悲劇のタイタニック号から学べ!超音波が支える現代社会

超音波 中1理科

映画『タイタニック』を観たことがありますか?僕は中学生のときに金曜ロードショーとかで見ました。1997年に初公開された映画で、世界中で史上最高レベルの大ヒット。必ず観るべき映画の一つでしょう。

「タイタニック」予告編

タイタニック号は1900年始めごろに完成した、当時では世界最大の超豪華客船です。全長は約270m, 幅約30mであり、ギリシャ神話の巨神タイタンが名前の由来です。


タイタニックの処女航海は、イギリスからニューヨークが進路でした。

タイタニック号
1912年4月10日のタイタニック号

タイタニックの大きな船体の中には、

  • 体育館
  • プール
  • 図書館
  • 高級レストラン

などの施設が充実し、とにかく世界一の豪華さが大注目を浴びました。チケットは、最も高い部屋だと現在の価格で500万円以上であったといいます。

タイタニックの中

ここから何年もたくさんの乗客とともに世界を周り、大活躍する予定でしたが……、タイタニック号は海難事故の歴史上でも最悪の悲劇に巻き込まれてしまいます。


なんとタイタニック号は、乗客を伴った初めての旅路の途中で氷山にぶつかってしまい、それが原因で海の底に沈んでしまったのです。2000人以上の人々が乗船していましたが、1500人以上が亡くなることになってしまいました。

タイタニック沈没
タイタニック号沈没を描いた絵
タイタニック号がぶつかったとされる氷山
タイタニック号がぶつかったとされる氷山。正面衝突でなく、横をかすめてしまった

氷山と衝突してから1~2時間は、船の傾く速さはゆっくりであり、乗客たちは「このペースなら沈没には時間がかかるだろうし、救助が来るまでたっぷり時間があるに違いない」と希望を抱いていたようです。


しかし衝突から2時間を過ぎたあたりからタイタニック号は急激に傾いてしまい、約2時間30分後には完全に海の中へ姿を消してしまうことになります。

タイタニック沈没アニメーション
23:40ごろ氷山と衝突、深夜2:00頃から急激に沈んでいる
Artistosteles / CC BY-SA

氷山があるほど寒い地域であり、水温はマイナス2℃であったといいます。亡くなった約1500名は、沈没する船と一緒に海に放り出されてしまいました。


マイナス2℃の海に浸かってしまえば、助かる見込みはありません。寒さに凍えながら亡くなり、海底に沈んでいきました。

海底に沈んだタイタニック号
沈没から73年後、タイタニック号は1985年に発見された。これは2004年撮影で、腐敗はどんどん進み、いつか消え失せるとされる

世界中に衝撃が走った事件ですが、悲劇が起こった後に、「こんな事故はどうやったら防げるだろうか?」と考えるのが科学者の役割です。


タイタニックは目で氷山を確認して避けようとしましたが、それでは水面下の氷山を検知することはできません。なんとか、氷山の目に見えない部分を検知し、衝突を避ける科学的な方法はないのでしょうか?

