1965年、日本では伝説の怪獣、大怪獣ガメラが暴れまわっていました。
ガメラは亀が巨大化したような怪獣で、大きな船を沈めるだけでなく、東京タワーまで破壊してしまうパワーを持っています。「ゴジラのような恐ろしい怪獣だ!」ということで、日本中の映画ファンや子どもたちは、ガメラに夢中になってしまいました。
ガメラはとても怖い怪獣ですし、逃げたくなる気持ちも分かります。しかし実は、理科をしっかりと学んでいれば、ガメラは意外とかわいくてぽわぽわした怪獣であることが分かります。
😷 ギッシリ?スカスカ?密度という指標
2020年、肺炎をもたらす新型コロナウイルスが世界中で大流行し、たくさんの人が亡くなりました。学校も長期間の休校となり、オリンピックも延期するなど、経済への大きな影響がありました。歴史に残るパンデミック(感染爆発)となりました。
日本で最も感染者が多く、大きなパニックになったのは東京です。東京の小池都知事は感染を防ぐため、新聞記者が集まると「密です」と言って、人間同士が近づきすぎないように求めました。
東京では、毎日のように感染者数が増加し、人々が神経質になっていました。したがって小池知事は、感染が広がる可能性が高くなるような「密」を無くしたかったのです。
人口密度
「密」を表す指標に、人口密度があります。人口密度とは、「1k㎡あたりに住む人の数」です。1k㎡は、だいたいサッカー場130面くらいでしょうか。
例えばある地域では、1k㎡あたりに100人住んでいるのなら、人口密度は100(人/k㎡)となります。
都道府県の人口密度
ちなみに日本の各都道府県の人口密度は、
- 47位…北海道。約66(人/k㎡)
- 23位…石川県。約271(人/k㎡)
- 1位…東京都。約6,500(人/k㎡)
です(都道府県人口・面積・人口密度ランキング)。
ちなみに、日本全体で考えると人口密度は約330であるようです。そう考えると、
1k㎡に6500人も人が住んでいる東京は、北海道に比べるとぎゅうぎゅう詰めになっています。
東京は密だということですね。感染が広がり、小池都知事が神経質になるのも納得できます。
人口密度計算の練習問題
人口密度は、「1k㎡あたりに住む人の数」です。つまり、その地域の人口をk㎡で割ってやれば出ます。
- 人口135万人
- 面積800k㎡
の地域があったとすれば、135万÷800= 1687.5。人口密度は1687.5(人/k㎡)です。その地域では、1k㎡あたりに1687.5人住んでいるくらいの密度です。
🦴 物質の密度を知る!
人口密度と同じように、物質にも密度があります。
つまり物質の密度を知ると、それがギッシリ中身が詰まって重い物質なのか、中身が軽い物質なのかを教えてくれます。
ズッシリ重いボウリングの球と同じ大きさの綿菓子を用意します。
2つは全く同じ体積だとします。しかし、同じ大きさでもボウリングの球の方が重いし、綿菓子は重みを感じないくらい軽いです。
この理由は簡単で、ボウリングの球の中身には何か重いものがギッシリ詰まっている一方、綿菓子は中身が軽くてぽわぽわしているからです。
同じ体積での、ぽわぽわランキング
ボウリング球と同じくらいの体積の物体を4つ選んで、簡単なぽわぽわランキングを作ってみました。
全て同じ体積(大きさ)なのに、4つは質量が全然違います。ボウリング玉やスイカは質量がある一方、バレーボールや綿菓子は軽くてぽわぽわした印象です。
これは言い換えれば、「どれだけ中身が詰まっておらず、軽い物質であるのか?」のランキングであると言えます。ボウリングはギッシリ詰まっていて、綿菓子はスカスカ。
あたかも、物質の中の人口密度みたいですね。
物質の密度とは、1cm³あたりの質量
これが物質の「密度」です。人口密度は「1k㎡に何人住んでいるか」でしたが、物質の密度は、「1cm³あたりの質量(g)」で表すことができます。密度は「1cm³の体積あたりに、何gの質量があるのか」が分かるので、どれだけ質量ある物質なのかが分かります。
例えばボウリング球の体積が 5,000cm³ で、質量が 6kg(6,000g)であったとします。
