物体の力の集中度合いである、圧力は理解できましたか?
今回は、水中の圧力について学びます。
まず、この写真をみてください。
写真の左側は、発泡スチロール製のカップ。カップヌードルに使われている質のカップですね。
右側は、それを水深1500m に沈めたカップの図です。カップがぐちゃぐちゃに潰れています。
そう、水の中には、目に見えない強い力が働いているのです。
もちろん、人間も水深1500mに生身で沈めば、サメに食べられる前にこのカップのようにグシャリと潰れて死んでしまいます。
今回は、この見えない怖い力について学びます。
水中の圧力を、水風船で考えてみよう
水中の見えない力を理解するために、この写真を見てください。
この写真では、ペットボトルに水を入れ、横に小さな穴を上から3つ開けています。当然、その穴から水が漏れてきますよね。
しかし、下の穴からの方が、勢いよく水が吹き出しています。
下の穴からの方がスピードも速いし、水は遠くに飛んでいます。なぜ?
上下からの圧力
ペットボトルの下の穴から勢いよく水が出る謎を理解するため、
容器に入った水を、水のサイコロの集まりだと考えましょう。
水も結局は小さな粒の集まりなので、このように考えても問題ありません。
では、もっと分かりやすいように、水が入った水風船をつみあげた状態と比べます。
水風船を積み上げれば、上の水風船の重さと圧力が下の水風船に伝わります。
当たり前ですが、下にいけばいくほど、水風船が受け取る圧力は増えますよね。上にある全ての水風船の重みが伝わるからです。
しかし、これだけではありません。
水風船は、上から力を受けると同時に、それに反発するように下から上の力も発生させています。
リンゴを机の上に置くと、机からも「机がリンゴを押す力」が生まれるのを覚えていますか?
リンゴが机を押すと同時に、それを支えるための反発する力(机がリンゴを押す力)が生まれているわけです。
作用反作用と呼ばれる現象です。
水風船も同じで、上から押さえられれば、反発して下から支える力が生まれます。
下からの圧力の方が強い
もう一度、以下のイラストを見てください。
それぞれの水風船には、下から突き上げる赤い矢印の方が大きく描かれています。
つまり、上から下に押しつぶす力よりも、下から上に突き上げる力の方が強いのです。
理由は簡単。ある一つの水風船を例にとって考えましょう。
水風船自身の重さが加わるので、上側より、底の方が下への圧力がかかりますよね。
上面は水風船4つ分の圧力に対して、底面には自分の重さを含めて、水風船5つ分の圧力がかかります。
そこに作用反作用が働き、底面からは水風船を支えるための反発する力が生まれています。
この反発する力は、受け取っている力と全く同じ強さで発生しています。
結果、それぞれの水風船には、上向きの力の方が強く働くわけです。
水平方向の圧力
水風船を積み上げると、水平方向の力も発生します。
上下からの圧力により変形し、横に広がる力が生まれるからです。
下にある水風船ほど重み(圧力)がかかるので、ラグビーボールみたいに横に膨らみます。
これこそ、水平方向への力が生まれている証拠です。
もちろん、下へいくほど水風船は潰れるので、水平方向の圧力も強くなります。
水中の圧力、【水圧】
水風船での説明は、実際の水中と同じです。
水も結局は小さな粒の集まりなので、水風船のようなサイコロとして考えることができます。
水中には、あらゆる方向からの圧力が働いています。当然、深い場所の方が圧力は強くなります。
このような、水中の上下左右、あらゆる方向に働く力を、水圧といいます。
ペットボトルから吹き出す水
水圧が理解できれば、ペットボトルから吹き出す水の謎が解けます。
深い位置からのほうが水が強く吹き出すのは、深い位置のほうが水圧が強いからです。
ダムや堤防の形を思い浮かべてみましょう。
深い位置ほど、分厚くなる構造です。
深い位置の方が水平方向への水圧も強いため、それに抵抗するためです。
水平方向の力が働くところが、液体の面白いところです。
木などの個体は簡単に押しつぶされないので、ほとんど水平方向への力が働くことがありません。
カップを潰す、強力な水圧
ここまで分かると、海の深い場所では、カップが潰れるのも当たり前に思えますよね。
海の深い場所では、想像以上の水圧がかかります。プラスチックや発泡スチロールのカップなど、すぐに小さく潰れてしまいます。
また、物体にかかる水圧は、上下斜め、全てあらゆる方向にかかることに注意しましょう。
その証拠に、下の写真では海底に沈んだ発泡スチロールは一部がつぶれるのでなく、同じ形で小さくなっています。
もちろん、深い場所の方が圧力は強い。
例えば底がゴム膜で覆われた円柱をタテに沈めた場合、底の方が大きくへこむことになります。
水圧はとても強いので、硬いものでも簡単にカットできます。これを、ウォータージェット技術と言います。
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