンフックが顕微鏡で発見した微生物だと言われています。田んぼや池、沼に生きています。


海外でもこの微生物の形はスリッパに似ていると言われていたため、日本ではゾウリ(草履)ムシと名付けられました。

ゾウリムシのスケッチ
1718年にスケッチされたSlipper animalcule(スリッパ微生物)。

アメーバと同じく、分裂して仲間を増やします。動物プランクトンですし、名前に負けることなく、周りに生えた毛(せん毛)を利用して自分からよく動き回ります。

ツリガネムシ

ツリガネムシ

動物性の微生物で、田んぼや川に住んでいます。お寺の釣り鐘のような形をしていて、群れとなり、草や他の動物(ミジンコなど)にくっついて生きています。長い糸のようなもので絡みつき、体を固定します。


釣り鐘の開いている部分が口で、口先についている毛(せん毛)を機敏に動かして食べ物を引き寄せています。


食べ物が少なくなったり、住んでいる場所の環境が悪くなると、線を切り離して他の場所へ移動します。賢いですね。

植物と動物、両方の性質を持つミドリムシ

ミドリムシ

ミドリムシも、レーウェンフックが最初に発見した微生物です。緑色であって葉緑体を持ち、光合成をするので間違いなく植物的な性質を持っているといえます。ミドリ”ムシ” と言っていますが、藻の仲間。


しかし、自分で自由に動き回る動物のような性質も持っており、光がないときは何かを食べることもあります。


つまりミドリムシは、植物と動物両方の性質を持った珍しい生物です。もし人間もミドリムシのように、動き回る自由を得ながら、光を浴びるだけでお腹がいっぱいになったらとっても便利ですよね。

ミドリムシの図
先っちょの毛(べん毛)を動かして移動する。毛のある方に動いていく

👩‍🎨 微生物をスケッチするとき

フックやレーウェンフックが行ったように、科学の世界では観察したものを精密にスケッチすることが求められます。スケッチすることにより、物体の構造を細かく記録し、伝えることができるからです。


スケッチの際には、以下に気をつけて描きましょう。

スケッチの描き方
慶應義塾大学日吉キャンパス
  • 観察物だけを描く(背景や顕微鏡の円など余計なものは描かない)
  • 細い一本線でハッキリ描く(デッサンのように二重描きしない)
  • 斜線や塗りつぶしはしない
  • 線をはみ出させたり、途切れたりさせない

微生物であろうとタンポポの花であろうと、スケッチのルールは同じです。

スケッチのよい例と悪い例

🧫 微生物や細菌と生きる人間

人差し指で自分のほっぺたを触ってみてください。あなたはその時、皮膚だけでなく、皮膚に住んでいる何千もの微生物や細菌も触っています。

皮膚には微生物がたくさん住む

それほど身の回りや地球上には大量の微生物が溢れていますが、レーウェンフックがそれを発見したのが1674年。日本では江戸時代が始まって70年が経つ頃、まさにレーウェンフックは生物学の歴史を大きく動かしたといえます。

江戸時代にレーウェンフックは微生物を発見
菱川師宣『歌舞伎図屏風』
微生物が発見された1674年、日本は江戸時代前期

タイムマシンで当時の世界に降り立ち、「あなたの顔の上にも、目に見えないほど小さな生物がたくさん住んでいますよ」と事実を教えてあげても、信じてもらえないどころか、大笑いされるでしょう。


しかし現代の科学者は、微生物を活用して抗生物質を作るなど、微生物や細菌の研究を推し進め、医学を始めとする様々な分野に微生物を活用しています。他にも、ミドリムシを宇宙食や飛行機の燃料として利用することも考えられています。

ミドリムシのバイオ燃料
ミドリムシを使った燃料で走る、地球にやさしいバス
ユーグレナ

レーウェンフックが微生物を発見した当時は、微生物は単に好奇心を満たすためものであり、まさかそれを利用することで社会を発展させられるとは思っていませんでした。


しかし現代においては、微生物や細菌がたくさんの人々を救っていますし、将来の大きな課題を解決する可能性をも秘めているのです。

📚 おすすめ参考文献

📱 参考になったページ

The Discovery of Blood Cells レーウェンフックも関わる、赤血球の発見ストーリー

レーウェンフックの微生物観察記録 レーウェンフックの観察について、日本語で最も詳しいページ

体質も変える腸内細菌って何? 重さは1.5キロにも 特に人間の腸内には、乳酸菌などが約1000兆も住んでおり、重さは1.5kgにもなるらしい。

海洋微生物と地球環境変化

微生物観察を成功させるために 詳しくてためになる、微生物観察したい人のためのサイト

NHK for School ツリガネムシの生態解説ビデオ。面白かった。

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