SF(サイエンス・フィクション)映画を見たことがありますか?
SF映画とは、
- 👽 宇宙人
- 🦖 怪獣/恐竜
- 🦸♂️ スーパーマン
- 💨 テレポーテーション
- ⏳ タイムマシン
など、人間の科学的知識を超える事柄をテーマにした、迫力満点で想像力を掻き立ててくれる映画のことです。
例えば世界中でも最も有名なSFシリーズといえば、やっぱり『スター・ウォーズ(STAR WARS)』シリーズでしょう!
広大な宇宙にて、銀河帝国と反乱軍との戦争が繰り広げられる、世界中のSF(サイエンス・フィクション)映画の中でも抜群の人気を誇るシリーズです。
(何種類も出てますが、作品公開順にエピソード4 から観るのが無難ですかね。)
特に R2-D2 と C-3PO の2人のロボットはとてもいい
『スター・ウォーズ』のようなSF映画は、人間の想像力が生み出した、いわば作り話です。常識にとらわれないストーリー展開が可能で、世界中の人々を魅了します。
しかしSF映画はそれだけでなく、「これは将来に実現してしまうかもしれない!」というワクワクと刺激を私たちに与えてくれる点で、とても大切なジャンルなのです。
しかし、ただ単に「うわ〜すごい!」といって感動するだけがSF映画の楽しみ方ではありません。
当然ですがSF映画には、科学的には実現不可能であったり、ありえないシーンがたくさんありますよね。だからこそ、賢い人が観るほど、
- このシーンは、確かに科学が発展すれば可能かもしれない
- このシーンは、科学的にありえない!間違っている!!
といったところに、映画を観ている途中にたくさん気づくことになります。
そうです、本当のSF映画の楽しみ方とは……、「ふむふむ面白い。しかし、こんなことは科学的にありえない。インチキだ!」と言ってSFインチキを見抜いて満足してイキることなのです。
よく映画を観察する必要がありますし、何より豊富な知識が必要な、とても高度な楽しみ方ですよね。勉強した人にしか許されない、上流階級の遊びです。
⚔️ 『スター・ウォーズ』からSFインチキを見抜く
今回では、SF映画をもっと楽しむために、『スター・ウォーズ(STAR WARS)』を例としたSFインチキの基本を学びましょう。
映画『スター・ウォーズ(STAR WARS)』では、宇宙空間で銀河帝国軍と反乱同盟軍が戦いを繰り広げるシーンがあります。
宇宙空間での戦争シーンは迫力満点で、宇宙船が飛び交いビームを撃ちまくり、ビューン、ピコピコポン、ビヨヨヨヨヨ〜ン、フィ〜〜〜ンといった大きな音を立てます。とてもワクワクする楽しいシーンです。
しかし!この部分こそが、スター・ウォーズのインチキなところです。実は宇宙空間では、このような爆音が聞こえることは決してありえません!
🎼 音の正体
「宇宙空間には音がないのに、SF映画では爆音が流れている」のは、最も有名なSFインチキです。
このインチキを理解するために、そもそもの音の正体から学びましょう。
音の原因は、振動である
なんで音が聞こえるのか、知っていますか?
全ての音の原因は、「振動」にあります。
例えばギターの音が鳴る原因は、ギターの弦が振動しているからです。ビビビーンと震えていることが、音の原因。
ギターの振動が私たちの耳に届くからこそ、ギターの音が聞こえます。ギターが振動しておらず、じーっとしていたのなら、何の音も聞こえませんよね。
- 🥁 太鼓を叩いた音
- 🚗 車や電車の音
- 🗣 人間や動物の声
- 🔊 音楽のスピーカーの音
これら全ての音は、物体が振動していることが原因です。震えるからこそ、音が発生するんですね。
実際、音が鳴っている太鼓をゆっくり触れてみると、太鼓が震えているのが分かります。
ピタッと太鼓の振動を手で止めれば、音も無くなりますよね。振動なしに音が出ることはないからです。
太鼓やギター、車など、とにかく音の発生源になるもの全てを音源(おんげん)といいます。
振動を伝える空気
ギターが振動しているだけなら、耳には何も聞こえません。従って、音源の振動が耳の鼓膜まで運ばれる必要があります。
ギターなど音源の振動は、誰が耳まで運んでくれるのでしょうか?
実は音源の振動を耳に運んでくれているのは、空気です。
空気はつぶつぶ!
