宇宙一のスピードを誇るものが「光」であることはご存知のとおり。
光の速さは秒速30万kmであり、たった1秒に地球を7周半してしまうほどのスピードです(地球は1周約4万km)。
❌もちろん、光は直進するので、地球を周ったりはしません。
物理学において天才的な仕事を成し遂げたアインシュタインも、「光こそが宇宙一速く、それより速いものは存在しない!」と断言したほどですね。

光のスピードは宇宙最速ですが、そんな光にも、
- 進みやすい場所
- 進みにくい場所
があります。
💨 変化する光のスピード
光の速さは秒速30万kmですが、光の「秒速30万km」はあくまでも、真空や空気中での速さです。空気もない宇宙空間や、空気中での速さが秒速30万kmなのです。

一方、例えば、光が水やガラスの中を進む場合は、光が水やガラスの成分にぶつかってしまいます。
光は常に秒速30万kmで進んでいるのですが、水やガラスの成分に何度もぶつかり、止まったり進んだりを繰り返してしまいます。
だから結果的には、光が水やガラスの中などを進むときは、空気中を進むときよりもずっと遅くなってしまうのです。
そう、光は泳ぐと遅くなるのです!
光の速さ | 進む場所 | 速さ(およそ) |
👩🚀真空(宇宙) | 秒速30万km | |
🏃♀️空気中 | 秒速30万km(真空よりは遅い) | |
🏊♀️水中 | 秒速22.5万km | |
⚪️ガラス中 | 秒速20.5万km |
水よりガラスの方が物質がギッシリ詰まっているので、スピードは遅くなります。
この速さの違いを表したものが、👇のGIF画像です。空気中より、明らかにガラスを進むほうが遅いですよね。

車も、舗装されたアスファルトを進むときより、ドロドロの沼地を走ると遅くなります。

車や人間と同じく、光にも「走りやすい場所」と「走りにくい場所」があるのです。
光は、何も邪魔なものがない真空(空気も何もない、宇宙空間)を走るときが一番速く、そのときに秒速30万kmのスピードが出ます。
一方、私たちが生きている空気中を進む場合、光が空気にぶつかってしまうので、真空に比べると光の速さはわずかに遅くなります。

しかし、空気はスカスカなので少ししか光が進む邪魔をしません。なので、空気中も秒速30万kmと考えてOKです。
⤴️ 光の屈折
光の速さは進む場所によって変わることは理解できましたね。
ではここからは、「光が空気中から水中へぶつかる瞬間」をよく考えてみましょう。
反射しつつ、進んでゆく光
光が、空気中から水に差し込んだとします。この場合は、ユークリッドの反射の法則(入射角 = 反射角)をしっかり守って反射します。


しかし、光は反射するだけでなく、水に浸入しているはずですよね?なぜなら、海やプールの中にも太陽の光が差し込んでおり、昼は水中も明るいからです。
水中から、真上にある太陽は見えるのも、光が水中に侵入している証拠。

光が空気中から水面にぶつかるとき、反射するだけでなく、一部は水の中へ入っていくのです。水でなく、ガラスなど他の物質でも同じ。
例えば水面に垂直に入射した光(入射角0°)は、一部は反射し、一部はそのまま水やガラスの中を進みます。

これは、水やガラスから光が出た場合も同じであり、一部は反射し、一部はそのまま空気へ突き進みます。

光は屈折する
面白いのはここから。次に、斜めから光が入った場合を考えてみましょう。
当然いつものように、光の一部は反射し、一部は水やガラスの中へ侵入しますが、ここで変わったことが起こります。
水に浸入するとき、光が折れ曲がってしまうのです。決して、真っ直ぐ進むことはありません。


これを、光の屈折(くっせつ)といいます。光は直進しますが、水やガラスなど異なる物質にぶつかるときは、カクっと折れ曲がって進む性質があるのです。

もちろん、水中から空気中へ出る時も、同じく光は屈折します。

「どれくらい折れ曲がったのか?」を表す角度を、屈折角と呼びます。
入射角と反射角と同じように、法線との間を屈折角といいます。間違えないようにしましょう。

垂直に入射した場合は、光は屈折せずに真っ直ぐ進みます。

光が屈折する理由
しかし光はなぜ、
- 空気中から水中へ
- 水中から空気中へ
- 空気中からガラスの中へ
- ガラスの中から空気中へ
など、異なる物質を進むときに屈折してしまうのでしょうか?
その秘密は、光の進みにくさを表す以下の図にあります。

