皆さんが理科(化学、物理など)を通して身につけるべき能力は、「データを読み解く力」です。
世界で活躍するためには、ある結果と計算を記録したグラフや表から、たくさんのことを読み取る力が求められます。
今回では、2回に渡って学んだ溶解度曲線を使いつつ、いろいろな問題に答えて「データを読む力」をつけていきましょう。
さっそく、問題を解いていきましょう!
👀 溶解度曲線を読み取る
水100g に溶かす 物質A の溶解度を調べると、以下のようになりました。
問題1.
50℃の水100g に、 物質Aを 68.1g 溶かしました。
この水溶液を何℃まで冷却すれば、物質Aは再結晶し始めるでしょうか?
じっくり考えて答えを出せたら👇で解答を確認しましょう。
📖解答&解説はここをタップ
答え: 10℃
50℃のときに、100gの水に物質Aを 68.1g 溶かしたのなら、以下のような棒グラフで表せます。
これを冷やしていくと、10℃のときにちょうど溶解度曲線とぶつかります。
物質A は、10℃のときの溶解度がちょうど 68.1 だからです。
10℃まで冷えると飽和水溶液になるため、ここから少しでも冷えれば物質Aは固体となって出てきます。
したがって、再結晶し始める水温は 「10℃」 が答えです。
問題2.
20℃の水100g に 物質A を90g 溶かしたところ、溶け残りができてしまいました。
物質Aをすべて溶かすには、この水溶液を約何℃まで温めればよいでしょうか?
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答え: 約37℃ (36℃, 38℃あたりも正解)
20℃のときに、水100gに物質Aを 90g 溶かしたのなら、以下のような棒グラフで表せます。
これを温めていき (棒グラフを右にスライド)、溶解度曲線とちょうどぶつかる場所を探しましょう。
表を見ると、溶解度が90 なるのは、水温が30℃から40℃の間です。
グラフを読み取ると、約37℃ で物質Aが全て溶けるといえます。
👀👀 複数の溶解度曲線を読み取る
硝酸カリウム、ミョウバン、塩化ナトリウムの溶解度曲線があります。
問題1.
60℃の水100g に30g を溶かし、その後に20℃ まで冷却すると再結晶が起こるのは、3つのうちどの物質でしょうか?
また、その物質は、約何g が再結晶するのでしょうか?
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答え: ミョウバン, 約20g が再結晶する (約19gでも正解)。
60℃の水100g に30g を溶かした水溶液は、以下のように棒グラフで表せます。
この状態では、3つの物質ともに飽和水溶液になっていません。
これを20℃まで冷やした図が以下です。
上記のグラフを見ると、
- 硝酸カリウム
- 塩化ナトリウム
と溶かした水溶液は、20℃まで冷却しても、まだ飽和水溶液になっていません(棒グラフが溶解度曲線を突き抜けていない)。
つまり、まだ再結晶が起こりません。
ミョウバン水溶液は約45℃まで冷えた時点で飽和水溶液になり、再結晶が始まります。
20℃まで冷えるころには約20gのミョウバンが再結晶しているはずです。
問題2.
40℃の水100g で、溶け残りのないピッタリの飽和水溶液を作るとします。
その飽和水溶液の質量が最も大きくなるのは、硝酸カリウム、ミョウバン、塩化ナトリウムのうちどの飽和水溶液でしょう?
また、それは約何g の飽和水溶液になるでしょうか?
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答え: 硝酸カリウム, 約161gの飽和水溶液(約162g なども正解)。
40℃の場合、100g の水に溶ける飽和水溶液は、それぞれ以下の棒グラフで表現できます。
見ての通り、40℃の水100g には、硝酸カリウムが最も溶解度が高くなっています。その質量は約61g。
したがって、40℃の水100g には約61g まで硝酸カリウムが溶けるため、約161g の硝酸カリウム飽和水溶液を作ることができます。
🧮 質量パーセント濃度を求める
ミョウバンの溶解度曲線があります。
問題1.
40℃の水100g にミョウバンを溶かす場合、質量パーセント濃度は最大何%まで高められるでしょうか? (小数点第2位を四捨五入し、第1位までで答える)
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答え: 約19.4%
40℃の水100g の溶解度は24.0 なので、ミョウバンは最大24.0g まで溶かすことができます。
100g の水に24g のミョウバンが溶けるので、ミョウバンの飽和水溶液が 124g できることになります。
溶液と溶質の質量が分かっているので、質量パーセント濃度が計算できます。
40℃の水100g で作れるミョウバン飽和水溶液の質量パーセント濃度は、約19.4%でした。
水温が40℃である限りこれ以上はミョウバンが溶けないので、質量パーセント濃度が高まることはありません。
問題2.
