水溶液には、溶質と溶媒があります。

例えば同じ食塩水(塩化ナトリウム水溶液)でも、濃い(辛い)食塩水や薄い食塩水がありますよね。
もちろん、塩酸(塩化水素水溶液)にも濃い塩酸や薄い塩酸があります。

この違いを濃度といいます。
科学者とは、金属や木材、水や塩酸など身の回りの物質から新しいものを作り出したり、今までの物質をもっと改善することで世界を変える研究者のことです。
そんなすばらしい繊細な仕事においては、少しの濃度の違いが大きな変化をもたらします。研究を成功させるためには、水溶液の濃度にも厳しく向きあう必要があります。

例えば、今まで学んできた偉大な科学者、ラヴォアジエやプリーストリ、シェーレなどは同じ時代に生きていたため、よく手紙や会合を通して実験について話し合っていました。

シェーレがラヴォアジエにあてた手紙。シェーレはやりたい実験のための設備がなかったので、ラヴォアジエに代わりに実験してほしいとお願いした。しかしラヴォアジエから返事はなかった…
そんな話し合いや議論のときには、統一した基準を持たなければなりません。自分の実験の成果を伝える時に、使った液体の濃度を正確に伝える必要があるからです。
今回は、水溶液の濃さ、濃度をあらわす指標を詳しく学び、少しでも科学者の頭脳に近づくことが目的です。
👨🔬 濃度の基準を作る科学者たち
塩酸とは、水に塩化水素という気体が溶けた水溶液です。
たくさん塩化水素が溶けた水溶液ほど、濃い塩酸だといえますよね。

しかしこれだけの基準では、濃度がとても分かりにくい。例えばA, B, Cでそれぞれ違う量、違う濃度の塩酸があったとします。
この3種類の濃度を比べるのはとても難しいはず。

この3種類の塩酸で言えば、
- どれが一番濃い塩酸なのか?
- AとBでは、濃度はどれくらい違うのか?
- BとCの間の濃度の塩酸を作るには、どうすればよいか?
などが一目でわかりません。こんなことでは科学は発展しないので、何か統一的な基準が必要です。
水溶液を1gとして考える科学者たち
この分かりにくさは全て、水溶液自体の質量がそれぞれ違うことが原因ですよね。
だから、水溶液の質量を統一して考えればいいのです。

↑のようにすれば、溶けている塩化水素だけを比較すれば、どれが一番濃い塩酸なのか分かります。
では早速、水溶液の質量を統一してみましょう。その前にまず、
- 溶液(g)を分母
- 溶質(g)を分子
にして分数を作ります。

Aを例に取ると、塩酸(溶液)80g の中には、塩化水素(溶質)が4g 溶けているんですよね。だから80分の4。
これをこのまま割り算をすると、水溶液1gあたりの塩化水素の質量が出ることに気づきますか?

↑の計算により、Aの塩酸は、1g中に 0.05g の塩化水素が溶けていることが分かりました。
「なぜ割り算だけで、塩酸1gあたりの塩化水素(g)が求められるのか」イメージできない人は、以下の図を見てみましょう。

塩酸80gを塩酸1gで考えるには、分母を80で割りますよね。
なので、合わせて分子も80で割る必要がありますし、その結果こそ、塩酸1gあたりの塩化水素の質量になるのです。
この計算を、A, B, C 全てでやってみましょう。

溶液分の溶質で計算した結果、
- Aは、塩酸1gに塩化水素が0.05g 溶けている濃度
- Bは、塩酸1gに塩化水素が0.08g 溶けている濃度
- Cは、塩酸1gに塩化水素が0.06g 溶けている濃度
であることが分かりました!
これで、それぞれの塩酸の濃さがとっても分かりやすくなりました!塩酸1gを統一基準にすることで、問題を解決できましたね。

これで、Bが一番濃くてCが一番薄いことなど、一目瞭然になりました。割り算をするだけで、こんなにも結果が変わるんですね。
🧮 質量パーセント濃度
さて、塩酸1gを基準にすることで濃度がとても分かりやすくなりましたが、実は科学者は現在、もっと分かりやすい基準を使っています。
それが、質量パーセント濃度です。質量パーセント濃度とは、「もしこの水溶液が100gあれば、どれくらい溶質が溶けているか?」を表す指標です。

質量パーセント濃度の例
例えば、100gの食塩水(塩化ナトリウム水溶液)に20gの食塩(塩化ナトリウム)が溶けていたとしましょう。
100gのうちに 20g の食塩が入っているので、この食塩水の質量パーセント濃度は20%と表すことができます。

今では科学者たちは、水溶液の濃度を表現するときは、質量パーセント濃度を使っています。
質量パーセント濃度を求めよう!
では、先ほどの塩酸Aの質量パーセント濃度を求めてみましょう。

塩酸1g あたりの塩化水素の質量は既に求めてありますよね?

あとは簡単。
質量パーセント濃度は、塩酸100gあたりに溶けている塩化水素の質量です。
だから、単純に100をかけてあげたらOKですね。

塩酸1g の中に 0.05g の塩化水素なのだから、塩酸100g の中には、その100倍の5g の塩化水素が溶けています。
では、塩酸A, B, C の質量パーセント濃度を求めましょう。100倍するだけだから簡単。

これで、それぞれの塩酸の質量パーセント濃度は、
- Aは5%
- Bは8%
- Cは6%
となりました。
➗ 質量パーセント濃度の公式
ここでせっかくなので、今までの理解を公式にまとめておきましょう。公式にまとめることで、世界中の人々が同じ基準を使いやすくなるのです。
今までの学びから、質量パーセント濃度の公式は以下のように表せます。

溶質を溶液で割れば、1g あたりの溶質(g)が出るので、それに100をかければ質量パーセント濃度が求められますよね。
練習をしてみましょう。
320gの食塩水に、80gの食塩が溶けています。この食塩水の質量パーセント濃度は?
↑の問題も、公式にあてはめて考えてみましょう。

割り算で食塩水1gあたりの食塩(g)を求め、それに100をかける。これを一気に計算すればすぐに求められますね。
もう質量パーセント濃度の考え方はバッチリ!
公式の違う書き方
ちなみにこの公式、2通りの書き方ができます。

分母は「溶質+溶媒」と書いていますが、結局はこれ、「溶液」と同じですよね。

だから、2つの公式は全く同じ意味です。言い方を変えてみただけ。
例えば、
「104gの水に、26gの砂糖を溶かしました。この砂糖水の質量パーセント濃度は?」
を考える際には、以下のように考えます。

104gに26gを溶かしたら、溶液は130g ですよね。だから、分母で 104+26をすればOK。どっちの公式を使ってもいいでしょう。
💡 基準を統一して考えるクセをつけよう
溶液の濃度が世界中で分かりやすい「質量パーセント濃度」を作り出したことで、科学はより素晴らしい学問になりました。
科学者たちは、実験について質量パーセント濃度を基準に話しあうことができます。

質量パーセント濃度に限らず、世の中を変えてきた研究者たちは、たくさんの世界基準を作り出してきました。
今回は、その一つである質量パーセント濃度を学びましたが、公式を丸暗記することなく、「なぜその式になるのか?」をしっかりと理解することが、頭を鍛えるためには必要なんですよ。
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