光が気持ちよく空気中を直進していたとします。
光を車で例えて考えましょう。

これから、水やガラスなど違う物質を通ります。
光にとって、水やガラスはとても進みにくい場所です。車で言えば、進みにくい沼地に入るようなものでしょう。

下の図で、車が水やガラスにぶつかった瞬間をよく見てみましょう。
光が水やガラスに侵入するとき、右前部分だけが先に水やガラスにぶつかることになります。
車で言えば、右前のタイヤだけが先に沼地へ突入します。

このまま進むとどうなるでしょう?
左前のタイヤだけがスムーズに回ってしまうので、真っ直ぐの進路よりも、右方向へ進むことになってしまいます。進路が右に傾いてしまうんですね。

光が屈折するのも、車と同じ理由です。光の片方だけスピードが上がるので、結果的に進路を折り曲げてしまうのです。


水やガラスから空気中へ出ていくときを考えてみましょう。
下の図のような角度から空気中へ出ようとすると、右前のタイヤが早く沼地から抜け出しスピードを上げるため、進路は左に屈折します。



光も横幅があるので、車と同じように考えることができます。
- 空気→水やガラスなど
- 水やガラスなど→空気
この2通りの屈折を、車をイメージして考えられるようにしてください。

⚖ 入射角と屈折角の大きさの比較
光は屈折します。それに伴い、屈折角が生じることは述べた通りです。

このときの、入射角と屈折角の大きさの関係を確認しておきます。
空気中から水中(ガラス等)へ進むとき
空気中から水中などに入射したときの光の屈折を描いてみましょう。

空気中から水(ガラスなど)へ入射する場合は、入射角より屈折角の方が小さいことが分かります (入射角 > 屈折角)。
入射角と反射角は同じですが、屈折角は違う角度になります。

http://www.fizkapu.hu/fizfoto/fizfoto6.html
水中(ガラス等)から空気中へ進むとき
それでは、反対に光が「水中(ガラス等)→空気中」へ進むときも検証しましょう。

入射角より、屈折角の方が大きいことが分かります (入射角<屈折角)。

http://www.fizkapu.hu/fizfoto/fizfoto6.html
車をイメージして屈折角を考えること
- 空気中から水(ガラス)中へ進むときは、入射角>屈折角
- 水(ガラス)中から空気中へ進むときは、入射角<屈折角
であることが分かりました。

入射角と屈折角の大小関係は、全く暗記する必要もありません。光が屈折するのは、車が屈折するのと同じ原理です。
したがって、車をイメージすればいつでも「入射角と屈折角、どちらが大きくなるのか」はすぐに分かるはずです。

半円のガラス中心を通った光は、ガラスの円部分に接したときに屈折しません。

これは、よくアップで見ると、円に対して垂直に (入射角0°)で通り抜けていっているからです。

屈折の道すじの判断
一枚の分厚いガラスがあり、それを光が突き抜けるとします。
光の道すじは、AからDのうち、どれになるでしょうか?

これも慣れるまでは、車が沼地を通ることをイメージして考えるようにしてください。
最初にガラスとぶつかる場所では、車(光)は以下の図のように屈折します。

右前の車が先に沼地に入って少しストップするので、左前のタイヤが速く動き、進路は①の方向へ傾くことが分かります。よって、光は①の方向へ屈折します。

次の場面では、ガラス→空気です。車(光)は以下のような状況になるはずです。

この角度からならば、右前の緑丸のタイヤが先に沼地を脱出するので、緑丸のタイヤだけ速く動きます。
その結果、②の方へ車は屈折します。したがって、正解はBです。

下の図で、一連の光の道すじイメージをつけておくのも効果的です。


http://www.fizkapu.hu/fizfoto/fizfoto6.html

- 空気中→水(ガラス)中では、入射角>屈折角
- 水(ガラス)中→空気中では、入射角<屈折角
であることを👇の図で確認しましょう。

覚えなくても、「車と沼地」をイメージして確認すればすぐに分かるはず。
ガラスや水中を抜けきったときは、入ってきた光と出ていく光は、必ず平行になります。

光の逆進性
光は、逆から進んでも、必ず同じ道を通る性質を持っています。スタートとゴールを逆にしても、必ず同じ道を通るのです。


👇は、ガラスの板を通る実際の光の道すじです。

上から光を差しても、下から光を差しても、光は同じ黄色い線を通ってゆきます。
📚 おすすめ参考文献
📖 参考になった書籍
科学雑誌Newtonの、やさしい光の解説。カラフルな図が豊富なので、とてもイメージしやすくて理解が捗るオススメ本です。
この回で説明した、場所ごとの光の速さや屈折の原理が分かりやすく描かれています。加えて、「なぜ虹ができるのか」「なぜ空は青いのか」……に至るまで、幅広い疑問が大きな図で説明されています。
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