ファラデーのクリスマス・レクチャーから、状態変化を学びました。物質が
- 固体
- 液体
- 気体
と状態変化する理由は、全て分子の振る舞い方にあります。
今回は状態変化の基本について学んだ後、後に人類に最も身近な物質である「水」の状態変化にフォーカスします。
💨 状態変化と体積の関係
熱を加えたり、冷やしたりすると物質の状態は変化します(状態変化)。

このときの分子の様子から、体積の変化に注目してみます。
固体と液体の体積関係
ギッシリ分子が規則的に並んだ固体は、一粒一粒が細かく震えているだけで、全体としてしっかり形を保っています。
もしこれを加熱すると、分子の運動が激しくなり、液体となります(融解)。液体になれば、分子同士が離れるので、全体の体積は大きくなります。

固体のロウがビーカーに入っていて、それが熱されて溶けたとします。そうすると、縁のラインは上昇することになります。

反対に、液体が冷えて固体になるとき(凝固)では、物質の分子はギュッと縮まり、体積は小さくなります。例えば、溶けて液体になったロウがビーカーに入っているとします。

ロウの液体は、冷えると固まります。凝固する場合は分子の動きがギュッと収まるため、体積は小さくなります。その際は、ビーカーの真ん中が凹んだ形で固まります。

ロウは最も冷たいビーカーの端から固まっていくため、中央部が固まる頃にはロウがあまり残っておらず、空洞になってしまうからです。
しかし、融解や凝固しても、分子の運動の様子が変わるだけ。状態変化しても分子の数はそのままなので、質量はまったく変化しません。

液体と気体の体積関係
熱を得て、自由に動き回り始めた液体の分子たち。
ここからさらに加熱すると、分子はさらに激しく動いて空気中に脱出し、猛スピードで空中を動き回るようになります(蒸発)。

当然、分子同士は遠く離れ離れになってしまいます。したがって、気体の体積は圧倒的に大きくなります。液体のときの1000倍以上になることが多いです。

袋に少量のエタノールを入れて、それにお湯に浸すなどして温めると、袋が膨張します。
袋内のエタノールの一部が蒸発し、体積が大きくなったからです。

気体が冷えて液体になると(凝結)、逆に体積は小さくなります。
しかし当然、気体になっても分子の数は変化なし。なので質量も、全く変化しません。

🛩 状態変化とエネルギー
話は変わりますが、ライフル銃の弾丸は、時速約3000kmで発射されるらしいです。

- 新幹線…時速300km
- 飛行機…時速800km
- 音速…時速1200km(秒速340m)
であることを考えると、とてつもないスピードです。当然、打たれたら死にます。

しかし実は、今もあなたの体には、ライフル銃に負けないスピードの弾丸がぶつかっています。
こうしている今もあなたの体中を直撃している、その弾丸の正体は…、
- 酸素
- 窒素
- 二酸化炭素
- 水蒸気
などの気体たちです!
例えば、固体の物質での分子は、それぞれ細かく振動しています。

固体が加熱されて融解すると、熱のエネルギーによりもっと振動が激しくなり、分子が自由に動きます。これが液体。

さらに熱が加わり蒸発が起こると、液体中の分子がもっと暴れだして広がり、物質は気体になります。

気体になるほど熱が加わると、分子が持つエネルギーも高くなり、上図のように分子は空中を猛スピードで動き回ります。
このときのスピードはなんと…、
- 二酸化炭素…時速1360km
- 酸素…時速1600km
- 窒素…時速1700km
- 水蒸気…時速2100km
- 水素…時速6400km
となります(1気圧/25℃の場合)。

あなたの部屋でもどこでも、音速を超えるスピードで、気体の分子の弾丸はあなたに容赦なくぶつかっています。特に水素は軽いので速い。
もちろん分子はとても小さくて軽いので、分子の弾丸がぶつかっても痛みを感じませんし、死にません。ご安心ください。
🎈 状態変化と密度の関係
状態変化では、固体から気体の順番に体積が大きくなっていきます。
それでは、体積と関係の深い密度についても確認しましょう。

この関係を密度になおして考えると、物質の密度の大きさランキングでは、
- 固体
- 液体
- 気体
となります。同じ質量ならば、体積が大きいほど密度が小さく、体積が小さいほど密度が大きくなるからです。