このボウリング球の密度、つまり1cm³あたりの質量(g)を知りたい場合、gをcm³で割れば計算できます。
このボウリング球の「1cm³あたりの質量(g)」は1.2です。つまり、密度は1.2。
密度の単位は g/cm³ (グラム毎立法センチメートル)
ボウリング球の密度を求めたように、物質の密度は 質量(g)を体積(cm³)で割ることで求められます。密度の単位はそのまま、g/cm³ を使います。
「ぐらむまいりっぽうせんちめーとる」と読みます。先程のボウリング球の密度は、1.2 g/cm³ ですね。
以下の物体の密度も計算してみましょう。体積は全て5,000cm³で同じであるとします。
- スイカ(質量5,500g, 体積5,000cm³)
- バレーボール(質量250g, 体積5,000cm³)
- 綿菓子(質量50g, 体積5,000cm³)
密度が分かれば、「この物体がどれだけ中身が詰まっているのか、スカスカなのか?」が簡単に分かりますね。ぽわぽわランキングも、具体的な数字ではっきり分かります。
サッカーボールを使って、密度の計算練習
練習として、とあるサッカーボールの密度を求めてみます。小数点第二位を四捨五入して、小数点第一位までで答えること。
- 質量440g, 体積5,500cm³のサッカーボール
🔢 質量と体積を量る方法
密度を求めると、その物質のギッシリ/ぽわぽわ具合が分かります。しかし密度を知るためには、質量と体積を量らなければなりません。
例えば、ある謎の物質の密度を調べたいとします。
質量は上皿天秤で量る
まず、この謎の物質の質量を知る必要があります。
質量を量るには、上皿天秤(うわざらてんびん)を利用します。
上皿天秤を精密に利用するため、以下のステップを抑えます。
- 上皿天秤は水平な台に置くこと
- 針が左右均等に振れるよう調節ねじで調整すること
上皿天秤には、質量が分かっているいろいろな分銅があります。物質と63.2g分の分銅がつり合ったならば、その物体の質量は63.2gです。調節しやすいように、質量の大きい分銅から載せていきましょう。
薬品の質量を計測する場合は、必ず薬包紙を敷いてから。そして薬包紙を敷いたのなら、重さを揃えるため分銅にも薬包紙を敷くこと。
体積はメスシリンダーで計測する
上皿天秤を使ったので、謎の物質の質量は判明しました。次は体積を求める必要があります。
体積は、立方体など綺麗な形であれば「縦×横×高さ」で簡単に計算できます。しかし世の中の物質はそんな綺麗な形をしていません。
そういった物質の体積はメスシリンダーで計量することができます。
例えば、メスシリンダーに50cm³の水を入れていたとします。
そのメスシリンダーに物質を入れれば、当然水かさが増えます。ある物質を50cm³の水が入ったメスシリンダーに入れた時、58cm³ になったとすれば、その物質の体積は8.0cm³であることが分かります。
満杯のお風呂に入った時に溢れ出たお湯の体積は、あなたの体積と一致します。
例えば、以下のメスシリンダーで体積を読むと、「50cm³」と読みたくなるところですが、理科ではぜひ「50.0cm³」と、0.1cm³ 単位まで読んでください。
理科では、「目盛りの1/10の単位まで読む」というルールがあります。以下のメスシリンダーは 1cm³ ごとの目盛りなので、1/10の0.1cm³ 単位まで正確に読まなければいけません。
上の例でも、メスシリンダーに物質を入れると、50.0cm³ の水が 58.0cm³ になっていました。ここで、物質の体積を 「8cm³」と答えたくなるところですが、「8.0cm³」と答えてください。
これで、謎の物質の質量と体積が判明しました。計算の結果、密度は7.9g/cm³ であることが分かりました。
- 質量
- 体積
を計量して密度を出すとき、必ずそのときの状況により誤差が出て、一発で正確な数字を出すことは難しいです。したがって、質量と体積それぞれ何度か計測し、その平均をとりましょう。その数字を使って、密度を出すのが賢い方法です。
🐢 ガメラの密度を計測してみよ!
