【全反射】ダイヤモンドに永遠の輝きを与え、光ファイバーで世界を一つにする魔法

全反射 中1理科

1948年から、世界中の人々を今も魅了している、大成功を収めたキャッチコピーがあります。


それは…、ダイヤモンドは永遠の輝き (A Diamond Is Forever)』。世界中の多くの人々が、一度は聞いたことがある言葉です。

ダイヤモンドはとても貴重な鉱石であり、特に大きな原石をキレイにカットした天然の高級ダイヤモンドには、数億円の値段がつくことも珍しくありません。


そういった超高級ダイヤモンドには個別の名前が与えられ、

  • 女王様が年に数回だけ身につける装飾品
  • 博物館の展示物
  • 億万長者の宝石コレクション

…などとして、資産家の間で何年も伝説として語り継がれることになります。


レプリカ(作り物)も多く、一般人が本物を見る機会はほとんどありません。

ホープ・ダイヤモンド
超有名ダイヤ、ホープ・ダイヤモンド。ルイ16世など、このダイヤを所有した者は処刑されたり、不幸になるという伝説があり、呪われた宝石だと言われる(作り話も多い)。推定約300億円とされる。
https://en.wikipedia.org/wiki/User:350z33
コーイヌール
インド産の伝説のダイヤ、コーイヌールレプリカ(本物じゃないよ)。「光の山」という意味で、インドが所有していたが植民地化によりイギリスに渡る。現在はイギリス王室の王冠につけられ、インドは今も返還を求めている。本物は1,000億円や、2000億円ともいわれる
https://en.wikipedia.org/wiki/User:Chris_73

しかし、なぜダイヤモンドは、世界中の人々を魅了する『永遠の輝き』を持っているのでしょうか?


それを知るための秘密は……、やはり光の屈折にありました。光の屈折を利用することで、ダイヤモンドの価値は高まっていくのです。

光の屈折とダイヤモンド

今日は、光の屈折の応用である全反射を学びます。この全反射は、

  • ダイヤモンドに永遠の輝きを与える

だけにとどまらず、

  • インターネットにより世界を一つに繋げる

という、信じられない魔術も持っているのです。

🔦ダイヤモンドと光の速さ

今回の主役のダイヤモンドと光の関係を見てみましょう。

💎ダイヤモンドのダントツの硬さ

ダイヤモンドは、今から約2300年前、紀元前2~3世紀にインドで発見されたと言われています。


最初はその輝きと美しさよりもむしろ、“硬さ” に注目されました。約2000年前の古代ローマ人たちは、石や宝石を磨いたり、彫刻するためにダイヤモンドを使っていました。


ダイヤモンドは長らく、世界でも最も硬い物質だと言われてきました。宝石を彫刻するには、それより硬い物質でカットする必要があるため、ダイヤモンドの硬さには高い価値があったのです。

ダイヤモンドカッター
ダイヤモンドカッター。ダイヤの硬さを利用し、硬い物質(ダイヤよりは柔らかい)を切るのに使える

さて、その圧倒的硬さを持つダイヤモンド……。ではもし、光がダイヤモンドの中を通ったらどうなるでしょうか?

光が、水やガラスの中を通るときは、それぞれの成分にぶつかるため、スピードが遅くなることは学びましたよね。

光が速く進める場所のランキングは、

  1. 真空(宇宙空間)
  2. 空気中
  3. 水中
  4. ガラス中

の順番でした。

光の速さ進む場所速さ(およそ)
🛰真空(宇宙)秒速30万km
🌏空気中秒速30万km(真空よりは遅い)
💧水中秒速22.5万km
⚪️ガラス中秒速20.5万km
物質別の光の速さ

今回は上の表に、ダイヤモンドを加えた表を作りました👇

光の速さ進む場所速さ(およそ)
🛰真空(宇宙)秒速30万km
🌏空気中秒速30万km(真空よりは遅い)
💧水中秒速22.5万km
⚪️ガラス中秒速20.5万km
💎ダイヤモンド中秒速12.4万km