空気が振動をどうやって運ぶのか、それは空気の正体を知ると分かります。
空気の正体は、酸素や窒素や二酸化炭素などの、目に見えない大量の小さな粒です。
ギターの弦など、音源が振動すると、近くにある空気の粒もつられて振動します。
音とは、空気の波である!
音の面白いところとして、この粒の振動がどんどん広がっていくところです。
水面に石を落とすと、どんどん波が周囲に広がっていきますよね。
それと同じく、空気の粒の振動も次々と広がっていきます。この振動が耳に届いた時、初めて音が聞こえます!
音は、音源の振動を波として伝えるため、「音の正体は、波である」といった言い方をします。音波(おんぱ)っていう言葉もありますよね。
もっと分かりやすく視覚化すると、👇のような感じです。
今、耳を澄ませてみてください。何かの音が聞こえていますね?その音は、あなたの耳(鼓膜)が空気の振動(波)を捉えているからこそ、聞こえているのです。
🎵 音の性質がよく分かる、『音叉(おんさ)』
音叉(おんさ)という、楽器を作るときに音程を確認するための器具があります。これを使えば、音の性質がよく分かります。
おんさをポコーンと叩くと振動し、小さな音が鳴ります。おんさは音源です。
おんさが共鳴する!
「音の正体は、振動を伝える波である」ことを、おんさを使って確かめてみます。
例えばおんさを2台並べておき、1台だけパコーンと叩いたとしましょう。おんさは振動し、その振動は空気に伝わります。
この空気の振動がもう一つのおんさに伝わると、そちらのおんさも振動し、2つが共鳴します。
つまり「左側のおんさの振動は、空気により右側のおんさに伝わった」と言えるわけです。振動の波が伝わったということ。
この場合はもちろん、左側のおんさを手で抑えて振動を止めても、右側のおんさの振動は止まりません。
振動を止めれば音は鳴らない
音の正体は振動であり、それが空気を波のように伝わるからこそ、音が聞こえるが分かりましたか。
したがって、壁を挟んでうまく振動をカットできれば、音は伝わりません。おんさの振動も、隣のおんさには伝わらなくなります。
ここから、防音効果の高い壁とは、
- なるべく分厚く
- なるべく重い
といった要素が求められることがわかりますね。薄くて軽い壁では、向こう側に振動が簡単に伝わってしまいます。
🌊 水中や金属などでも、音は伝わる!
音は、もちろん空気中じゃなくても伝わります!
水中でも、音が伝わる原理は空気中と変わりません。空気の粒が、水の粒に変わっただけ (水中ではうまく話せないので会話はできませんが、音は十分伝わります)。
金属や糸などの固体でも、もちろん音は伝わります。
糸電話は、空気ではなく糸を振動させて音を伝えます。もちろん、糸をつまんで振動を止めれえば、音は伝わりませんよ。
自分の声が気持ち悪い理由
自分が話しているビデオを見たときや、スマホで録音した自分の声を聞くとき、「うわ、私の声って何か変。気持ち悪い」と思ったことはありませんか。
その理由はズバリ、「音(振動)は、肉や骨の中でも伝わる」からです。
普段に自分の声を聞くときは、「①空気の振動」だけでなく、自分の「②骨の振動」も耳に届いています。
しかし他人の声や、自分の声を録音で聞くときは、「②骨の振動」はほとんど消えてしまい、「①空気の振動」だけで音を聞くことになります。
だから、普段の自分の声と聞こえ方が変わり、録音した自分の声はとっても変に聞こえるわけです。
周りの人も、あなたの声を聞くときは①だけの音を聞いていますが、特に声が変だとは思っていません。いつもと違う声が聞こえているので、自分だけが変に感じるのです。
おもしろ実験: ベートーヴェンを助けた骨伝導
ここで、今すぐできるおもしろ実験を。
スマホから音楽を流し、そして耳を強くふさいでください。音楽は流れていても、耳をふさいでいるので音楽はほとんど聞こえないはず。
その状態で、割り箸など棒状のものを歯でくわえて、スマホのスピーカーに先端を当ててみます。
すると、不思議なことにハッキリと音楽が聴こえます。耳をふさいでいるのに!