従って、例えば液体のロウの中に固体のロウを入れると、固体のロウは沈みます。

固体のロウの方が、液体より密度が大きいからです。
🌊 「水」は不思議な物質だった!
水は生命にとって絶対に不可欠で、最も身近な存在の一つです。
当然その水も、固体(氷)→液体(水)→気体(水蒸気)と状態変化する物質。

しかしこの水、状態変化においては少し不思議で、ややこしい性質を持っています。
☕湯気を気体だと思ってませんか?(クリックで詳細)
鍋ややかんでお湯を沸騰させると、湯気がでてきます。沸騰させなくとも、お風呂のお湯は蒸発し、湯気が出ていきますね。

しかし一点注意、この湯気は気体ではありません。
気体(水蒸気)ならば、目に見えないはずです。白っぽく見えるということは…、湯気は液体なのです。
お湯から蒸発した水蒸気が外気で冷やされ、凝結したものが湯気です。

空を見上げて見える白い雲も、水蒸気が冷えて凝固した水です。液体ですよ。

参考: Curious Kids: how do the clouds stay up in the sky?
↑の日本語訳: なぜ雲は空に浮くことができるの?
水は、液体より固体の体積が大きい珍しい物質
ロウやエタノールなど、物質の三態の体積変化は、基本的には以下の通り。

しかし、水はこの例外。なんと、液体よりも固体の方が体積が大きいのです!
(約1.1倍に膨らむ)

水は氷になるとき、分子が隙間がある状態で固まる珍しい物質なのです。
水は凝固して氷になると体積が増えるので、ペットボトルの水が凍ると、ボトルがパンパンに膨れ上がります。

https://imgur.com/9G27FQY
ビーカーに入れた水を凍らせても、当然膨れ上がります。その場合、中央部が膨らみます。

水は氷になると体積が増えてしまうため、冬は水道管が破裂することが多くなります。

建築の世界では、水が凝固して氷になる瞬間の圧力を利用して、コンクリートにヒビを入れ、解体しやすくする技術もあります。

https://www.toda.co.jp/lucubration/pdf/v650.pdf
水の状態変化と密度
氷の方が水よりも体積が大きいということは……、氷の方が水よりも密度が小さいことを意味します。

その証拠に、氷は水に浮かびますよね。これは、水より氷が密度が小さい(同じ質量のとき、体積が大きい)ことを表しています。


❄️ 偉大な「水」は、不思議な性質で生命を守る
- ロウ
- エタノール
など通常の物質は、固体の体積が一番小さくなります。分子がギュッと縮まるのだから当然です。
しかし、水は固体の体積が大きくなる珍しい物質。

実は地球の生命は、「凍ったら体積が増える」この不思議な水の性質に守られています。
もし、氷のほうが水より密度が大きかったら?
もし、普通の物質と同じく、氷の方が密度が高かったとしましょう。

この場合、氷は水に沈むことになります。つまり、北極の氷は全て海底に沈みます。この時点で、ホッキョクグマは生きていけません。狩りができなくなるし、すぐに溺れ死んでしまいます。

そして、特に寒い地域で凍った氷がドンドン沈めば、
- 海面で水が凍って氷になる
- 氷が海底に沈む
- また海面で水が氷になる
- 氷が海底に沈む
の繰り返しで、やがては海底から表面まで凍り尽くしてしまいます。寒い地域の海や湖では、冬は水中生物が生きていけません。
氷の密度が水よりも小さいお陰で、氷は表面を漂ってくれます。
そして温かい水は底にとどまるので、魚が泳ぎつづけることができます。

📚 おすすめ参考文献
📖 参考になった書籍
・水とはなにか―ミクロに見たそのふるまい〈新装版〉 (ブルーバックス)
水を分子レベルの構造から分かりやすく解説し、水にまつわる身近な疑問もある程度カバーされています。水の特殊性や分子運動については前半部分でよく触れられており、おおいに参考にしました。
後半からは生体内の水や麻酔についてなど、水を入り口とした発展的内容です。
📱 参考になったページ
・Thermal velocity 分子の熱運動のスピードが載ってる
・水の凍結圧力を利用したコンクリート構造物の破砕技術に関する研究 古代では凍結圧力を利用して巨石を割ったりしていたのでは、と考えて検索したら現代のが出てきました
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