60℃の水100g にミョウバンを溶かす場合、質量パーセント濃度は最大何%まで高められるでしょうか? (小数点第2位を四捨五入し、第1位までで答える)
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答え: 約36.5%
60℃の水100g の溶解度は57.5 なので、ミョウバンは最大57.5g まで溶かすことができます。
100g の水に 57.5g のミョウバンが溶けるので、ミョウバンの飽和水溶液が 157.5g できることになります。
溶液と溶質の質量が分かっているので、質量パーセント濃度が計算できます。
60℃の水100g で作れるミョウバン飽和水溶液の質量パーセント濃度は、約36.5%でした。
水温が60℃である限りこれ以上はミョウバンが溶けないので、質量パーセント濃度が高まることはありません。
問題3.
塩化ナトリウムの溶解度曲線を見てください。
質量パーセント濃度が30%の食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を作ることは可能ですか?不可能ですか?
上の溶解度曲線や表にしたがって考えること。
📖解答&解説はここをタップ
答え: 不可能
塩化ナトリウムの溶解度曲線を見ると、水を沸騰させて100℃まで熱くしても、100g に溶けるのは 39.0g です。
ということは、最も濃い食塩水は、沸騰した熱湯100g に 39.0g の塩化ナトリウムを溶かしたときに完成します。
この塩化ナトリウム飽和水溶液の質量パーセント濃度を計算します。
食塩の最大の質量パーセント濃度は、約28.1% でした。
従ってこのグラフを読む限り、質量パーセント濃度が30%の食塩水を作ることは不可能だと言えます。
最大でも28.1%。
☕気体の溶ける量と水温の関係
息抜きのコーヒーブレイク☕
コーラなど、炭酸飲料は好きですか?大人はビールなど、炭酸のお酒をよく飲みます。
炭酸飲料はもちろん、水に二酸化炭素が溶けています。炭酸飲料がシュワシュワで気持ちいいのは、二酸化炭素のおかげ。
しかし、もっとたくさん二酸化炭素が溶けていれば、もっとシュワシュワした爽快なドリンクになるはずです。だからもっと二酸化炭素を溶かしたい。
ミョウバンなどの固体は、水温が高いほど、たくさん溶けるようになりました。
だから、コーラも温めてホットコーラにすれば、もっと二酸化炭素が溶けて、シュワシュワ爽快なコーラを作れるのでしょうか?
答えはNO!!!
実は二酸化炭素などの気体は、水温が高まるほど溶ける量が少なくなっていきます。
だから、コーラを温めると二酸化炭素が溶けられなくなり空気中に脱出、炭酸のないコーラになってしまいます。
- 固体…水温を上げれば、溶ける量が増える
- 気体…水温を上げれば、溶ける量が減る
コーラを鍋などで温めてみてください。炭酸が一気に抜けてしまいます。
📝 溶解度曲線を読む総合問題
では最後に総合問題。
- 70℃の水100g に硝酸カリウムを溶かしたコップ
- 70℃の水100g にミョウバンを溶かしたコップ
- 70℃の水100g に塩化ナトリウムを溶かしたコップ
の3つを用意しました。それぞれの溶質の質量は同じ、どれも溶け残りがありませんでした。
この3つを10℃まで冷却したところ、2つのコップで再結晶が起こりました。
最初に溶かした溶質の質量として考えられるものを、以下のうちから選んでください。
- 10g
- 20g
- 30g
📖解答&解説はここをタップ
答え: 30g
塩化ナトリウムを溶かしたコップでも溶け残りがない質量なのだから、70℃のときの塩化ナトリウムの溶解度よりも、下の範囲に答えがあるのは当然ですね。
そして、あとは選択肢それぞれを確認しましょう。
溶質が10g だとしたら、 10℃まで冷やすと以下のような棒グラフで表せます。
この場合は、溶解度曲線を超えているのはミョウバンのみ。1つしか再結晶しないので不正解。
20g で考えても、ミョウバンしか再結晶しません↓
では、30g で考えてみましょう。
30g の溶質であれば、10℃に冷やすとミョウバンと硝酸カリウムの2つが再結晶しますね。
塩化ナトリウムは、30gでは溶解度を超えていないので再結晶しません。
10℃で2つだけ再結晶したのなら、30g が正解です。
📊 理科は、データを正確に読むための素晴らしい練習
世の中にはあらゆるデータが溢れており、そのデータをグラフで分かりやすくまとめ、それを元に大切な決定が行われています。
そのために、溶解度曲線のようなシンプルなグラフを読み、問題に楽しく答えていくことはとてもよい科学的思考を鍛えるレッスンになっています。
理科をこの調子で楽しんでいきましょう👍
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