この写真を見てください。これは、宇宙のある星に住む怪獣を捉えた写真です。絵やCGではありません。本当の写真です。
森に潜み、巨木の上で獲物を探す怪獣。不気味な顔、そして大きな体に鋭い爪が特徴的です。もしこの怪獣に見つかってしまえば、人間はすぐに食べられてしまいそうです。
顔を捉えた写真を見ても分かる通り、人間など一瞬にして噛みちぎってしまいそうな恐怖感を与えます。
実は、宇宙にはこんな怖い生物がたくさん住んでいます。あなたは見たことがないかもしれませんが、確実にあなたの近くに住んでいます。
これらのモンスターが宇宙のどこに住んでいるか、もう分かりましたか?
👀 神の目を持つ電子顕微鏡
実はこれらの怪獣が住んでいる星は、言うまでもなく地球です。
これらの写真は、生物を電子顕微鏡(でんしけんびきょう)で捉えたもの。電子顕微鏡とは、超高性能の顕微鏡です。想像を超えるほど小さな物質や生物も、巨大化して映してくれる魔法のような機械です。
150年前のシャーロック・ホームズはルーペを使って物体を拡大していましたが、現代では科学が発達し、比べ物にならないほど細かく観察できる機械があるのです。
最初に見せた1, 2枚目の不気味なモンスターは、クマムシを電子顕微鏡で覗いたシーンです。クマムシとは、全長0.3mmほどの微生物です。以下の写真の、白い点一つ一つがクマムシ。肉眼でギリギリ見える程度のクマムシは、電子顕微鏡を使えばモンスターに変身します。
小さな物体であっても顕微鏡を使って見れば、大きな怪獣が繰り広げる宇宙戦争のようなインパクトあるシーンが見えるのです。
ミールワームという魚の餌になる虫も、電子顕微鏡で見れば迫力満点!
クマムシやミールワーム以外にも、
- テントウムシ
- アリ
なども電子顕微鏡で見ると、一瞬にしてモンスターに変身します。
電子顕微鏡は、物体を1万倍から100万倍の大きさに拡大して観察することができるため、目に見えないウイルスさえ、電子顕微鏡でじっくり観察できます。その性質がよく分かるので、ウイルス対策を練ることができます。電子顕微鏡は、医学や生物学の発展に大きく貢献しています。
普段の何気ない日常生活でも、顕微鏡の世界を覗くだけで一瞬にして刺激的な世界に変わります。「面白い」だけでなく、生物や細胞、ウイルスの詳しい理解ができる最高の道具が電子顕微鏡です。神様しか見えないような光景が見えるので、電子顕微鏡はまさに「神の目」といえるでしょう。
💸 電子顕微鏡と普通の顕微鏡
今すぐにでも、身の回りの生物などを電子顕微鏡で観察したいものですね!しかし、当然そんな高性能のものを買うことはできません。電子顕微鏡は、庶民の私たちにはびっくり仰天の価格です。
電子顕微鏡を使いたいのなら、将来大金持ちになるか、研究者になれるように頑張りましょう。稀に、企業から借りて生徒に利用させている高校などがあるようです。
前回ではシャーロック・ホームズを通して、
- 🔍 ルーペ (倍率2~5倍)
- 🔬 双眼実体顕微鏡 (倍率10~50倍)
の2つの器具の使い方を学びました。
今回では、もっと細かく観察ができる、(普通の)顕微鏡の使い方を学んでみます。
🔬 (普通の)顕微鏡の使い方
ルーペや双眼実体顕微鏡は、花のように「もともと見えるものを、もっと詳しく見る」のに適していました。
肉眼では見えないほど小さな物体をよく見るためには、顕微鏡(けんびきょう)を使ってみましょう。
普通の顕微鏡は、1億円近くもする電子顕微鏡とは違います。性能は電子顕微鏡に大きく劣りますが、1~2万円あれば買えてしまうようなお手軽な機械です。もちろん、ルーペよりは高性能。
顕微鏡には、それぞれパーツの名前があります。
顕微鏡を使うステップは以下のようになります。
- 接眼レンズと対物レンズを取り付ける
- 反射鏡の角度を調整し、視野全体を明るくする
- プレパラートを作り、ステージにセットする
- 調節ねじを使い、対物レンズをプレパラートにできるだけ近づける
- プレパラートと対物レンズを徐々に離しながらピントをあわせる
- しぼりを回し、コントラストを調整する
以下で一つずつ確認しましょう。
【接眼レンズ】と【対物レンズ】を取り付ける
最初は接眼レンズから取り付けます。対物レンズから取り付けると、対物レンズにホコリが溜まり、対物レンズが汚れたり、ホコリを観察するはめになってしまいます。だからまず、カバー代わりに接眼レンズから装着してください。
また、対物レンズは最も低倍率なものが中心に来るようセットしておいてください。
対物レンズは複数あり、それぞれに倍率を示す、
- 4
- 10
- 40
などの記載があります。
最初は最も低倍率な対物レンズを中心に合わせておきます。倍率は「高けりゃいい」わけではありません。低倍率は、視野を明るく広く保つことができます。
したがって、まずは低倍率にして観察物を見つけやすいようにセットします。