氷山

そんなきっかけから始まったのは、人間には聞こえない不思議な音、超音波(ultra sound)の研究です。


実は超音波を利用すれば、タイタニック沈没のような悲劇を防止することができるのです。

タイタニックを氷山から守る超音波

📀 音の違いは、振動の違いである

タイタニック沈没を防ぐ超音波とは、何でしょう?それを知るためには、まず、音の視覚化について学びましょう。


オシロスコープという機械を使えば、音をこんなグラフに表すことができます。

オシロスコープ

音とは、空気の粒の振動のことでした。

音の振動

この粒の動きを追跡すると、波のような形ができます。

波の形
オシロスコープの波の音

オシロスコープは、音をこのような波に変換して表示してくれます。これを詳しく分析することで、

  • この音の大きさ
  • この音の高さ

を始めとした、音の細かな情報を理解することができます。

振幅が大きいと、大きな音になる

大きい音と小さい音は、波の幅で決まります。大きい音は、振動の幅が大きくなります。強い力(大きい声)のほうが、空気が大きく震えますよね。

大きい音の振動

これを波にすると、こうなります。

大きい音の波

つまり、大きい音の方が波の幅が大きく記録されます。

普通の音と大きな音

例えば、2つの音が同じ大きさのように聞こえても、こうやって機械で波の形に変換して幅の長さを測ると、音量の微妙な違いもよく分かるのです。


この波の大きさは振動の幅を表しているので、振幅(しんぷく)といいます。

振幅の大きさと音量の大きさ

振幅は、中心ラインから波の最大値までの距離です。上下の波の距離ではないので注意しましょう。

振幅のよくある間違い

小さな音は、振幅も小さくなります。

音の大小と振幅
振幅が長いと音量は大きい

振動数が大きいと、高い音が出る

音の大きさでなく、音の高低はどうやって決まるのでしょう?音の高さはズバリ、振動数で決まります


速く振動するほど、高い音が出ます。キーンと高い音は、耳の鼓膜を素早く振動させているわけです。

音の高さと振動数

つまり高い音は、波の数が多くなります。同じ時間でも、普通の音よりたくさん振動するからです。

高い音の振動数

振動数が小さいと、低い音となります。

低い音の振動
普通の音と低い音

2つの音を「どちらが高い音か?」と比べる場合、耳ではあまり差が分からなくとも、同じ時間内での振動数を比べれば細かな差が分かります。


振動数は、振動の繰り返しの回数です。つまり、最初から終わりまで、下図でいえばAからBまでで1回の振動です (どこから数えてもよい)。

振動数の数え方

👇下の図の範囲では、

  • 「高い音」の振動数……4回
  • 「普通の音」の振動数……2回
  • 「低い音」の振動数……1回

と数えることができます。

振動数と音の高低

🎻 モノコードで音を自由に操る

オシロスコープの波を通して、

  • 音の大小
  • 音の高低

の具体的な振動の違いを理解しました。


それでは今度は、音の確認に利用するモノコードという楽器を使い、意図的に好きな音を出すことを学びます。分かりやすく言うと、弦が1本だけのギターですね。

モノコード
https://www.3bs.jp/physics/sound/u15100.htm

弦を引っ張って弾くことで音が出ます。

モノコードの鳴らし方

モノコードの音を大きくするには?

音量を高めるためには、振幅を大きくしなければなりません。


なので、モノコードを強く弾けばOKです。モノコードの振幅自体が大きくなるため、音量も大きくなります。

モノコードの弾き方と音

モノコードの音を高くするには?

キーンと高い音を出したいのなら、振動数を増やせばよいのです。モノコードの弦をより速く細かく振動させると、高い音が出ます。

高い音と振動数

振動数が増えるということは、素早く振動するということです。つまり基本的には、重い弦よりも軽い弦の方が素早く振動し、振動数が増えて高い音が出ます。


具体的に振動数を増やす方法は、

  1. 弦を短くする (短い方が軽い)
  2. 弦を強く張る (無駄がない方が軽い)
  3. 弦を細くする (細い方が軽い)

の3つです。これら全ては、弦を速く振動させ、結果的に弦の振動数を増やします。

モノコードで高い音を出す方法
暗記するのでなく、「弦を軽くするには?」と考えればよい

同じ力で弦を弾くとしても、上記の3つのどれか、もしくは全てできれば振動数を増やすことができ、高い音を実現できます。


低い音を出したい場合は、もちろん逆をすればOK。弦を重くした方が振動が遅くなり、低い音が出ます

  • 弦を長くする (長い方が重い)
  • 弦を弱く張る (弦が微妙に長くなって重い)
  • 弦を太くする (太い方が重い)

この3つ全て、弦が重くなりますよね。弦の振動を遅くして、振動数を少なくします。結果、低い音が出ます。

🎼 振動数を表す単位、ヘルツ(Hz)

「振動数が多いほど高い音が出る!」ことは学びましたが、振動数を表す国際的な単位があります。それがヘルツ(Hz)です。


ヘルツ(Hz)は、「1秒間に何回振動するか」を表す単位です。振動数や、波が繰り返す数であるため周波数と言ったりします。

  • 1秒間に1回振動する……1Hz (1ヘルツ)
  • 1秒間に50回振動する……50Hz (50ヘルツ)

空気の振動をオシロスコープで記録し、1秒間の振動数を数えるだけでHzが分かります。つまり、音の高さを数値化することができます。

オシロスコープで振動を記録
50Hzの説明

様々な音の周波数(Hz)

全ての音は波の形に直すことで、周波数(Hz, ヘルツ)を調べることができます。周波数が高いほど、キーンと高い音になっていきます。

周波数
音の周波数「Hz(ヘルツ)」ってなに?