なんと、真空だと秒速30万kmなのに、ダイヤモンドを通るときは秒速12.4万kmにまで遅くなっています。


ダイヤモンドの成分はとてもギッシリ詰まっているため、水やガラスよりもたくさん光を邪魔します。その結果、光の速さが半分以下にまで遅くなってしまうわけです。


👇のGIF画像で、実際の光の速さの違いを表現しました。

光はダイヤモンドを通ると、とっても遅くなってしまいますね。

⤵️屈折率と光の速さの関係

光は、違う物質を進むとき、

  • 反射
  • 屈折

の2つの現象を起こします。

入射角と屈折角

光が屈折する原因は、違う場所を進むときに光のスピードが変わるからでした。


例えば空気中から水に入射するときは、車の片方の車輪だけ、沼地に入ってしまうのと同じ理屈です。

光が屈折する理由
『光の屈折とフェルマーの原理』を復習しなさい😡

この理屈で考えると、「光のスピードが遅くなってしまうものほど大きく屈折してしまう」ことになります。深い沼地の方が、車の車輪は足を取られてしまうからです。


たとえば、

  • 水 (光は秒速22.5万kmになる)
  • ガラス (光は秒速20.5万kmになる)

を比べてみましょう。


光にとっては水よりガラスのほうが進みにくいので、ガラスにぶつかったときの方が大きく屈折します。ガラスの方が、深い沼地なのです。

水とガラスの屈折比較
ガラスの方が屈折角が小さくなる

これがダイヤモンドとなると、どうでしょう?当然、ダイヤモンドは光をとても屈折させます。


なぜなら、いくら宇宙一の速さを誇る光でも、ダイヤモンドの中は進みにくすぎて、強く足を取られてしまうからです。

ダイヤモンドの屈折率
屈折する度合いを「屈折率」といいます。水は1.33, ダイヤは2.42

もちろん、屈折と同時に、光は反射していることも忘れないで。

反射と屈折は同時に起こっている

反射角は、水であろうとダイヤであろうと変わりません。常に反射の法則が成り立ちます。

入射角が大きいときの現象、全反射

ここで、ダイヤモンドの永遠の輝きを支えている全反射と呼ばれる物理現象を知ってもらいます。

入射角が大きくなれば屈折角も大きくなる

水中やガラス中から、空気中へ光が出ていく場合を考えます。斜めから入れば、当然水面で屈折します。

光の屈折

ではここで、どんどん入射角を広げていったらどうなるでしょうか?

入射角を広げてみる

入射角をだんだん大きくしていくと、屈折角も大きくなっていくことが分かるはずです👇

入射角が大きくなると屈折角も大きくなる

屈折の限界

さて、この調子で入射角を大きくすると……、屈折角の限界が来ます。屈折角が90°になってしまうのです。

屈折角が90°に

👆を見れば分かるように、屈折光は平行に走っています。


ここからさらに入射角を大きくすると、もはや光は屈折できません

屈折できない光

光を強く反射する、全反射

入射角が大きすぎて、もはや屈折できなくなってしまう。その結果、「光が境界面で全て反射」してしまった。


こんな現象を、全反射といいます。屈折しないため、光のパワーが全て反射する現象です。

全反射

全反射は、光を境界面で全て反射させます。したがって、

  1. 全反射していないときの反射光
  2. 全反射したときの反射光

の2つを比べると、2 の方が強い光になっています。全反射していない場合は、屈折により光が逃げるからです。

全反射の強い反射光

全反射したときは、まさに鏡と同じ状態になるわけです。

全反射はあくまでも、

  • 水中から空気中へ
  • ガラス中から空気中へ

など、進みにくい物質から進みやすい物質にぶつかるときだけです。

  • 空気中から水中へ
  • 空気中からガラス中へ

などの場合は、全反射は起こりません。注意。

全反射が、水面を鏡にする

屈折させず、全ての光を反射させる全反射は、つまり鏡と同じ力を発揮します。

水面にハッキリ映る、逆さまの魚

👇の写真を見てみましょう。

水中から撮影した写真です。魚が2匹見えませんか?


しかし実際にいるのは1匹だけ。上の方の魚は、水面に映った魚の像です。よく見ると、上の魚は逆さまになってますよね?


