映画にもなっている、1912年に沈没して1500人以上の死者を出したタイタニック号は、質量が約5万t(トン)ありました。1t(トン) は 1000kg なので、大変な質量です。
現代では、世界最大級の豪華客船の質量は12万t(トン)ほどにもなるようです。
しかし、こんなに重い船はなぜ海に沈まないのでしょうか?
(タイタニック号は氷山にぶつかって沈没しましたが……、基本的には浮かんでいました)
船と同じ金属でできていて、とても軽いスマートフォンは、簡単に水中に沈んでいきます。ハサミなど、身の回りの軽い金属も同じく、水に沈んでいきます。
スマホなどは海に沈むのに、なぜもっと重い船が沈まないの?
今日はその疑問を解決するため、ギリシャの偉大な哲学者を紹介しつつ解説していきます。
水中では、物体は軽くなる
大人のウミガメは質量が100kg以上あるのも普通ですし、記録されているもので最も重いウミガメはなんと 996kg あったようです。約1t !
ウミガメは重すぎるので、いくらかわいくても、陸地で抱っこすることは不可能です。しかし、海の中でなら、同じウミガメを抱っこしてあげることができるでしょう。
水中では、物体は軽くなるからです。
プールやお風呂の中でも、自分の体はとても軽く感じますよね。
軽さの秘密、【浮力】
水中で物体が軽くなる理由は、【水圧】を学んだ後ならすぐに理解できるはずです。
水中では、深い場所ほど水圧が強くはたらき、そのため下から上へ突き上げる力の方が強くなることを学びましたね。
したがって、ウミガメも水中では上向きの水圧を、下向きの水圧より強く受けていることになります。
その結果、ウミガメには水中を浮かぶ力がはたらくことになります。
水中の物体を上に浮かばせるこの力を、浮力(ふりょく)といいます。
浮力は、物体の上部と下部の水圧の違いにより生じるわけですね。下の部分の方が水深が深いので、水圧が強くなっているわけです。
水中では上向きの水圧、浮力があるからウミガメは軽くなるのです。
「なぜ浮力は生じるの?」と聞かれたら、「深さにより、水圧に差が生じるから」と答えられるようにしましょう!
アルキメデスの原理
浮力については理解できたと思いますが、浮力はどれくらいの強さなのでしょうか?
その疑問に答えるため、ギリシャの哲学者のアルキメデスを紹介します。
約2200年前にギリシャに生きていたアルキメデスは、浮力に関するある法則を発見したことで有名です。
それは今では『アルキメデスの原理』として知られています。
浮力は、物体がおしのけた水の重さと等しい
『アルキメデスの原理』とは、「浮力は、物体がおしのけた水の重さと等しい」という法則です。
まず、ウミガメちゃんを大きなプールに入れてあげましょう。当然、プールのかさは増して、水があふれてしまいます。
上の図のように、溢れた水を一つの容器に集めましょう。
もし、この容器に集まった水の重さが 100N であれば、ウミガメには 100N の浮力がかかっていることになります。これがアルキメデスの原理です。
あふれた水が 100N ということは、ウミガメがおしのけた水の重さが 100N だということ。
浮力はおしのけた水の重さと等しいので、浮力も 100N。
浮力と重さの関係
例えば 1000N(約100kg) のウミガメに 100N の浮力がはたらいた場合、そのウミガメの重さは 900N に軽くなります。
水に入れたときの物体の重さを測れば、そのまま引き算で浮力が分かります。
『アルキメデスの原理』(浮力は、物体がおしのけた水の重さと等しい)を考えると、少しずつ物体を水にいれるほど浮力がはたらき、少しずつ軽くなっていくはずです。
ウミガメが水中に沈むほど、おしのける水の量は増えます。だから浮力も大きくなっていきます。
船が沈まない理由
浮力とアルキメデスの原理が理解できれば、船が沈まない理由が分かります!
船は内部に空洞がある作りになっているので、たくさんの量の水をおしのけることができます。
すると、とても大きな浮力がはたらくため、船の重さを十分に支えることができるのです。これこそ、重い船が沈まない理由です。
もし、同じ重さの船が平らで空洞のない形だとすると、あまり多くの水をおしのけることができず、小さな浮力しかはたらきません。
船自体の重さを支えるには不十分な浮力ですし、その上たくさんの人や荷物が乗ってしまうと、すぐに沈んでしまうでしょう。
水の上に船が浮かんでいるときは、「船にかかる重力(船の重さ)」と「船にかかる浮力」がつりあった状態になっています。
「船にかかる浮力」が、「船にかかる重力」を下回ってしまえば、船はすぐに沈んでしまいます。
だからこそ船を作るときは、しっかりと「たくさんの水をおしのけられる構造」にして、大きな浮力が得られるように設計しなければなりません。
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