水やエタノールを例にして、物質を熱したときの様子をグラフにして学んできました。

融点と沸点を理解していれば、土星の衛星タイタンに住む宇宙人についても思いを馳せることができましたよね。
今回は、もっと面白い実験として、
「🍷ワインを熱してみたら、状態変化グラフはどんなものになるのだろう?」
を考えていきます。最後には、今までの理解を試す問題を用意してます。
🍷 混合物を熱する実験
今まで、物質を熱して沸騰までさせたときの、温度変化のグラフを学んできました。

しかし、この状態変化グラフは、
- 水
- エタノール
などの「純粋な物質」にだけ当てはまるものです。
では……、もし混合物を熱してみた場合、どんなグラフになるのでしょうか?
水とエタノールの混合物を熱したグラフ
では今回は例として、水とエタノールの混合物を熱するモデルを考えます。

ちなみに、水100mlとエタノール100mlを混ぜても、200mlにならないのをしっかり覚えていますか?
固体も液体も気体も、全ては粒(分子)でできていることを忘れないで。
エタノールはアルコールの一種なので、例えば🍷ワインも、水とエタノールの混合物の一種です(エタノールは、正確にはエチルアルコールといいます)。

実際に水とエタノールの混合物(ワインなど)を熱すると、以下のようなグラフになります。

水やエタノールなど、純粋な物質を熱したグラフと比べると、沸点が一つに定まらない、曖昧なグラフになってますよね。

混合物の状態変化が曖昧なグラフになる理由
今からも、ワインのような水とエタノールの混合物を例にします。

沸騰が始まるまでは、混合物も純粋な物質と同じように温度が順調に上がっていきます。

しかし、エタノールの沸点(78℃)に達すると、エタノールだけが沸騰を始めます。

純粋な物質が沸騰しているときは、液体から気体になる際に全ての熱が使われてしまうので、温度は全く上がらず、グラフは横ばいになっていきます。

しかし水とエタノールの混合物の場合、エタノールは78℃で沸騰しても、水は沸騰しません。したがって、水の部分はまだ熱を受け取ることができます。

その結果、
- 一部(エタノール)は沸騰し、気体になるため熱を奪っていく
- しかし一部(水)は沸騰せず、まだ熱を受け取り、温度が上がる
ので、温度上昇が緩やかになります(角度は、混合物の割合による)。

そして100℃まで上昇すれば、水もエタノールもいずれも、混合物全体が沸騰します。従って、もう温度が上昇することはありません。

こういった理由から、混合物を熱したときのグラフは、以下の右グラフのようになるのです。

純粋な物質とは違い、混合物の場合は、融点や沸点が定まっていないのが特長です。
✅ 融点/沸点、グラフの理解を試す総合問題集
ここまで学べば、前回までの範囲を含む理解度を試してみましょう。前回分を忘れた人は必ず再確認してください。
問題1.
エタノールの融点はマイナス114℃で、沸点は78℃です。エタノールを熱し続けたところ、現在の温度は78℃で、そこから上昇しない状態です。エタノールの状態は以下のうちどれでしょう?
- 固体
- 固体と液体どちらもある
- 液体
- 液体と気体どちらもある
- 気体
💮解答&解説はここをタップ
答え: 4. 液体と気体どちらもある
エタノールなど純粋な物質を熱して状態変化させたときのグラフは以下のようになります。

エタノールの場合、沸点は78℃。78℃からは、沸騰のため温度上昇しません。
温度上昇していないうちは、エタノールの液体が、どんどん気体に変わっているわけです。

つまりその瞬間は、液体と気体がどちらも存在する状況です。
問題2.
A, B, C, D のラベルを貼ったビーカーに、それぞれ純粋な物質や液体の混合物が入っています。最初の温度や分量はバラバラです。

それぞれを熱すると、以下のようなグラフになったとします。

このグラフを見ながら、以下の4つの問題に答えてください。
- A~Dのうち、混合物だと思われるものを全て答えてください。
- A~Dのうち、同じ物質はどれとどれですか?
- Aは何の物質でしょうか?
- Cは何の物質でしょうか?
💮解答&解説はここをタップ
答え:
- 混合物はB
- 同じ物質は、CとD
- Aは水
- Cはエタノール

グラフを見ると、それぞれの沸点は、
- A…100℃
- B…定まっていない
- C…約78℃
- D…約78℃
となっています。混合物は沸点が定まらないので、Bが混合物です。
さらに、沸点が100℃である物質といえば、水しかありません。したがって、Aは水であることが分かります。
CとDは、沸点が同じです。沸点が同じならば、それは同じ物質。したがって、同じ物質はCとDです。
CとDは同じ物質ですが、分量や最初の温度が違えば違うグラフになります。沸騰が始まる沸点は常に同じです。
CとDも、沸点は約78℃であるため、CとDはエタノールであると推測できます。
問題3.
水とエタノールの混合物を熱したときの温度変化をグラフにすると、以下のようになりました。

加熱して3分後から6分後までの3分間の出来事の記述として、以下の4つから最も正確なものを選んでください。
- この3分間の間に沸騰しているのは、水だけである
- この3分間の間に沸騰しているのは、エタノールだけである
- この3分間の間では、沸騰が起こっていない
- この3分間の間には、エタノールも水も少量ずつ沸騰している
💮解答&解説はここをタップ
答え: 2. この3分間の間に沸騰しているのは、エタノールだけである
水とエタノールの混合物の場合、78℃でエタノールが沸騰を始めます。
水は100℃でしか沸騰しないので、加熱時間3分から6分の間の3分間では、エタノールだけが沸騰していることになります。

6分後以降は100℃に達しているので、水もエタノールも全てが沸騰していることになります。
(もちろん、水は沸騰していなくても蒸発はしていますよ。[例:洗濯物は沸騰していなくても乾く])
問題集は終了です。基本の理解は完璧。
ここで学んだ知識は、次回に学ぶ錬金術師の技術『蒸留』を理解するためにとても大切です。復習して忘れないようにしておきましょう!
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