「ワン!」という犬の鳴き声が100Hzほどで、飛行機のキーンという飛ぶ音は10,000Hzにもなります。


ヘルツとして音の周波数を数値化することで、様々な音の高さ/低さが具体的に分かります。

様々な周波数の音を聞いてみる

実際にさまざまな周波数の音を聞いてみましょう。


今YouTubeを開けられる人は、20Hzから20,000Hzの音を聞いてみてください。高い音はキーーンと耳鳴りするので、音量を下げつつゆっくり聞いてください。

20Hz to 20kHz (Human Audio Spectrum)

個人的には、60~70Hzから聞こえ始め、15,000Hzくらいまではハッキリ聞こえます。

🐬 【超音波】音は聞くためだけじゃない

テレビやインターネットでもよく見る言葉超音波。なんかカッコいい響きですが、具体的に何かを知っている人は意外と少数です。


実は、人間は全ての音が聞こえるわけではありません。ある周波数(Hz)の範囲外の音は、全く聞こえなくなってしまいます。


先程のYouTubeでは、20Hz~20,000Hzまで周波数がありましたが、聞こえる範囲には個人差があります。人によって、

  • 20Hz~20,000Hz まで全部聞こえた
  • 50Hz~16,000Hz まで聞こえた
  • 80Hz~13,000Hz までしか聞こえなかった

など、結果は人それぞれ。


しかしどんなに聴覚が敏感な人でも、人間が聞こえる範囲はだいたい20Hz~20,000Hzまでだと言われています。つまり、20Hzより低い音と、20,000Hzより高い音は人間には聞こえません。


こういった、

  • 人間には聞こえない
  • 人が聞く以外の目的がある

ような音を、超音波といいます。つまりほとんどの場合、超音波があっても人間は気がつかないのが普通です。

超音波の周波数

可聴域(聞こえる範囲)年齢により変化し、若いほど広い範囲の音が聞こえますが、年を取るにつれて15,000Hzあたりの音も聞こえなくなってきます。


犬や猫は、40,000Hz~50,000Hzくらいまで聞こえます。

身の回りの超音波の応用

カップラーメンを食べる時、蓋をはがしますよね。ベリっとめくるあの蓋の部分、実は接着剤でひっつけているのではありません。カップラーメンを食べるときは直接カップを口につけるので、接着剤がついていたら健康によくないのです。

カップヌードルの蓋
フタは接着剤でひっついているわけではない!

ここで活躍するのが超音波。工場でカップラーメンに蓋をするときは、蓋の部分に超音波を当てます。


カップと蓋は超音波により高速で振動することになり、そのときの摩擦熱でカップが少し溶け、それがのりのような役割を果たし、蓋がピッタリひっつきます。


お腹の中の赤ちゃんを見るのも、超音波のおかげ。エコー検査は、超音波を利用しています。

超音波で赤ちゃんを見る

超音波をお腹に当てると、超音波が赤ちゃんにぶつかると反射します。そのときに返ってきた超音波をコンピュータに読み込ませることで、赤ちゃんの形を映しているのです。


もちろん、男の子のおちんちんも丸見えです。

超音波を利用する動物

コウモリは、超音波を活用する動物として有名です。コウモリは喉から超音波を発し、障害物にぶつかって返ってくる超音波を感知します。


超音波の反射ぐあいによって、

  • 障害物はどこにあるのか
  • 獲物はどこにいるのか
  • 獲物はどう、どれくらいの速さで動いているのか

などの細かな情報を得て、真っ暗な洞窟の中でも狩りをすることができます。体内に精密なオシロスコープを持っているようなもので、目が見えなくとも状況が把握できます。

コウモリ

また、イルカも超音波を利用する動物として有名で、コウモリと同じように、超音波を出して獲物を探すことがあります。


さらに、イルカは仲間同士で高度なコミュニケーションが取れる賢い動物として有名ですが、ある地域のイルカは仲間とのコミュニケーションも全て超音波で行うようです。

イルカちゃんと超音波

真偽不明ですが、一説によると「コミュニケーションを超音波で取ることで、シャチに居場所がバレないようにしている」ことが理由として考えられるようです。とっても賢いですね。