これは、全反射により、水面が鏡のように強く光を反射しているからです。

全反射で映る魚
鏡面反射の回を復習しよう。もちろん、虚像。

水面が鏡のように強く光を反射するため、魚がハッキリと映るのです。


全反射でない場合は反射光が弱いので、薄い魚が映ります。これでは、鏡のようにハッキリとは見えません。

薄くしか映らない魚
全反射ではないとき

水中で全反射が起こる角度にいれば、水面が鏡のように見えるでしょう。

Anna
https://www.flickr.com/photos/54452028@N00/2484633022

泳いでいる人が、水面に鏡のようにバッチリ映ってますね。こんなにハッキリ映るのは、反射光が強い全反射のおかげ。

見えない水中の魚

全反射のおかげで、角度によっては水中の魚が見えない場合があります。

全反射により見えない魚
②にいる魚は見えるが、①にいる魚は見えない

👆の画像の①のように角度がついた場所を泳ぐ魚は、そこからの光は全反射により空気中に出ていきません。よって上からは見えなくなるのです。

ダイヤモンドと全反射

この全反射こそ、ダイヤモンドが永遠の輝きを放つ理由です。

via GIPHY

ダイヤモンドと屈折率

ダイヤモンドは、地球上でトップクラスの屈折率を誇る物質でしたよね。

ダイヤモンドの屈折率
青い部分がダイヤだった場合、光は白く示した方向へ屈折する。
同じ入射角でも、ダイヤモンドは強く屈折する

これは、「ダイヤモンドは全反射しやすい」ことを意味します。👆の図を見てください。ダイヤモンドの方は、水に比べて早く屈折の限界が来ますよね。


実際、水とダイヤモンドでは、全反射を起こす入射角が全く違います。

ダイヤモンドの全反射
  • 水……入射角が約49°以上なら全反射する
  • ダイヤ……入射角が約25°以上なら全反射する

ダイヤモンドの場合、入射角が25°以上であれば、全て全反射してしまいます。

永遠の輝きの正体は、全反射だった!

ダイヤモンドは屈折率が大きく、すぐに全反射しやすい。


だからダイヤモンドに入った光は、ダイヤモンド内で全反射を繰り返してから外に出てきます。


もし、これがダイヤと同じ形のガラスだったら?全反射がなかなかできず、反射のうちにたくさんの光が逃げていきます。

ダイヤモンドの全反射
屈折率が大きく、圧倒的に全反射しやすいダイヤモンド

ダイヤモンドは全反射により、強い光を空気中に返すことができるのです!

全反射とダイヤモンド

ダイヤモンドからは強い光が目に届くため、あんなにもまばゆい永遠の輝きを誇っているのですね。A Diamond Is Forever!!!!

デビアスのダイヤモンド
https://www.debeers.com/en-us/home

ダイヤモンドの形の中でも、最も全反射が起こりやすく、輝きやすいカット方をブリリアント・カットと言います。

ブリリアントカット
https://en.wikipedia.org/wiki/User:Jasper

これは、「少しでも全反射し、輝くように」と数学者が計算して考え出した形です。ダイヤモンドの形で似たようなものが多いのも、それが理由です。


ダイヤモンドの圧倒的屈折率を利用し、永遠の輝きを与える。数学と物理学こそ、ダイヤモンドの価値を高める魔法だったわけです。

今まで散々ダイヤモンドを褒め称えましたが、一般人が購入できるような普通のダイヤモンド(婚約指輪に使われるようなもの)には、宝石としての大きな価値があるわけではありません

🌏世界を一つに繋げる光ファイバー

全反射は、ダイヤモンドを輝かせるだけでなく、世界を一つに繋げる魔法にもなります。

インターネットを使えば世界と通信できる

例えば、今日本に住んでいても、アメリカのNASAのウェブサイトに訪れ、たくさんの宇宙の美しい写真を見ることができます(これらの写真は、アメリカのパソコンに保存されています)。

また、海外の人とメールやチャットするのも一瞬で完了しますよね。

インターネット

インターネットがあれば、地球上の遠く離れた場所でも一瞬でコミュニケーションをとることができます。つまり、インターネットは世界を一つにしているのです。


よく考えれば、インターネットって魔法のようですよね。昔の人が見れば、超能力のテレパシーだと思うはず。


このインターネットでも、全反射が大活躍しています。

海底ケーブルで、光を世界中に届けろ!

  • アメリカNASAの写真にも一瞬でアクセスできる
  • 地球の裏側に住む友達に、一瞬でメッセージが送れる

これら不思議な魔法は、いろんな情報をに変換して届けることで実現しています。


具体的には、インターネット通信のために使うチューブをつなぎ、そこに光を発射して相手に届けているのです。光は速いので、地球の裏側にもすぐに届きます。

光通信

このチューブは主にどこにあるのかと言うと……、海底ケーブルとして、海底に張り巡らされているのです!