ここで冒頭に出てきた、大怪獣ガメラの密度を調べてみます。その前に、いろんな物質の密度を調べてみました。
- 空気…0.0012g/cm³
- 発泡スチロール…0.02g/cm³
- 水…1g/cm³
- アルミ…2.7g/cm³
- 鉄…7.9g/cm³
同じ1cm³の体積ですが、空気は軽すぎて、鉄はやはり重いですね。つまり、鉄の方がギッシリ詰まっていて密度が大きい。
そして、生物は大半が水でできているので、生物の体の密度はだいたい水と同じ1g/cm³です。したがって大怪獣ガメラの密度も1g/cm³くらいのはずですが、大きな甲羅とあの破壊力を持っているのだから、もっと大きな密度なのかもしれませんね!
亀の密度
ガメラは巨大化した亀なので、そもそも亀の密度を調べてみます。こちらのブログによると、普通の亀の体積と質量は、
- 質量600g
- 体積480cm³
であるようです。
600÷480=1.25。
普通の亀の密度は1.25g/cm³ くらいなんですね。甲羅がある分、普通の生物より密度が大きいのでしょう。
ガメラの体積と質量
大きな鉄の塊も、小さな鉄の塊も、物質としては同じなので「1cm³ あたりの質量(g)」を表す密度は同じ 7.9g/cm³ ですよね。
同じく、ガメラは亀が巨大化したものだとすると、密度も亀と同じ1.25g/cm³くらいであるはずです。
それでは実際にガメラの密度を知るため、まずは身長と体重を確かめてみましょう。ガメラには『ぼくらのガメラ』という歌があり、その歌詞には「デカイぞ身長60m 重いぞ体重60t」とあります。大怪獣ガメラの体長は60mで、体重は80t(80,000kg)です。
では、ガメラの密度計算にチャレンジ。密度を求めるには、体積と質量が分かればいいのです。質量は80,000kgなので、これを g に直せばいいですね。
1kgが1,000g なので、80,000kgは 80,000,000g (8000万g)になります。
そして厄介なのが体積です。ガメラはデカすぎてメスシリンダーに入れることはできないので、体積が分かりません。
しかし、さっきのブログの亀の写真がヒントになりそうです。
なんか見た感じ、体長は大人の手のひらくらいでしょうか?大人の手の長さは18cmくらいらしいです。ということは、この亀は、
- 体長18cm
- 体積480cm³
ということになります。で、ガメラの体長は60m(6,000cm)ですから、普通の亀の333倍(6,000÷18)の体長です。
体長(高さ)が333倍であるということは、横幅も縦幅も333倍になります。ということは、体積は333の3乗倍!よって体積は約3700万倍!
普通の亀の体積が480cm³で、それを3700万倍すると…、なんと約177億cm³ !!デカイですね。
発泡スチロールの1/4の密度
はい、これで密度の計算に必要な、大怪獣ガメラの質量(g)と体積(cm³)がだいたい出ました。
- 質量8000万g
- 体積177億cm³
8000万÷177億を電卓で計算してみると、なんとガメラの密度は約0.0045g/cm³!!
密度が空気の4倍しかないし、スッカスカの発泡スチロールでも、ガメラの密度の4倍はあります。ガメラの体は、一体どんな物質でできているのでしょうか??
ガメラはぽわぽわでかわいい
ということで、ガメラの密度を頑張って計算すると、かわいいぽわぽわ怪獣であることが分かりましたね。実際、ガメラは凶暴ですが、子供は決して攻撃しない、やさしい怪獣であることが分かっています。
ゴジラもやさしい怪獣ですし、強き者はとてもやさしいんですね。
もう大怪獣ガメラに恐れることはありません。発泡スチロールの1/4しか密度がないぽわぽわ怪獣です。ふわふわ夜風に漂いながら東京タワーをぱふぱふ叩く、やさしくてかわいい怪獣なのです。
📚 おすすめ参考書籍
📖 参考になった書籍
・空想科学読本[マッハ7の悲劇] (空想科学研究所の電子書籍)
『空想科学読本』シリーズは、理科好きっ子が必ず読まねばならない本であることに間違いありません。キッズ版もなかなかいいんじゃないでしょうか。この本は電子書籍のみの販売で、kindle unlimitedで読めるものでした。
ガメラの密度の話もここからパクっています。密度の計算方法や結果は独自にやったので、本とは少し異なっています。
理科好きは必ずシリーズを読んでみること。
📱 参考になったページ
・カメの体積 カメちゃんかわいい
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