【反射鏡】の角度を調整し、視野全体を明るくする
低倍率の対物レンズをセットしただけでは、いくら上手く観察物を捉えても、暗くて何も見えません。したがって反射鏡により、蛍光灯などの明かりを当てて視野を明るくする必要があります。
🌅 直射日光の当たる場所で顕微鏡を使わないで!太陽光を直接反射させると、顕微目が傷つき失明するかもしれません。
【プレパラート】を作り、【ステージ】にセットする
ここでいよいよ、観察したい物体を入れたプレパラートを作ります。プレパラートは、スライドガラスとカバーガラスで作ります。
- スライドガラスに観察物(クマムシなど)を乗せる
- スポイトで水を1滴落とす
- カバーガラスをかぶせる
- はみ出た水を拭き取る
以上の1~4の順序を実行すれば、プレパラートの完成です。
完成したプレパラートをステージに固定。
双眼実体顕微鏡では、プレパラートを作る必要がありません。石や植物などをそのままステージに乗せて観察できます。
顕微鏡は数百倍の倍率で詳しく観察できますが、双眼実体顕微鏡はせいぜい10~50倍です。しかし双眼実体顕微鏡は、
- プレパラートを準備する必要がない
- 両目を使うから立体的に観察できる
という大きなメリットがあります。
外科手術をするときも、医療用の双眼実体顕微鏡が利用されています。両目で立体的に見なければ、腫瘍を切り取ったりできないからです。
【調節ねじ】でステージを動かし、対物レンズをプレパラートにできるだけ近づける
あとは、対物レンズとプレパラートの距離を調整してピントを合わせれば完成です。調節ねじを使ってステージを上昇させ、対物レンズとプレパラートをギリギリまで近づけます。
ぶつけたら割れてしまい大変なので、必ず横から見て慎重に近づけます。
いきなり接眼レンズを見て、近づけつつピント調整したら絶対ぶつけて割ってしまいます。だからまず、ギリギリ近いところまで前もって近づけておきます。
プレパラートと対物レンズを徐々に離しながらピントをあわせる
対物レンズとプレパラートを限界まで近づけたなら、後はステージを対物レンズからゆっくり離しながらピントを合わせます。離れていくだけなので、レンズをプレパラートにぶつける心配はありません。
【しぼり】を回し、コントラストを調整する
さて、ピントがあえば、すでにハッキリとした観察物が見えているはずです。
これでも良いですが、最後にステージの裏側にあるしぼりを回して、コントラストを調整します。コントラストとは、明るい部分と暗い部分の差のことです。
明るすぎても観察物がハッキリ見えないので、しぼりで光の量を調整してみます。
これで、大まかな顕微鏡の使い方は完璧です。
なお顕微鏡はその仕組み上、観察物は上下左右反対に見えます。
これは、観察物が視野の左上に見えていても、実は右下にあるということです。
したがって、プレパラートを動かして観察物を中心に持っていきたい場合、直感の正反対に動かさなければなりません。
双眼実体顕微鏡の場合は、左右反対になったりしません。外科手術のときにそんなややこしい物を使っていたら、死亡事故が起こってしまいます。
【レボルバー】で対物レンズを変更
顕微鏡は、以上で解説したように、
- 接眼レンズと対物レンズを取り付ける
- 反射鏡の角度を調整し、視野全体を明るくする
- プレパラートを作り、ステージにセットする
- 調節ねじを使い、対物レンズをプレパラートにできるだけ近づける
- プレパラートと対物レンズを徐々に離しながらピントをあわせる
- しぼりを回し、コントラストを調整する
これらのステップを通して使います。
しかし、どうしても倍率が低くて詳しく観察できなかった場合、高倍率の対物レンズに変えましょう。レボルバーを回して高倍率の対物レンズに変えます。
例えば、
- 接眼レンズに「10x」
- 対物レンズに「4」
と書かれていた場合、10×4で40倍の倍率です。そこで、「10」と書いてある対物レンズに切り替えれば、10×10で100倍にまで高めることができます。
倍率を高めると確かに詳しく観察できますが、
- 視野が狭くなる
- 暗くなる(採光量が少なくなるから)
ことに注意しましょう。
🤯 顕微鏡に興奮した人類
顕微鏡が発明されたのは1600年頃のオランダだと言われています。小さい虫なども詳しく見える発明に驚き、特にイギリスでは顕微鏡でハエなど小さな虫を見ることが流行したといいます。
世界的に有名なイギリスの科学者ロバート・フックは、自ら作った顕微鏡で様々な生物を観察し、その絵を『顕微鏡図譜』という本にまとめています。
宇宙でも、虫や動物でも、「人間の目では見えないものを詳しく観察する」ことは、今も昔も、人類に大きな驚きと喜びを与えてくれたのですね。
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