世界のインターネットを支える海底ケーブル
2007年時点のケーブル網

このケーブル網、すごいと思いませんか?


この中で光を走らせることで、地球上のどんな場所とも通信できるようにしているのです。

海底ケーブル
海底ケーブルを設置するための船
https://commons.wikimedia.org/wiki/User:David.Monniaux

「光を使って、離れた場所と通信する」ことを、光通信といいます。

光ファイバーを使い、全反射で強い光を届ける

ここで、全反射の出番です。


当然、光がケーブルの中を反射していくと、光は屈折して外に出ていってしまうため、光が徐々に弱くなってしまいます。


これでは徐々に光が消えてしまい、遠い国へと通信ができません。

屈折により徐々に消える光

そこで、光ファイバーを使います。光ファイバーは、光が中をずっと全反射で進むように工夫されている伝送経路です。

光ファイバー

光ファイバーの中で全反射を繰り返すことにより、世界中のどんなに遠い場所へでも、強い光を届けて通信できるように考えられています。

全反射する光
管の中を全反射する様子
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Laser_in_fibre.jpg

もちろん、この光ファイバーは建物から海底ケーブルまで、私たちの身の回りで常に利用されています。


もはや私たちは、インターネットなしで生活することは不可能です。この便利な生活は、全反射という魔法により実現しているんですね。



現代の魔法とは、物理学のことなのです。

📚おすすめ参考文献

📖参考になった書籍

ダイヤモンドの科学―美しさと硬さの秘密 (ブルーバックス)

ダイヤモンドの魅力を、多角的に知りたい人にはピッタリの本。


ダイヤモンドなんてただの光る石で、そんなものを欲しがっているのは強欲な人間だけだ……なんて思っていませんか?それは甘い。


個別名がつくほどの高級ダイヤモンドは、数百年の間の数々の歴史的大事件を目撃し、人間の欲望の渦にも負けずに輝き続けたストーリーを持っています。それに加え、ダイヤモンドに世界一の輝きを支えるたくさんの科学的事実……。


宝石店やテレビで見るダイヤモンドを超えた、もっと深い世界を覗いてみましょう。全て理解するには、高校レベル以上の科学的基礎知識が求められますが、難しい所は読み飛ばしても面白いですよ。

🍿参考になった映画

ブラッド・ダイヤモンド (字幕版)

ダイヤモンドは、アフリカなど途上国の鉱山で採掘されることが多く、採掘されたダイヤは先進国で高く売れます。


そのため、ダイヤモンド産出国は鉱山を巡って内戦が絶えず、ダイヤモンドのために殺し合いが行われ、たくさんの血が流れました。人を殺してダイヤモンド鉱山を支配すれば、それを売って武器を買い、また戦争に強くなれるからです。


この映画では、実際に問題となった、アフリカのシエラレオネの『紛争ダイヤモンド』をテーマに、数億円はくだらない一つのピンク・ダイヤモンドを命をかけて追いかける姿が描かれています。


先進国の私たちが能天気にダイヤモンドに酔いしれている裏側で起こっていた、シエラレオネの悲劇について学べる、ハッとする映画です。やっぱりディカプリオはカッコいいよ!

📱参考になったページ

ダイヤモンドはもはや世界で最も硬い物質ではない 今もまだ「ダイヤモンドは世界一硬い物質」と考える人はいますが、厳密には天然鉱物でもダイヤ以上の硬さを持つ物質がある可能性も。ただ、広く工業利用されるのは今後もダイヤモンドでしょうし、世間一般での「世界一硬い物質」の王座はしばらくはダイヤモンドのままかも?

Some Folklore and history of diamond ダイヤモンドの歴史や逸話をまとめた論文。英語が読めるなら非常に面白いです。JSTORにある英語論文ですが、アカウント作れば無料で読めます。

TOP 10 MOST EXPENSIVE DIAMONDS 2020 伝説のダイヤモンドたちの値段ランキング。

The True Story of the Koh-i-Noor Diamond—And Why the British Won’t Give It Back 伝説のダイヤモンド『コーイヌール』についての話。へぇ。

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