ふかふかのベッドや布団だけでなく、たまには釘(クギ)の上で眠ってみたいと思いませんか?

一本一本の釘(クギ)はとがっているので、非常に痛そうな写真です。これが体に強く刺さると、血がでます。刺さる場所によっては、人は簡単に死んでしまいます。

怖い凶器にもなってしまう釘ですが…、最初の写真をよく見ると、体から血は出ておらず、苦しんでるのか楽しんでるのか微妙な表情をしています。なんとなく余裕がみえます。
なぜこの人は血まみれになって死なないのでしょうか。『圧力』(プレッシャー)の原理を学べば、その謎を解くことができます。
釘を反対にしたら、釘は板に埋まらない
ハンマーで釘を打つと、釘は木の板に埋まっていきます。しかし釘を反対にした場合、同じ力でハンマーを打ったとしても、釘は木の板に埋まりませんよね?
当たり前の話。

同じく、同じ力を使ったとしても、包丁では野菜が切れますが、指では野菜が切れないはずです。

でも、包丁も指も同じ力でトマトを押しているのに、どうして包丁だけ切れるのでしょう?
力は、あたる面の大きさだけ分散してしまう
釘を反対にして打っても木の板に埋まっていかない理由は、力が分散しているからです。
とがった部分を下にすると、力は分散しないので木の板にスムーズに埋まっていきます。

包丁と指の違いも同じです。包丁は指よりも鋭いので、力が集中して伝わります。
同じ力を加えていても、指はトマトに当たる面が大きいため、包丁のように切ることはできません。
包丁の方が、力が集中してトマトに伝わるため、スムーズに切ることができるわけです。

この、「どれくらい力が集中しているか?」を表す指標を、圧力(Pressure, プレッシャー)といいます。
当然、釘のとがった部分や、包丁の鋭い部分を使う方が圧力(プレッシャー)は強いです。力が集中するからです。
圧力の計算方法
その圧力は、簡単に計算で求められます。
先程の説明のとおり、力(N) を 面積(m²) で割れば 圧力(P) を算出できます。

つまり押し込む力が同じ場合、
- 接する面積が小さい……圧力は大きい(力が集中する)
- 接する面積が大きい……圧力は小さい(力が分散する)
ということになります。
先のとがった釘やナイフがとても危ないのは、接する面積が小さく、力を集中させてしまうからです。圧力が強くなってしまうからです。

圧力の単位、パスカル(Pa)
力を面積で割ることで求められる圧力ですが、これには別の単位が与えられています。

圧力に関する理論である、『パスカルの原理』を発見したブレーズ・パスカルの名前を取り、世界中で圧力の単位は Pa (パスカル) を使うルールになっています。

例えば、お相撲さんが 100N の力で、手で壁を押したとしましょう。お相撲さんの手の面積は、0.2m² だったとします。
100N と 0.2m² を、圧力(Pa) の公式に代入してみましょう。

代入後、この公式を計算すると…。

このお相撲さんが壁を押す圧力は、500Pa(パスカル)だということになります。お相撲さんの手のひらが半分の 0.1m² 大きさだったとすると、圧力は倍の 1000Pa になりますね。
圧力の理論の応用事例
戦車のキャタピラ

赤い枠で囲っているように、戦車はタイヤでなく、全体を覆っている鉄の板で走ります。これをキャタピラといいます。
しかし、戦車はなぜタイヤでなくキャタピラで走るのでしょうか?
タイヤのままで走った場合、戦車の重さはタイヤが地面についている面積(下の図で白く塗った部分)にのしかかることになります。

しかし、戦車はとても重く、50t を超えるものもあります。50t は 50万N という凄まじい力なので、小さい面積では圧力がありえないほど大きくなってしまいます。

これでは地面にかかる圧力が強すぎて、地面にタイヤがめりこんでしまい、スムーズに動くことができません。とくに沼地などを走行することは不可能です。
しかし一工夫し、タイヤを鉄の板でかこってキャタピラにすると、接地面積が大きくなり、圧力がとても小さくなります。力が分散するわけですね。

これなら戦車は地面に埋まることなく、スムーズに動くことができます。
針のベッド
釘の上のベッドが痛くない理由も同じです。
もし釘が一本だったとしたら、血がドバドバ出て場合によっては死んでしまいます。
しかし何本も並べれば面積が増え、体に加わる圧力がとても小さくなります。

なので、針のベッドは体にかかる圧力が低く、想像しているほど痛くはありません。
ジュラシックパーク
スティーブン・スピルバーグ監督のジュラシックパークの2作品目を見たことがありますか?
初代ジュラシック・パークは1993年に上映され、続編のジュラシック・パーク2は『ロスト・ワールド』というタイトルで1997年に上映されました。

その中で、恐竜から襲われる際に、女の子が薄いガラスの上に落ちてしまうシーンがあります。(1:08頃から)
このシーンのように、薄いガラスの上に落ちてしまい、ガラスが割れたら死んでしまう場合は、決して立ち上がったり、腕立て伏せの格好になったりしてはいけません。
ガラスと接触する面積が小さくなり、ガラスにかかる圧力が高くなるからです。圧力が高くなるとガラスはすぐに割れます。
(この子、一瞬起き上がろうとしてませんか?危ないですよ)
体全体をペチャンとガラスにつけたまま、芋虫のようにもぞもぞゆっくり動いてください。ガラスとの接触面積を大きく保つこと。
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