耳をふさいでも聴こえる理由は、スマホのスピーカーからの振動が、割り箸を通して直接自分の歯や骨を振動させてくれるからです。空気の振動がなくとも、
- 割り箸
- 歯
- 骨
など固体を通して音を聴くことができる不思議な体験です。
偉大な音楽家ベートーヴェンは晩年耳が不自由になってしまいましたが、指揮棒などを口にくわえ、同じ原理で音を聴いていたと言われています。
ぜひ、ベートーヴェンが利用したこの方法を自分で試してみましょう!驚くはずです。
👨🚀 真空と音
さて、ここからが問題です。上記では、
- 空気
- 水
- 鉄や糸など
が音(振動)を耳まで運んでくれることを学びました。
じゃあ、音(振動)を伝えるものが何もなかったら、どうでしょう?例えば、空気を抜いた真空状態では音が聞こえるのでしょうか?
上図のように、音が鳴るブザーをケースにかぶせます。ブザーを鳴らすと、当然音が聞こえます。ケース内の空気に振動が伝わり、その波がケースの外にまで届くからです。
ケース内の空気を抜くと、音が消える
ここで、チューブでケース内の空気を少し抜いたとします。すると、振動を伝えるための空気が少なくなり、音が小さくなってしまいます。
そして、ほぼ完全に空気を抜いて真空状態にすると、もはやブザーの振動を伝えるものは何もありません。つまり、「真空状態では音は鳴らない、伝わらない」ことになります。
これは、「心の込もったLINEを書いても、インターネットがなければ相手に届かない」のと全く同じ理屈です。
いくらブザーを大音量で鳴らしても、大声を出してみても、
- 空気
- 水
- 鉄や糸
……などなど、その音(振動) を波として伝える何かがなければ、決して誰にも聞こえないのです。
💫 スター・ウォーズの嘘
ここまで来れば、冒頭で話した『スター・ウォーズ』のインチキが分かりますね。
宇宙空間には、空気がありません。もちろん水も何もないので、宇宙空間は真空です。
つまり、宇宙空間では音が伝わりません。たとえある星が大爆発を起こしたとしても、宇宙空間ではまったく音が聞こえることはありません。
したがって、『スター・ウォーズ』にあるような、
- ピコピコ!
- ビュウウウン!
- バコーーン!
といった迫力満点の音はまったく発生しません!シーンはすごくても、シーンとしているわけです。
真空の宇宙空間においては、こんな大爆発が起こっても何の音もしません。何か不思議ですね。
もちろん『スター・ウォーズ』の製作者も、「宇宙空間では音は伝わらない」ことくらい知っています。
しかし、こういった映画製作においては、
- 科学的な事実
- 映画の迫力
の2つをうまく妥協させて作らなければなりません。いくら科学的に正しいからと言って、宇宙戦争のシーンを音無しで作ってしまえば『スター・ウォーズ』はここまでの人気がなかったでしょう。
今回は『スター・ウォーズ』を例にとって「宇宙空間と音」という初歩的なSFインチキを見抜きましたが、SF映画には科学的に不自然なことがもっとたくさんあります。
ぜひ数学や理科を学び続けて、SFインチキをたくさん見抜けるようになりましょう。映画の楽しみ方が増えるかも?しれません!
📚 おすすめ参考文献
📖 参考になった書籍
理科好きな小学生から大人まで、最高に楽しめるシリーズです。もともと『空想科学読本』シリーズは有名な名著でしたが、挿絵も充実して読みやすくなっています。
第一巻では、
- 名探偵コナンのように、小学生に若返ることはできるの?
- 1兆匹の猫を飼うことはできる?
- ONE PIECEのルフィのゴムゴムのピストルの威力は?
……などなど、誰もが分かるテーマを、真面目に科学的な視点で考えています。当然、題材になるアニメや映画はフィクションなので、真面目に考えると笑えるような結果ばかりです。
「SFインチキを見抜くのも、SF映画の楽しみ方」と言いましたが、まさにこのシリーズが体現している精神を持ち、科学を楽しんでほしい……という願いを込めています。20巻まで出ているし、しばらくは科学で飽きることはありませんよ。
📱 参考になったページ
・宇宙戦争アニメで爆発音。あれ?真空で音は聞こえるの? 立命館大学のサイト。真空では音が聞こえないことだけでなく、「物体の振動をカメラで捉えて音を再現する」という面白いことも知れました。他にもいろいろいいテーマがあるサイトです。
・スターウォーズは大好きなんだけど スター・ウォーズに出てくる宇宙船ファルコン号は光速の1.5倍のスピードが出る「銀河最速のガラクタ」です。しかし銀河最速で光速の1.5倍なら、銀河系全体を端から端まで旅行するのに何万年もかかってしまいます。到着に何万年もかかるような技術で、「銀河帝国」なんて作れないんじゃない?という視点。面白いですよね。
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