無駄にならなかった1500人の命

さて……、ここまで来ると、「超音波が、どうやって氷山からタイタニック号を守るのか?」の答えが分かるはずです。

氷山から守る超音波

タイタニック号の時代は、まだまだ氷山などの重大な障害物については、目視で確認するしかありませんでした。


しかし、それでは夜はなかなか見えないし、「氷山の一角」という言葉があるように、氷山はむしろ水面下の見えない部分の方が巨大です。したがって、目視では氷山の衝突を防ぐことはかなり難しいのです。


なんとかして、目が見えない夜でも、水面下でも障害物を確認する方法が必要です。

氷山とタイタニック号

タイタニック号沈没をきっかけに、コウモリやイルカが超音波で障害物を判断しているように、船からの超音波で海中の障害物を見つける研究が進みました。前回に話した、魚群探知機も同じ原理です。

超音波で氷山の衝突を防ぐ

普通の音では周波数が足りずにうまく反射しないことが多いため、超音波を出す必要があります。超音波の研究が進み、簡単に超音波を出して利用できるようになったお陰で、船は障害物を避けられるようになりました。


タイタニック号の悲劇こそ、科学者たちが超音波研究の使命を燃やしたキッカケだったのです。今では船はもちろん、特に体内を詳しく調べる医学分野も、超音波なしには成立しません。


約1500名の死は決して無駄にならず、今日も人々の命を助けています。

📚 おすすめ参考文献

🍿 参考になった映画

タイタニック (字幕版)

誰もが知ってる不朽の名作ですね。恋愛のフィクションを織り交ぜつつ、氷山衝突から沈没に至るまでは証言に基づいて再現されています。


身分の違う2人が出会う情熱的な恋愛と、氷点下の海での沈没パニックの描写がうまく溶け合い、どちらもリアリティを失わない展開になっています。歴史に残る大事故の勉強にも、極限状態での人々のあるべき振る舞い、また身分の高い女性の口説き方など、学ぶべきことがたくさん詰まっています。


ちゃんと観たことがない人は、必ず観ておきましょう。

📖 参考になった書籍

音のなんでも小事典―脳が音を聴くしくみから超音波顕微鏡まで (ブルーバックス)

音に関する豆知識から詳しい知見まで、ほとんどのトピックは網羅している本。


多少の前提知識は必要ですが、タイトル通り小さな辞書として置いておくのはアリ。

▶︎ 参考になったビデオ

Production of sound | Mechanical waves and sound | Physics | Khan Academy

Khan Academy の音に関するビデオ。とっても分かりやすいし必見です (英語ですが、、、)。

Titanic sinks in REAL TIME – 2 HOURS 40 MINUTES

タイタニックは氷山衝突から約2時間30分で完全に沈没しますが、それをリアルタイムにアニメーションした動画です。これで1500人が亡くなったことを想像すると、かなり迫力があります。

衝突から2時間を超えて船体が割れた後、一瞬で海に沈んでいきましたね。

📱 参考になったページ

音の周波数「Hz(ヘルツ)」って何? 日常に聴いている音の周波数が確認できました。

タイタニック号沈没事故 こういった事故の発生経緯や出典はwikipediaが最も詳しいですね。

イルカは超音波をどう出す? よみがなもついてる、朝日新聞のやさしい解説

音の世界に生きるイルカ イルカの音の研究。伊豆諸島の御蔵島のあるグループのイルカたちが超音波しか出さないのは、シャチに見つからないため?という仮説は面白かったです。

What were the ticket prices to board the Titanic? タイタニックのチケット代。一番高いのは今で言う500万円ほどですが、まぁ妥当なんでしょうか。

‘In MedTech History’ – Ultrasound, Part 1 タイタニック沈没の1ヶ月後には、音波による氷山検出技術の特許が出願され、今に至るまで超音波が改良されてきたようです。大きな事故は科学の発展のキッカケになることがあるんですね。

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